お笑いコンビ「極楽とんぼ」の加藤浩次さんと俳優の遠藤憲一さんが声優を務めた映画「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」(ジェームズ・ガン監督)が全国で公開中だ。映画は、米マーベル・コミックの正統派ヒーローたちとは一線を画す“はみ出し者たち”がチームを組み、銀河の平和のために戦うSFアクション。2014年に公開された前作に続き、凶暴で毒舌なアライグマ“ロケット”を担当した加藤さんと、そのロケットの懸命なお世話で25センチにまで成長した幼木“ベビー・グルート”を演じる遠藤さんに、改めて声優の難しさや、演技との違い、見どころなどを聞いた。
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前作からの続投について「(1作目で)クビかなと思ったんですけど(笑い)、そうならず、よかったです。率直にうれしかったです」と喜ぶ加藤さんと、「(容姿が)可愛くなると聞いたんで無理だと言ったんですけれど(笑い)、声は加工するので気持ちだけ入れてくださいと言われて、それはそれで特殊な仕事なので面白いと思って喜んでやりました」と語る遠藤さん。
2回目ということで気負わず演じられたと思いきや、加藤さんは「忘れているかなと思っていたんですけど、意外にすんなり入れました」としつつ、早口でせりふも多いロケットを演じる難しさは1作目と「同じでしたね」と振り返る。「僕が思った通りにやったものに、(吹き替え版の)監督さんが『加藤君、もうちょっと柔らかく、すんなり言って』というような指示を出してくれて、微調整していくという感じでした。だからどうなっているのか、どのテークが使われているのかも、試写を見るまで分からなかったです。例えば『この二つ(2テーク)、もらっておきます』ということもあるんですよ」と舞台裏を明かす。
苦労したシーンに挙げたのは、序盤の、ロケットとクイルが、どちらが宇宙船の操縦桿(かん)を握るかで言い合う場面。加藤さんは、他の声優より収録が先だったため、英語の原音に声を当てていく感じになったそうで、「監督から何回も、原音のブラッドリー・クーパーさんのテンションに近い感じになるように言われました」という。
一方、遠藤さんは、「僕の場合は、前のことを覚えていてはダメだから」としながら、「声を入れるときに変に可愛くするとおかしなことになるから」と、映像で見たベビー・グルートのつぶらな目を思い浮かべ「可愛くというより、ロケットに怒られたりするところで、真剣に聞いているんだけどちゃんとできないという、ぶきっちょな生き物という気分」で演じたという。ちなみに、ベビー・グルートの“前身”は、前作で仲間のために犠牲になった樹木型ヒューマノイドの“グルート”だ。
完成した作品を見た加藤さんは、コンピューターで高めの声に加工された遠藤さんの声について、「正直に言っていいですか。遠藤さんじゃなくてもよかったです(笑い)」と笑いを取ったあとで、「でも、遠藤さんらしさが要所要所に出ていたと思います。『僕はグルート』の一言に、細かい感情が出ていました。あれは遠藤さんしかできないと思いましたね」と絶賛。この加藤さんのコメントに、遠藤さんが、「ちゃんと(違う)様子が出てました?」と心配そうに確認すると、加藤さんから「すごく出てました。違ってましたよ」と太鼓判を押され、安堵(あんど)する一幕もあった。
そう、ベビー・グルートのせりふは、「僕はグルート」の一つだけ。しかし遠藤さんは、「日本語でありがとう、英語でサンキュー、ほかの国の言葉にもいろんな“ありがとう”があるじゃないですか。全然知らない言葉だけれど気持ちがありがとうと言っているから、それと同じ気持ちでやりました」と、そのときどきの気持ちで同じせりふを演じ分けたそうだ。
それでも、さすがに苦慮した場面がある。それは、ロケットに説教されながら、時限爆弾のボタンを押す練習をするところ。「あれが一番、(収録に)時間がかかったんです。監督からは、いろいろテンションを変えてみてと言われたんだけど、どうも感じが出ないので、頼んで、もう一度ビン・ディーゼルさんの声を聞かせてもらったら、やっぱり気持ちが入っている。伝わってくる。やっぱり、気持ち優先でいえば、トンチンカンな言葉だけれど伝わるんだ」と、思いを新たに収録に臨んだそうだ。
遠藤さんは時限爆弾のシーンでは、加藤さんの声が入った映像を見ながら声を当てていった。「加藤さん、達人の域でしたよ。あんなにいっぱいしゃべるなんて、俺、絶対できないよ。しかも秒数が決まっているじゃない」と加藤さんの仕事ぶりを大絶賛。すると加藤さんは、「いやいやいやいや、もう全然。難しいですよ、遠藤さんの方が、本当に」とひたすら恐縮していた。
俳優としても活躍する加藤さん。実写と吹き替えの演技との違いについては、「全然違います」と言い切り、「海外の映画に(声を)入れる人ってすごいなと思うんですけど、台本では、(原音の)英語に合うように日本語は設定されていますが、それを読んで、グーッと感情を入れた方がいいなと思うシーンでも、そういうふうにやってみると意外に合わない。むしろ、ツラツラと言った方がいいのかなとか、そのへんのさじ加減が全然分からなかったです」と難しさを語る。
「役者だから、体ごと演じる癖がついている」という遠藤さんも、「(ベビー・グルートが)わーっと暴れているところから収録したんですけど、しょっぱな(監督から)言われたのは、動かないでくださいって。(音が)ガサガサって入るでしょ。しかも足音なんてもってのほか。クビから上でやってくださいと言われて(笑い)。それが難しかった。厳しいね」と苦労を明かし、気持ちが分かる加藤さんも、「厳しいです」とぽつり。遠藤さんによると、吹き替えは、多くこなしてきているナレーションとも「全然違う」そうで、秒数の制約はあるものの、自分の間合いで話せるナレーションに対して、吹き替えは「確実に動いているキャラクタ-のリズムの中でやらなければいけない」ところが、一番大変だったそうだ。
どんなピンチも「ノリ」で切り抜けてしまうガーディアンズのメンバー。その感覚は「すごく好きです」という加藤さん。「邦画にはあまりない感じじゃないですか。しかも、すごく緊迫したシーンでふざけているという(笑い)。ああいうのは、僕らの仕事でも結構多い」と共感を示す。グッときたシーンに、主人公のピーター・クイルと彼の育ての親ヨンドゥのシーンを挙げ、「『1』でああいうふうに振っておいて、『2』で、ヨンドゥはそこまでクイルのことを考えていたの!?という。そのギャップの作り方はうまいなと思いますね。彼ら(クイルやロケットたち)も悪党じゃないですか。(ヨンドゥは)そのさらに上を行く悪党だと思っていたら、そうじゃない。そこが面白いと思いましたね」と感想を語る。
かたや遠藤さんは、「宇宙の話、生命の話みたいなことを語るところがあるんですけど、その場面を見たとき、哲学というか、ちょいちょい結構深いものをブチ込んでくるんだなあと思ったんですよ。そのへんが、普通の、にぎやかで楽しいだけの作品とは違う。ハラハラドキドキの先に、考えさせられることが結構さりげなく入っている、特殊な作品ですよね」と、作品をアピールした。映画は12日から全国で公開中。
<加藤浩次さんのプロフィル>
かとう・こうじ 1969年4月26日生まれ。北海道出身。89年、お笑いコンビ「極楽とんぼ」としてデビュー。NHK大河ドラマ「平清盛」への出演や、情報番組「スッキリ!!」(日本テレビ)をはじめ、さまざまな番組で司会を務めるなど、芸人の枠を超えて活躍中。
<遠藤憲一さんのプロフィル>
えんどう・けんいち 1961年6月28日生まれ。東京都出身。83年、テレビドラマ「壬生の恋歌」(NHK)でデビュー。おもな出演作品に「ドクターX」「民王」(共にテレビ朝日系)などがある。10月からのNHK連続テレビ小説「わろてんか」に出演。主人公の父親役を演じる。
(取材・文・撮影/りんたいこ)
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