Vision:永瀬正敏と岩田剛典に聞く(下) 今後10年「極力攻めていきたい」「ここからがむしゃらに」

映画「Vision」に出演した永瀬正敏さん(右)と岩田剛典さん
1 / 27
映画「Vision」に出演した永瀬正敏さん(右)と岩田剛典さん

 俳優の永瀬正敏さんと、「EXILE」「三代目 J Soul Brothers」のパフォーマーとしても活躍する岩田剛典さんが共演した映画「Vision」(河瀬直美監督)が全国で公開中だ。奈良・吉野の山深い森を舞台に、そこに分け入った人々が、それぞれに抱えるものを乗り越え成長していく姿を描いている。今作で、吉野の森の自然を守る“山守”の智(とも)を演じた永瀬さんと、智が森で出会う青年、鈴(りん)を演じた岩田さんに、完成した作品の感想や共演を通して得たもの、さらに10年後の自分について聞いた。

あなたにオススメ

 ◇完成した作品に「びっくり」

 河瀬監督といえば、「スタート」というカメラが回り始める合図もなければ、終わりを告げる「カット」もかからないなど、独特の撮影手法がよく話題になる。そのため、演じる俳優はどこを撮られているか分からないそうで、永瀬さんの言葉を借りれば「演技をするというよりは、その場で生きてくれという」ことであり、「だから、最初の河瀬組を経験される方は皆さん戸惑うんです」と説明する。

 今回の撮影でも、智と鈴の出会いの場面では、設定上、岩田さんは崖の下でずっと寝ている必要があった。そのため永瀬さんは、崖下で横たわる岩田さんに「大丈夫か」と声をかけたくてもかけられず、「大丈夫じゃねえよなと思いながら」演じていたという。その告白に、思わず苦笑いを浮かべる岩田さん。

 しかし、そういう撮り方だからこそ、完成した作品を見たときの驚きは大きいという。永瀬さんも岩田さんも、「本当にびっくりしました」と口をそろえる。その上で永瀬さんは、「意外なことだらけでした。ある意味、すげえなと思いました」と感想を述べ、秋と冬、季節をまたいだ撮影の冬だけの参加だった岩田さんは「自分が出演していないシーン(の驚き)はもちろんなんですけど、作品全体としての構成も脚本と変わる部分がありまして、仕上がりがアートというか、その映像美も音もすごく特徴的で、美しい映画だと思いました」と感動を表現する。ちなみ今作の撮影時間は5400分(90時間)。完成した映画は110分だ。

 ◇お互いから得たもの

 初共演の2人に、今回の共演で互いの存在から得たこと、感じたことを聞くと、永瀬さんは「僕からすると、彼らは今トップを走っているグループで、そのマス(集団)の頂点にいるわけです。でも、そこを維持する、そこを打破する、そこから先へ行くということの大変さはあるじゃないですか。これだけピュアで、でも、意志が強いというか、男らしい部分がないと、たぶん流されてしまうと思うんです。その、トップを維持していくための努力を欠かさない。そこにいるからこそのつらさは、たくさんあるのだろうなと思いますね」と、隣に座る岩田さんの、トップにいるからこその重圧を慮(おもんぱか)る。

 かたや、岩田さんは、「本当に表現者として学ぶことだらけでした。存在そのものからもそうですし、発せられる言葉も、なるほど、そういうことを考えていらっしゃるのかと、とにかく刺激をいただきました。それが、具体的に僕の中でどう変化として表れるか、それは分からないですけど、間違いなくインスピレーションを与えてくれますし、またイメージもできます。(永瀬さんは)たくさん経験もされてきていますし、こういうふうになれたらすてきだなと思う存在です」と永瀬さんに尊敬のまなざしを向ける。するとすかさず永瀬さんは、岩田さんを見ながら「いやいや、僕がこうなりたいよ(笑い)」と照れ笑いしていた。

 ◇10年後のビジョンは

 映画のタイトルは「Vision」。そこで2人に、今後10年のビジョンを聞いてみると……。永瀬さんは「僕らの仕事って本当に受け身で、こういう役をやりたい、こういうふうなことをやりたいと言っていても、お声をかけてもらわないと始まらないので、僕は常に、お声をかけてもらって、やらせていただこうと思うものが、次にやりたかった役なのだと思うようにしています」とした上で、「ただ、今後10年は、少し頑張りたいと思っています。年齢的なこともあるし、やっと役の幅がいろいろ広がるかなということもありますし、極力攻めていきたいと思っています」と意欲を見せる。

 一方、岩田さんは、「僕は本当に“ここから”という感じです。一つ一つ、目の前のことをやっていくことが、自分を作っていくことだと思いますので、今は熱量を持って、がむしゃらにやりたいです」と背筋を伸ばして語った。そんな岩田さんに永瀬さんは、「(10年後は、米ニューヨークの)マディソン・スクエア・ガーデンでやっているかもしれないね」とエールを送った。映画は8日から全国で公開中。

 <永瀬正敏さんのプロフィル>

 ながせ・まさとし 1966年7月15日生まれ、宮崎県出身。「ションベン・ライダー」(1983年)でデビュー。以降、「ミステリー・トレイン」(89年)、「息子」(91年)、「PARTY7」(2000年)、「毎日かあさん」(11年)など数々の映画に出演。最近の映画作品に「KANO~1931 海の向こうの甲子園~」(15年)、「64-ロクヨン-」「後妻業の女」(ともに16年)、「パターソン」(17年)、「蝶の眠り」(18年)など。河瀬直美監督の作品では「あん」(15年)、「光」(17年)に続いて今作が3作目。待機作「菊とギロチン」(7月7日公開)ではナレーションを担当する。

 <岩田剛典さんのプロフィル>

 いわた・たかのり 1989年3月6日生まれ、愛知県出身。「EXILE」「三代目 J Soul Brothers」のパフォーマー。2013年の舞台で俳優として本格始動。「クローズ EXPLODE」(14年)で映画初出演。他の映画作品に、「HiGH&LOW」シリーズ、「植物図鑑 運命の恋、ひろいました」(16年)、「去年の冬、きみと別れ」(18年)がある。待機作に「ウタモノガタリ -CINEMA FIGHTERS project-」(6月22日公開)、「パーフェクトワールド 君といる奇跡」(10月5日公開)がある。

 (取材・文・撮影/りんたいこ)

写真を見る全 27 枚

映画 最新記事