宇宙戦艦ヤマト2202:豪華な音楽、独特の効果音の制作の裏側 音響監督・吉田知弘に聞く

「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」の音響監督を務める吉田知弘さん
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「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」の音響監督を務める吉田知弘さん

 人気アニメ「宇宙戦艦ヤマト」の最新作「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」の第4章「天命篇」の劇場上映が27日始まった。豪華スタッフが集結し、ストーリー、メカ、映像美などさまざまな角度から楽しめる作品。音響も大きな魅力となっている。ヤマトファンだったという音響監督の吉田知弘さんに、独特の効果音、豪華なオーケストラ音楽などの制作の裏側を聞いた。

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 ◇宮川彬良の音楽はアレンジが天下一品

 「2202」は、1974年に放送され、社会現象にもなった「宇宙戦艦ヤマト」のリメーク「宇宙戦艦ヤマト2199」の続編にあたる。78年に公開された「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」がモチーフで、小説「亡国のイージス」「機動戦士ガンダムUC」の福井晴敏さんがシリーズ構成と脚本、「ウルトラマンサーガ」の岡秀樹さんが脚本を手がけ、「蒼穹のファフナー」の羽原信義さんが監督を務めるなど豪華スタッフが集結した。「2202」は「2199」から引き続き、宮川彬良さんが音楽を担当。彬良さんの父である故・宮川泰は「宇宙戦艦ヤマト」シリーズの音楽を手がけたことでも知られている。

 音響監督は、監督らとキャスティングをしたり、アフレコ、、劇伴(BGM)や効果音などを演出する。「2202」の音楽は「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」や「宇宙戦艦ヤマト2」の音楽を再録音したものと新曲で構成されている。

 吉田さんは「『2』『さらば』の楽曲は200曲以上。いい曲がいっぱいある。今では、こんな豪華な音楽の作り方はできない。羽原監督の意向を聞き、シナリオを読み、音楽の世界観を考え、昔の楽曲の中から、再録音するものを絞りました」と話す。

 「ヤマト」の昔の譜面は残っていなかったため、宮川さんは、父の残した音楽を聴き直し、譜面に起こす、いわゆる耳コピをして、再録音した。吉田さんは、宮川さんの音楽の魅力を「彬良さんは、お父さんゆずりのロマンチックなメロディーを書きますし、何と言ってもアレンジが天下一品。今回の新曲もアレンジ違いだけで、たくさんバージョンがあったり、アレンジの妙が素晴らしいんです」と語る。

 音楽が素晴らしい一方で「映像と合わせやすいのか?というと、合わせにくいところもあります。音楽としての良さもあり、映像の良さもあり、それをどうシンクロさせるかがキモ。そこを追求しています」という。

 ◇名匠の効果音が現代によみがえる

 「宇宙戦艦ヤマト」シリーズの音響は、柏原満さんが手がけた独特の効果音も魅力だ。「2199」「2202」の効果音も柏原さんが手がけた音がベースになっているという。吉田さんが柏原さんの手がけた効果音を扱うのは今回が初めてではない。効果音と音楽で『ヤマト』を再現する『サウンド・ファンタジア』というCDがあり、「その関係で90年代に仕事をしたことがあります」と振り返る。

 12年に公開された「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」のディレクターズカット版でも音響監督を務めた吉田さんが、昔の効果音を使うために柏原さんに交渉したことがあったという。「お願いしたのですが、できない……と言われましてね。何度もお願いして、じゃあ、僕が音を付ければいいですか?って言ってオッケーをもらったんです。400本くらいテープの素材があり、ひたすらコピーして、ディレクターカット版で、昔の効果音を使うことができました」と話す。

 柏原さんが手がけた効果音のテープは一部劣化しているものもあったといい「テープを乾燥させたり、クリーニングして、2年くらいかけてコピーしました。幻の音もあって、ラッキー!となったり、聴いている時は至福でした」。吉田さんの尽力もあって、効果音が現代によみがえった。

 テープの中には、音が加工されていき、効果音が完成に至る経緯が分かる資料も残っていたといい、「ミニモーグ(アナログシンセサイザーの名機)の音や生で収録した音などにエフェクトをかけたり、ピッチを変えたり、いろいろな音を混ぜて効果音ができる。信じられない音作りですね。今のマイクでは録(と)れない音もあったり」と、名匠の技を垣間見ることもできたという。

 ◇「ヤマト」に吸い寄せられる

 吉田さんは元々ヤマトファンだったこともあり、「2202」の音楽、効果音などについて語る言葉には愛があふれている。「ヤマト」に関わることについて「自分は銀行員一家で、稼いだお金で趣味をしなさいという教育を受けたんですけど、人の縁というものは不思議で、気が付くと『ヤマト』に吸い寄せられる。うれしいですけど、プレッシャーもあります」と話す。

 「宇宙戦艦ヤマト」も魅力を「ヤマトは戦争から生み出されたものだけど、戦争を忘れちゃいけないから、こういうフィクションを残していかないといけない。受け継いでいかなければならない何かがある作品なんでしょうね」と語る吉田さん。「2202」の音響も「受け継いできた何か」が魅力になっているのかもしれない。

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