ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー:ロン・ハワード監督に聞く 前監督降板後に「自分のためにとったリスク」とは…

映画「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」について語ったロン・ハワード監督
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映画「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」について語ったロン・ハワード監督

 SF映画史に燦然(さんぜん)と輝く「スター・ウォーズ」シリーズ。中でも人気の高いキャラクター、ハン・ソロの若かりしころを描いた「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」が全国で公開中だ。このほど来日したロン・ハワード監督が、今作のオファーを受けた理由や、そもそも監督になったきっかけ、さらに監督自身の「夢」について語った。

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 ◇「運命」感じたオファー

 「この話をいただいたときに、いろいろ感じたことの一つが『運命』でした。やるべきことが決まっていたというか、個人的に何か得ることがあると思ったのです」とハワード監督はオファーが来たときの心境を打ち明ける。

 監督が「運命」と言うのには訳がある。それは、監督がまだ俳優を本業にしていたころ、「スター・ウォーズ」の生みの親であるジョージ・ルーカス監督が手掛けた「アメリカン・グラフィティ」(1973年)に出演。そのとき、のちにハン・ソロを演じ、スターダムを駆け上がることになるハリソン・フォードさんと共演していたからだ。

 フォードさんとは、「大親友というほどではない」が、会えば笑顔で旧交を温める「仲のいい」関係。今回の監督が決まったときもフォードさんと、“ハン・ソロ”について話し合ったという。「彼(フォードさん)は僕に、会談内容は明かすなと約束させたけど(笑い)、ハン・ソロというキャラクターには、逆説的な側面がある。自信たっぷりの振る舞いをする一方で、いろんな感情を抱えていて、それが彼の行動に表れる。だから、よりユーモアが出てくるし、より人間的なキャラクターに感じる、そういう話をしました」と明かす。

 ◇ハワード監督の「リスク」

 もっとも、今回のオファーは最初からハワード監督のところに来たわけではなかった。周知の通り、前監督は創作面での意見の相違によって降板し、その後を引き継いだのがハワード監督だった。当初、ハワード監督は、「最高の条件がそろっていても、(周囲が)望むレベルは高い。無謀な賭けに乗るような感じがした」という。にもかかわらず受けて立ったのは、それが自分にとって「クリエーティブなアドベンチャーになる」ことに加え、「僕の人生において、自分の心のためにリスクをとるいいタイミングだった」からだ。

 すでに、監督として「バックドラフト」(91年)や「アポロ13」(95年)、「グリンチ」(2000年)といった話題作を世に送り出し、「ビューティフル・マインド」(01年)では、米アカデミー賞監督賞も獲得した。監督としては揺るぎない地位を手に入れている。それでもまだ、「リスク」と感じることがあるとは意外だ。そう監督に告げると……。

 「長いキャリアを積んできたからこその自信はあります。それに、銀行にちょっとの預金もね(笑い)。イマジン・エンターテインメントという(テレビと映画の)制作会社を持っているし、心からイマジンのことも愛しています。でも、クリエーティブな意味では、すべての企画はそれぞれユニークな旅なのです」とハワード監督は応じる。

 その上で、「出資者に対してだけでなく、僕は、観客、参加したコラボレーターすべてに対する責任を、いつも感じながら作っています。でも、それがあるから大志を保てる。僕にとってリスクは、その人たちをがっかりさせること。今回のような大規模な作品は、本当に大変な作業を要します。だからこそ、自分自身で、面白さと新鮮さと興奮を感じていなければいけないのです。繰り返し同じことをやっていると感じたり、単なる“商品”を作っているような気持ちになったりしたら、自分を鏡で見たときに、たぶんいい心地はしないと思うのです」と胸中を明かす。

 ◇「映画は生活の一部だった」

 「バニシングIN TURBO」(1976年)で監督デビューしてから40年余り。多彩なジャンルでその手腕を発揮し、ハリウッド屈指のヒットメーカーになった。「もし、俳優だったころの青年時代の自分に声を掛けられるとしたら、なんとアドバイスする?」という問いかけに、ハワード監督は次のように答えた。

 「すごく若かったときは、実は映画を“仕事”というくくりで見ていなかったんです。映画は、僕の“生き方”そのもので、観客のことなど、当時はまったく考えていませんでした。でも、例えば、教会や寺院を建築している職人と一緒に育てば、それが自分の生き方、生活の一部になる。問題が起これば、そこで対処法を学んでいく。僕の場合は、それが映画でした。監督になりたいと夢を見始めたのは10代になってから。そして、映画というものに恋焦(こ)がれるようになったとき、僕の夢はとても大きかった。まだかなえられていないんです、その夢すべてを。僕は、僕の最高傑作はこれからだと思っているのです」。ちなみに、ハワード監督の両親は俳優だった。

 ◇10年後は…

 64歳のハワード監督。夢はしぼむどころか、どんどん膨らんでいるようだ。ならば10年後は、どんな夢を実現させているのか。「そのとき、VR(バーチャル・リアリティー)、ホログラム、どんなものが出てきているか分からないけど、映画とテレビの監督はもちろん続けています。僕は、ストーリーテリングが大好きだし、まだ続けたい。その一方で、世界中の若い作家たちと仕事もしたい。それが指導者としてなのか、プロデューサーとしてなのか、あるいは監督としてなのかは分からないけれど、若い人たちを育成したり、支援したりすることで、ストーリーテリングに対する愛を分かち合いたいと思っています」と意欲を示す。

 そんなハワード監督にとって、今作は25本目の監督作。「とにかく見て、まずは楽しんでほしい。今回の作品は、『スター・ウォーズ』シリーズを見たことのない人でも大丈夫。むしろ、入門編として最高の1本だと思います。もちろん、シリーズが大好きな人も、“あのハン・ソロ”の性格の由来を知ることができるので、楽しめると思います。(脚本家の)カスダン父子が、素晴らしい形で“二つ”のハン・ソロをつなげました。両方の側面から楽しんでもらえると思います」と胸を張った。

 <プロフィル>

 ロン・ハワード 1954年3月1日生まれ、米オクラホマ州出身。子役としてキャリアをスタートさせ、映画「アメリカン・グラフィティ」(73年)やテレビシリーズ「ハッピーデイズ」(74年~84年)などに出演。「バニシングIN TURBO」(76年)で監督デビュー。以来、「スプラッシュ」(84年)、「コクーン」(85年)、「ウィロー」(88年)、「バックドラフト」(91年)、「遥かなる大地へ」(92年)、「アポロ13」(95)などを手掛ける。監督作「ビューティフル・マインド」(2001年)は、米アカデミー賞で監督賞を含む4冠を獲得。ほかに「フロスト×ニクソン」(08年)、「ラッシュ/プライドと友情」(13年)、「ダ・ヴィンチ・コード」をはじめとする「ロバート・ラングトン」シリーズ(06、09、16年)などがある。

 (取材・文・撮影/りんたいこ)

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