村田諒太選手:ゴロフキンと「戦う心づもりある」 ミドル級絶対王者20回目の防衛戦を予想

ボクシングの村田諒太選手 (C)NAOKI FUKUDA/WOWOW
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ボクシングの村田諒太選手 (C)NAOKI FUKUDA/WOWOW

 WOWOWプライムで、6日に「生中継!エキサイトマッチスペシャル ミドル級最強王者ゴロフキン防衛戦」と題して、WBAスーパー王座、WBC王座、IBF王座を保持しているカザフスタンのゲンナディ・ゴロフキン選手の通算20度目のミドル級防衛戦が生中継される。挑戦者は、1階級下のS・ウェルター級でWBC1位にランクされる米のバーネス・マーティロスヤン選手。近い将来、ゴロフキン選手との対決が期待される村田諒太選手に、防衛戦の見どころなどを聞いた。

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 ◇強いだけでなく人としての器も大きなゴロフキン

 ――世界王者の称号を手にしてから、無冠時代と比べて他の選手たちを見るときの基準は変わりましたか。

 変わりはしないけれど、自分がアメリカで戦う話もあるので、誰と戦うのかなと、気にするのはそれぐらいですかね。

 ――自分も主役の一人だという意識は強くなりましたか。

 その意識は強くなりました。タイトルを持っているということは、すごく大きな意味がありますね。

 ――初防衛も果たして自信も増したことと思います。

 そうですね。形のうえの問題ですが、オリンピックの金メダリストとして(プロの)世界タイトルを手にしたという事実を残せたので、あとは冒険ができます。

 ――逆に燃え尽きたということは?

 それはないです。やるべきことが次々に出てくるので。

 ――やるべきことの一つにゴロフキン選手との試合も入ると思いますが、ゴロフキン選手の試合を初めて見たのはいつでしたか。

 彼がアテネ・オリンピックの決勝でロシアの選手と戦って負けた試合です。序盤はリードしていたけれど、振り回していたので途中からスタミナが切れて逆転されたんです。でも、強い選手だなという印象でした。体はそれほど大きくないけれど、踏み込みが速かった。当時は軽いパンチでもポイントが入るため“タッチ・ゲーム”と言われていましたが、ゴロフキンのスタイルは全然違っていました。僕ら日本の選手がやってきたベースのようなものがあって、だから参考になると感じました。

 ――ボクシングの知識がない人にゴロフキン選手を紹介するとしたら、どう説明しますか。

 僕のことを知ってくれている人には「僕の上に設定されているスーパー・チャンピオン」と。上のランクに位置するチャンピオンといえば分かりやすいのでは。

 ――どんな選手なのかと問われたら?

 勝つこと、KOすることが当たり前のこととして考えられている選手、17連続KO防衛という記録を打ち立てている選手。

 ――改めてゴロフキン選手の強さを分析してください。

 とにかくパンチ力があり、加えてタフ(打たれ強い)。打たれても頑丈ですね。昨年9月のカネロ(サウル・アルバレス選手のこと)戦ではパンチをもらうシーンがあったけれど、ビクともしませんでしたからね。この階級で最強の選手です。

 ――同じミドル級の村田選手も「最強」と認める?

 はい。だから僕は彼と戦いたいんです。そしてゴロフキンは紳士でクリーンな選手です。アスリートとして尊敬に値するし、だから戦いたいんですよ。

 ――しかし、直近の3試合は消化不良の印象もあります。

 ボクシングは相手あってのことですから。判定勝ちに終わった(ダニエル・)ジェイコブスは(当時の)WBAチャンピオンだったし、カネロ戦(12回引き分け)は接戦だったけれど、内容的にはゴロフキンの圧勝といってもいいほどだったじゃないですか。でも、ピーク時よりは勢いが落ちているかもしれないですね。全盛期のマイク・タイソン(アメリカ=元世界ヘビー級王者)の相手がリング上がった時点で倒されることを覚悟しているような、それと似た雰囲気がゴロフキンにもありましたが、いまはその魔法は解けていますよ。

 ――村田選手はアメリカでゴロフキン選手と一緒にトレーニングし、スパーリングもしたことがあるんですよね。

 プロデビューして1年後ぐらいだったと思います。3ラウンドのスパーリングを2日間やりました。パンチ力が異質でしたね。硬くて強い、そして重い――まるで石で殴られているようで、初めて受ける衝撃でした。こんなにパンチがあるんだと思いました。加えてジャブもうまい。“タッチ・ゲーム”全盛のなかで世界選手権で金、オリンピックで銀メダルを取るぐらいですから。長い距離でも戦えるし、高い技術もありました。

 ――村田選手も手応えを感じましたか。

 意外と僕のパンチも当たったし、ゴロフキンのパンチそのものも見えなくはなかった。こちらはデビューしてから1年ぐらいなので、加減してくれたところはあったと思いますけど。たしかに強いという印象はありましたが、あの当時より僕も成長していると思います。4年前とは単純に比較できませんね。

 ――人間性についてはどう感じましたか。

 とてもソフトな人です。あのときも僕を撮影するためにテレビのクルーが来ていたんですが、「邪魔だ、俺は試合前なんだ」と言っても不思議ではないところを、彼はカメラの前を横切る際、「エクスキューズミー」と言って通るんです。そういう人です。人としても器の大きさを感じました。

 ◇「ゴロフキンと戦う心づもりはある」

 ――今回、ゴロフキン選手に挑戦するマーティロスヤン選手についてもアテネ・オリンピックのころから見ているのでしょうか。

 いや、オリンピックでは彼は途中で負けた(2回戦敗退)ので見ていません。初めて見たのはプロになってからです。ガードを高くして強打を打ち込んでくる、基本に忠実な選手だと思います。(王座決定戦で対戦した)デメトリアス・アンドレイド(アメリカ)との試合では負けたけれど物議を醸す2対1の判定だったし、初回には右から左の返しでダウンを奪っていますからね。もともとファイター型に近いので足を使う相手とは相性が悪いかもしれないけれど、ゴロフキンのようなタイプとはかみ合うと思いますよ。ただ、2年のブランクが気になりますね。マーティロスヤンが良い状態をつくってきたとしたらゴロフキンにとって簡単な試合にはならないんじゃないですかね。マーティロスヤンはガードが堅いし臆するところがないので。

 ――では、挑戦者サイドから見たゴロフキン攻略法は?

 まずはガードをしっかりして大きなパンチをもらわないこと。ただ下がるのではなく長い距離で打っていって、できればアッパー系のパンチを使いたいですね。

 ――展開予想となると、やはりゴロフキン選手ですか。

 順当にいけばゴロフキンですが、マーティロスヤンも序盤は良い勝負をすると思います。あの選手はそう簡単には倒れないと思います。でも、結局は持っているパワーの差、体重の壁、耐久力といった点でゴロフキンでしょうね。4ラウンド以降、中盤にゴロフキンがKO、あるいはTKOで防衛というのが順当なところかと思います。

 ――その先の展開しだいでは村田選手自身がゴロフキン選手と戦う可能性がありますが、気持ちの準備はできていますか。

 やれればいいですね。その試合ができるのであればボクシング界が盛り上がると思うし、僕がボクシングから受けた恩恵を返せるのではないかと思います。もちろん戦う心づもりはあります。

 ――楽しみと不安の両方があると思います。

 もちろん両方あります。でも、それはそれで全部、乗り越えるしかないでしょう。苦しみだって恐怖だって人生に必要なものだし、それを乗り越えて人間は成長していくものだから。そういうことが味わいのあるものになればいいと思います。プレッシャーがかかるけれど、最高の目標になりますよね。

 ――どう戦うつもりですか。

 しっかりジャブを突いて自分の距離を保ちながらプレッシャーをかけて、守るところは守る。自分のボクシングをするだけです。イメージはありますよ。

 ――ゴロフキン選手だけでなく、村田選手のいるミドル級にはアルバレス、WBO王者ビリー・ジョー・サンダース(イギリス)、ジェイコブス、ジャーマル・チャーロ(アメリカ)、セルゲイ・デレビャンチェンコ(ウクライナ/ロシア)、アンドレイドとそうそうたる猛者が集まっていますね。

 ホントですね。ここに集まってくるなよ、あっちに行けよと言いたくなる(笑い)。でも、ゴロフキン、カネロというスター選手がいるので当然ですね。

 ――ゴロフキン選手以外では戦いたい相手はいますか。

 ジェイコブスですね。実績もあるし、戦えば面白い試合になると思います。

 ゲンナディ・ゴロフキン選手対バーネス・マーティロスヤン選手の試合は「生中継!エキサイトマッチスペシャル ミドル級最強王者ゴロフキン防衛戦」として、WOWOWプライムで6日午前10時半に放送。

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