北野武監督の人気シリーズ完結編となる最新作「アウトレイジ 最終章」が7日から公開される。最新作では前作「アウトレイジ ビヨンド」の続きが描かれており、ビートたけしさんが引き続き“古いタイプの極道”である「大友組」元組長の大友を演じているほか、大友を慕う韓国・済州島グループの市川役で大森南朋さんも出演している。北野監督に撮影エピソードや演じる大友への思い、大森さんら共演者への思いなどについて聞くとともに、大森さんに北野作品へ参加した感想などを聞いた。
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「アウトレイジ」はヤクザの抗争を描いた映画シリーズ。関東の組織「山王会」と関西の組織「花菱会」の巨大抗争後、大友(たけしさん)は韓国に渡り、日韓を牛耳るフィクサーである張会長(金田時男さん)の下にいた。あるとき、韓国出張中の花菱会の花田(ピエール瀧さん)がトラブルを起こし、張会長の手下を殺してしまう。これをきっかけに、韓国フィクサーと花菱会は一触即発の様相を呈し、さらに花菱会では内紛が勃発。そんな中、大友が日本に戻ってくる……というストーリーだ。
「アウトレイジ」「アウトレイジ ビヨンド」と続き、ついに区切りとなる“最終章”。北野監督は「大友は古いタイプで、世話になった人には命を懸けても恩返しする。それとの対比的なところで、金で成り上がっていくやつとか、なんでもやるやつとかがいる」と今作の構図をざっくりと説明する。
今作では、前作に続いて西田敏行さん、塩見三省さんら強面(こわもて)の面々が登場する中、大森さんが大友と常に行動をともにする市川役で出演する。「アウトレイジ」シリーズ初参加となった大森さんは、「憧れはすごくあった」と明かし、「『アウトレイジ』シリーズに僕の出番はないんじゃないかと……。また(『アウトレイジ』『アウトレイジ ビヨンド』で若頭・石原役を演じた)加瀬亮か、とか思いながら(笑い)。だから、待ちに待っていたというか、呼んでいただいて最高の気持ちで現場に行かせていただきました」と熱い思いを吐露する。
大友を慕う役どころには、「願ったりかなったり。緊張感ももちろんあるし、(北野監督と)常に一緒にいられて、マシンガンも一緒に撃てて。慕い続ける役なので、その部分は(現実と)近い感じでやれていたと思います」と語る。
そんな大森さんについて、「(別の作品で)主役や何かやっているの見て、『ああー、なんでもできるわ』と思った」と信頼を寄せる北野監督。西田さんら重厚感あふれる面々の中に入ることについて、大森さんは「プレッシャーたるや、ハンパないです」と打ち明けるも、北野監督は「若手で、西田さんたちとかと同じ画面に入ってくると……。でも、(大森さんは)全然負けずに。役者としてはなんでもこなせるところに来ている」と賛辞を送る。
大森さんは、北野監督からの注文などは特になかったと言い、「探り探りです。最後のシーンも、すごく悩んでいて。正しかったのかどうか、最初は客観的には見られなかったんですけれど……今、こうやって(北野監督に)言っていただいて、ほっとしました」と笑顔を見せる。
今作ではほかに、初参加で大杉漣さん、ピエール瀧さん、津田寛治さんらも登場する。北野監督は「大杉さんもテンションはっちゃけてすごかった。役者がそろうとね、勝負が始まるから。狙い通りの感じはしたけどね」と満足げに手応えを明かす。
たけしさん演じる大友は、仁義を貫き、筋を通す“古いタイプの極道”だ。恩ある相手のために“暴走”していく大友について「不条理な人間関係で死んでいったり……というのは、エンターテインメントとして面白いんだろうね」と語る北野監督。大森さんは「(大友は)憧れでもあるし、カッコいい。自分の意思を曲げないで、貫いている。それは男として、理想的にカッコいい姿ですよね。市川と大友の距離は、いち役者として北野監督を見ている距離と変わらないイメージでした」と大友と北野監督への羨望(せんぼう)を語る。
また、「アウトレイジ」シリーズといえば、「バカヤロー!」や「コノヤロー!」といったせりふが容赦なく飛び交うのも特徴だ。北野監督にその意図するところを聞くと、「関東ではね、バカヤローってのは、つなげる言葉だよね」と切り出し、「(せりふとしては)『バカヤロー!』以外の言葉の方が強いんだよね。『埋めちまうぞバカヤロー!』とかね。『バカヤロー!』は、『バカヤロー!』で攻めていない。もっとひどい言葉の“つなぎ”なんだよね」と説明する。
暴力と銃弾が飛び交う「アウトレイジ」シリーズもいよいよ最終章を迎える。改めて、「アウトレイジ」シリーズとは? 北野監督は「『アウトレイジ』から暴力と拳銃を全部取っても(同じ)、会社の会長争いや社長争いも、みんな同じことをやっているんだよね。裏切ったり、責任は秘書に任せて自殺させたり。サラリーマンに置き換えても同じことだよ。古いタイプのサラリーマンは会社のために体張って、結局は全部取られて死んでいく……とか、そういうことだから」と意味深な言葉で締めくくった。
<北野武監督のプロフィル>
きたの・たけし 1947年生まれ、東京都出身。主演も務めた「その男、凶暴につき」(89年)で初監督。98年製作の「HANA-BI」で第54回ベネチア国際映画祭金獅子賞を、「座頭市」(2003年)で第60回ベネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)を受賞。ほか、「ソナチネ」(1993年)、「菊次郎の夏」(99年)、芸術家としての自己を投影した3部作「TAKESHIS’」(2005年)、「監督・ばんざい!」(07年)、「アキレスと亀」(08年)や「アウトレイジ」(10年)と続編「アウトレイジ ビヨンド」(12年)など。今作「アウトレイジ 最終章」は18作目の監督作となる。
<大森南朋さんのプロフィル>
おおもり・なお 1972年生まれ、東京都出身。映画は「殺し屋 -1-」(2001年)、「ヴァイブレータ」(03年)、「ハゲタカ」(09年)、「R100」(13年)、「捨てがたき人々」(14年)など多数の作品で主演を務めている。主演作「ビジランテ」が12月に公開予定。
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