オーストラリア出身の人気俳優ヒュー・ジャックマンさんが、自身の出世キャラ“ローガン/ウルヴァリン”を演じるのが最後といわれている映画「LOGAN/ローガン」(6月1日公開)のPRのために来日。自ら脚本を書き、メガホンをとったジェームズ・マンゴールド監督と25日、東京都内で開かれた記者会見に出席した。ジャックマンさんは開口一番、「こんにちは。私は日本に来られてとてもうれしいです」と日本語であいさつし、今作のプロモーションの最後に訪れる国が日本であることを、「17年間演じてきた旅の終わりが、ここ東京ということで、日本の皆さんには本当に感謝しています」と親日家ぶりを披露した。
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映画「LOGAN/ローガン」は、米マーベルコミックを題材に、2000年に公開された「X-MEN」から数えて、シリーズ9作目に当たる作品。ジャックマンさんはカメオ出演を含め、そのすべてに出演してきた。今作の完成作を見たときのことを、「想定以上の出来で、マンゴールド監督から最高の贈り物をいただいたような気分でした」と明かすジャックマンさんは、「今は、とても平穏で、幸せで、皆さんに感謝したい気分です」と充実した表情を浮かべた。
とはいえ、1作目の「X-MEN」でウルヴァリンを演じたときは、「原作コミックを読んだこともなければ、ウルヴァリンという動物が実際にいることも知らなかった」というジャックマンさん。それだけに、「これだけ長く演じることになるとはまったく驚きだし、最後の作品となる今作を“決定版”にしたいと思った」と語り、「いつか私に孫ができたとき、孫が『おじいちゃん、シリーズの中でならどれを見ればいい?』と聞かれたら、ほこりのかぶったDVDを出してきて、『これを見ろ』と言えるような作品にしたかった。実際にそうなったと思うし、私にとってマンゴールド監督は、最高の監督であり、脚本家です」と隣にいるマンゴールド監督をたたえた。
また、1998年、英国王立劇場で「オクラホマ」に主演していたとき、演出家のトレバー・ナンさんから、「舞台をずっとやり続ける役者は、五つくらい、その人のルーツとなる作品なり役を持つものだ」と言われたことに触れ、「多分、彼はそのとき、『オクラホマ』がそのルーツの一つだと言いたかったのだと思いますが、振り返ってみると、ローガンこそが、その一つかもしれません。ローガンは、私のキャリアにおいても、人生においても喜びであり、光栄な特権であり、感謝すべき役でした」と言い切った。
今作のオファーが来たのは、やはりマンゴールド監督がメガホンをとった「ウルヴァリン:SAMURAI」(13年)の撮影直後だった。マンゴールド監督は今作を作るにあたって、あくまでも「キャラクターが映える作品にする」ことを念頭に置き、この手の映画にありがちな内容や手法に陥らないよう、「ほかの作品では、こういう場合はどういうふうに解決しただろうと問いかけ、あえて違った形で解決する方法で臨んだ」ことを明かした。
その今作でローガンは、図らずも、ローラという少女を守ることになる。ローラはほとんど言葉を話さず、あどけない外見にもかかわらず並み外れた戦闘能力を持つ。演じるのは、英国出身のダフネ・キーンさんだ。普段から、起用する俳優には、「顔を撮影しただけで、せりふがなくても思っていることを伝えることができる人」を求めているというマンゴールド監督は、ダフネさんの父親で英国俳優ウィル・キーンさんからiPhoneで送られてきたダフネさんの動画を見たときのことを、「言葉がなくても目が生き生きしていた」と振り返りつつ、「彼女は、せりふがない中で感じていることを伝えることができる。本当に素晴らしい才能を持っている」と評した。
この言葉にジャックマンさんもうなずきながら、「最初、脚本には、チャールズ(・エグゼビア/プロフェッサーX=パトリック・スチュワートさん)と僕の役が書かれていた。その後、ダフネの役が追加された。確かにこの映画は、家族や愛をテーマにしていて、11歳の少女が出てくるのはいいアイデアだった。でも、どこにそんな役を演じられる子がいる? 無理じゃないかと思った」と当時の懸念を明かし、「(ローラは)ウルヴァリンのような激しさや恐ろしさを持っていて、ほとんどせりふがない。でも、(チャールズとローガンとの)3人の旅を続けるうちに、徐々に心を開いていく。僕は48歳ですが、今回の役を演じることには、ものすごく高いハードルがありました。だのにダフネは11歳で楽々とやってのけた。彼女は本当に献身的な女優で、彼女を見つけたことは奇跡に近い」と称賛を惜しまなかった。
今作には、米トランプ大統領がぶちあげた“国境の壁”建設を思わせる場面がある。映画製作中はちょうど大統領選挙期間中で、トランプ氏から壁の話が初めて出たときには、すでに脚本にそのシーンのことは書かれていたという。その偶然の一致にジャックマンさんは、「私たちはSF的な内容としてそれを書きました。だから、誰かが脚本をリークしたんじゃないかと思った(笑い)」というが、当のマンゴールド監督は「最近は、口の中で溶けて何も残らない飴(あめ)のような空虚な作品が多い」としつつ、「私は、努力した作品が、そんなに簡単に消えることは望みません。監督として作品が、世相を反映していたり、観客に問いかけたり、挑発的であったりするべきだと思うのです」と持論を展開した。
その言葉を裏付けるように、今作は「X-MEN」シリーズの中で初めてR指定、つまり観賞に際して年齢制限が設けられる作品となった。マンゴールド監督によると、スタジオには、当初からR指定でいきたいと話しており、そうすることで、「スタジオも子供向けじゃない作品と認識するから、結果、私自身が暴力描写や言葉遣いのみならず、アイデアを存分に発揮できるようになった」と話す。そして、「今回、私がとにかく大切にしたことは、成熟した作品にすることでした。日本がプロモーション最後の地になりますが、これまで(訪問先で)物議を醸すことはありませんでした。それは、この作品には愛があふれているからです。ヒューもソウルフルな演技をしてくれました。私自身、子を持つ親です。殺人や物欲主義的、あるいは、ほかの文化を侵略するといった子供向けの作品が多いなかで、たとえ暴力的な描写があろうと、愛や犠牲的精神、そういうものを是認する作品を見てもらいたいと思うのです。その点において今作は、まさに、ハートにあふれた作品になっていると思います」と胸を張った。映画は6月1日から全国で公開。
(取材・文・撮影/りんたいこ)
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