俳優のオダギリジョーさん主演の、日本・キューバ合作映画「エルネスト」(阪本順治監督)が6日からTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほかで公開される。キューバ革命の英雄エルネスト・チェ・ゲバラ(1928~67年)と共に祖国ボリビアのために戦った日系人、フレディ前村ウルタードの生きざまを描いた作品。半年かけてスペイン語を習得し、体重を12キロ落としフレディ役に臨んだオダギリさん。穏やかな瞳の奥に静かな闘志をたたえ、責任感があるゆえに祖国のために立ち上がる日系ボリビア人青年を好演している。
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1941年、鹿児島県出身の父とボリビア人の母との間に生まれたフレディ(オダギリさん)は、やがて医師を志し、62年、キューバに留学する。優秀な成績を修め、面倒見の良さと実直さ、心根の優しさから友人たちからも信頼されていた。母国ボリビアで軍事クーデターが起きたと知るや、母国のために戦う決意をする。ゲバラの組織する部隊に参加し、ボリビアでの戦いに身を投じる……というストーリー。
阪本監督が、オーディションの控室での寡黙なたたずまいを見て抜てきしたという、写真家としても活躍するキューバ出身の俳優ホワン・ミゲル・バレロ・アコスタさんがゲバラ役。永山絢斗さんが新聞記者役で出演している。
若き革命戦士の熱き戦いの物語が展開するものと身構えていたところ、実際はフレディの医学生時代の生活や淡い恋などをつづった、いたってヒューマンな内容だった。いい意味で意表を突かれた。
フレディが初めての給料を手にする場面では、彼の無邪気さと、愛する人への思いが伝わり、思わずほほ笑まずにはいられなかったし、フレディがキューバからボリビアへたつ時の、友人たちとの無言の別れの表情には胸を締め付けられた。
ゲバラから「エルネスト・メディコ(医師)」という戦士名を授けられた場面での、ゲバラがフレディに掛けた言葉は奥深く、忘れがたい。
映画は、キューバ革命直後の59年7月、ゲバラ来日の場面から始まる。当時、ゲバラが広島を訪問していた事実に驚くとともに、そこでの言動に、ゲバラの人間性がうかがえたことも興味深かった。(りんたいこ/フリーライター)
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