青木崇高:“ひさみちゅ”の「可愛らしさ」が倍増する? 島津久光役「とことん人間的、感情的に」 

NHK大河ドラマ「西郷どん」で島津久光を演じている青木崇高さん (C)NHK
1 / 3
NHK大河ドラマ「西郷どん」で島津久光を演じている青木崇高さん (C)NHK

 俳優の鈴木亮平さんが主演を務めるNHKの大河ドラマ「西郷(せご)どん」で、島津久光を演じている青木崇高さん。5月27日放送の第20回「正助の黒い石」では、カリスマ的存在の兄・斉彬(渡辺謙さん)の陰に隠れていた久光が、父・斉興(鹿賀丈史さん)の死により、“国父”として藩の実権を握ると、その存在と“変化”がクローズアップされ、SNS上では「威厳が出てきた」「人相が変わった」「急に調子乗りはじめた」などの声が上がった。一部のファンから「ひさみちゅ」と呼ばれ、ひそかな人気を集めている久光の今後について、「可愛らしさはより増しているんじゃないか」と笑う青木さんに、話を聞いた。

ウナギノボリ

 「西郷どん」は、明治維新150年となる2018年放送の大河ドラマ57作目。薩摩の貧しい下級武士の家に生まれた西郷隆盛(吉之助)の愚直な姿にカリスマ藩主・島津斉彬が目を留め、斉彬の密命を担い、西郷は江戸へ京都へと奔走する。勝海舟、坂本龍馬ら盟友と出会い、革命家へと覚醒。やがて明治維新を成し遂げていく……という内容。

 ◇斉彬と対照的に演じることでドラマチックに 西郷への“圧”も予告

 久光は、斉興と由羅(小柳ルミ子さん)との子で、類いまれな才能を持った異母兄・斉彬に憧れ、その背中を追い続ける。兄と父の死により薩摩藩の最高権力者となった後は、斉彬に心酔し、自らを田舎者扱いする西郷(吉之助、鈴木さん)を疎み、遠島に処すなど対立を深め、“西郷生涯の敵”となる。10日放送の第22回「偉大な兄 地ごろな弟」では、3年ぶりに薩摩に戻った吉之助から、いきなり「地ごろ(田舎者)」呼ばわりされ、久光が激怒するシーンもあるという。

 青木さんが久光を演じる上でキーワードに挙げるのが「人間味や人間らしさ」だ。今までの久光のイメージは「とても光り輝いているスーパースターの兄上がいて、ジメジメしてネガティブ。頭が悪くて、兄弟仲も悪い」といったところだが、青木さんは「実はそんなことはなくて、斉彬も評価をしていた」と否定した上で、「兄弟として、西郷の扱いの違いだったり、斉彬とは対照的に演じることによってドラマチックになっていくのかなって思っていたりもした。斉彬がヒーローであるのだったら、とことん人間的に、感情的にやってやろうって」と演技プランを明かす。

 また「のちに廃藩置県を知ったとき藩中の花火を集めて、(政府への抗議のため)一晩中、打ち上げていたっていう話もあって。久光という人物をひもとくエピソードなんじゃないかなって思ったし、大島から戻った西郷を自分のところに呼び寄せたとき『田舎者』って言われて、キセルに(久光が歯ぎしりしてできた)歯形が残っていたっていう話も、どれも人間的だな」としみじみ。

 西郷との対立についても、「現代的な視点では西郷はすごい偉人ですけど、当時の島津の人間からしたら『西郷ってどこぞのもんや』という感じ」と地位や位の違いを説明し、「そこの距離感は大切にしたいですし、自分のよく知らない人間が、兄上に可愛がられていたからと言って、自分に異を唱えるなんて『ふざけるな』ってこと。西郷をスターとして見ている方に対して、当時はそういう状況だったってことは強めに出さないとっていうのはありますね」と“圧”を予告。「久光は最初から『ライバル、ライバル』とは思ってはないですし、段階をもって彼のことをライバル視していけたら」と話している。

 ◇大久保を溺愛して放さなくなる 「しっかりと血の通った人間らしい久光を」

 ドラマには第1回から登場していた久光だが、見せ場となったのはやはり第20回での国父になったシーンだろう。大久保正助(現・一蔵、瑛太さん)の口車に乗せられた面があったとはいえ、ようやく藩の実権を握ったことによる変化には目を見張るものがあった。青木さんも「そこはもう、お話をいただいたときから、重要になるような部分とは思っていた」と振り返る。

 「『国父』というキーワードを得ることによって光が差したというか、光明が見えた。自分の中で歯車がかみ合い始めて、動き始めたというか……」といい、「薩摩を自分がコントロールしていくってことで、見た目もかっぷくのいい感じにしましたし、メーク、小物、帯刀しているもの、芝居の動き、すべて変えてはみたのですが。ただそんなに簡単にはいかないところもあるので、まずは第一段階」と解説する。

 久光と大久保の関係については「のちに立場がひっくり返るので、それまでは偉そうにしていたい」とニヤリ。「大久保がどんどんと久光に近づいて、久光を押し上げていく。大久保はそこで手応えを感じるんですけど、そんな大久保を久光が溺愛して放さなくなる。この人から抜けられない怖さっていうのをできたら面白いって思うんですけど……。ひっくり返る瞬間を演じる楽しみもあるし、僕個人としては久光公も偉業をなし遂げたすごい人だと思っていますし、どこかに光が当たると、影ができるというか。歴史の見方にもよるのですが、しっかりと血の通った人間らしい久光を演じたい」と力を込める。

 国父になってからも、これまで同様に可愛げのある「ひさみちゅ」を期待する声もあるが、青木さんからは「可愛らしさはより増しているんじゃないですかね、今後」とうれしい答えが返ってきた。「すごみも出ますけど、人間らしい弱さや、どこか芯の部分は残っている。彼自身は愛情たっぷり受けて育ってきた人間なので、安心できる家臣ができたら大切にするし、溺愛する。マザコン的な感じはなくなるかもしれないですけど、どこか可愛らしい。尊厳、威厳を保ちながら、そういった部分も見せていきたいなって」と話していた。

 ◇久光が生まれてから200年後の日に墓参り? 時代劇への思いも!

 鹿児島ロケの前日には久光の墓参りをし、いも焼酎をお供えしてきたという青木さん。「ちょうどその日が、久光公が生まれてから200年後の日だったんですね。当時は旧暦であったりと、ぴったりかどうか定かではないんですけど『(記念日と重なった奇遇に)これはもらった。よっしゃ、これは見てくれている!』と思いましたね。これ以上のことはないなって、自分の中で大きかった出来事。1年間、頑張りますので、失礼なことあるかもしれないんですけど(笑い)、しっかりとやらせていだきますっていうことは、ちゃんと言わせていただきました」と語るなど役への思い入れは強い。

 また時代劇に対しての思いも同じで、青木さんは「先輩方がいうには殺陣と日舞と馬は、役者だったら当然のようにやっていないといけない話。やっぱり自分から見つけて、個人で勉強し続けないといけないですし、着物の理屈、所作を知ることで分かることとか、基礎は大切なこと。年配の方も安心して見られるようにはしたいですし、それは海外の人が見てもカッコいいものだと思うので、文化、そこはできる限り勉強していきたいなって」と意欲を見せていた。

 大河ドラマ「西郷どん」はNHK総合で毎週日曜午後8時ほかで放送。

写真を見る全 3 枚

テレビ 最新記事