綾野剛&北川景子:「パンク侍、斬られて候」語る 念願の初共演がかなった理由

映画「パンク侍、斬られて候」について語った綾野剛さん(左)と北川景子さん
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映画「パンク侍、斬られて候」について語った綾野剛さん(左)と北川景子さん

 俳優の綾野剛さんが主演した映画「パンク侍、斬られて候」(石井岳龍監督)が、全国で公開中だ。一人の浪人が、仕事欲しさにかけたはったりで自らドツボにはまり、さらに世間にとんでもない惨事をまき散らしていくという壮大かつ破天荒エンターテインメント時代劇だ。今作で、本格的初共演を果たした綾野さんと女優の北川景子さんに、共演についてや撮影現場での様子を振り返ってもらった。すると2人から、普段の私たちの仕事や生活でも役に立ちそうな言葉を聞くことができた。

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 ◇念願の初共演

 映画は、芥川賞作家、町田康さんによる小説を、人気脚本家の宮藤官九郎さんが脚色し、「狂い咲きサンダーロード」(1980年)や、「爆裂都市 BURST CITY」(82年)、近年では「シャニダールの花」(13年)、「蜜のあわれ」(16年)などの作品で知られる石井岳龍監督が映像化した。綾野さんは「超人的剣客」ながらプーターローの主人公・掛十之進を、北川さんは「腹ふり党」なる組織の極悪非道な元幹部・茶山半郎(浅野忠信さん)の世話係ろんを演じている。

 綾野さんと北川さんは、過去にCMで共演した際に意気投合。以来、互いにドラマや映画での共演を切望していた。今回、主演の綾野さんが、ろん役に北川さんを推薦し、北川さんも、「綾野さんが主演で、そこにヒロインで入れるなら、どんな作品でもやりたい」と飛び込んだ。ところが、北川さんが、宮藤さんが書いた脚本を読んだところ、「すごい台本だった(笑い)」という。それもそのはず、今作には、主人公の掛十之進を筆頭に、念動力が使える若者(若葉竜也さん)や人語を操る猿(永瀬正敏さん)など、ユニーク極まりないキャラクターたちが、縦横無尽に入り乱れて登場する。

 しかし、北川さんはひるまなかった。「普通のことはいくらでもできるから。こういう作品で一緒に飛んでみるのもいいかな」とオファーを快諾。そして実際、「こんなに楽だったことは本当にないんです。びっくりしています」と驚くほど、綾野さんとの「念願かなっての初共演」は有意義なものだったようだ。

 ◇「とりあえず」は禁句(綾野)、大事なのは「バランス感覚」(北川)

 そんな北川さんについて綾野さんは、「ろんはチャーミングですが、演じている北川さんもチャーミングな方。でも、パンク精神があるからチャーミングも豊かに見える」と手放しでたたえる。北川さんは、普段から仕事をする際、「こういうことを求められているんだと自分を客観視する」ことを心掛けているという。その一方で、「自分の意志や、やりたいこと、反抗心みたいなものは忘れたくない」という思いもあり、また自身、「白黒すごくはっきりしている」性格で、一度でも「それ、おかしいのでは?」と疑問を持ってしまうと、心にブレーキがかかってしまうという。だからといって、自分の気持ちだけを押し通し、「成立していないからやめましょうというほどの、わがままにもなりたくない」と話す。

 それを隣で聞いていた綾野さんは、「そういうことは、僕らに限らず、皆さんあると思うんです。こちらが、『ん?』となったときに、違う部署が、例えば、『そう思うのは分かりますけど、とりあえずやりましょう』と言うことは」と合いの手を入れる。

 「とりあえず」は便利な言葉だが“その場しのぎ”になりかねず、のちに大きな問題に発展する可能性もある。だからこそ綾野さんは、そういうときは、「演出部も撮影部も悩んでいるときに、俳優部で『何かできることはありますか』と言葉をかける」よう心掛けているという。

 今回の撮影では、「そういうことはなかったですけど」とした上で、万が一、自分の感情に照らし合わせ、北川さんが演じにくいと感じたときは、「『たぶん、このままやると、(北川さんは)きついから、もうちょっと方法を考えよう』と言うとか、最終的にご本人に入っていただいて、ご本人の気持ちが途切れないかどうかの確認をちゃんとしていく」などの気配りは怠らなかったそうだ。

 そんな綾野さんと自分の仕事の仕方が「似ていたのかも」と話す北川さん。「自分勝手にもならないし、かといってお約束とか段取りだけに傾くわけでもない。ある程度の約束を守りながら、自分を出すことができる。そういうバランス感覚みたいなものが、すごく大事だと私は思っています。そのへんの感覚を、(綾野さんは)話さなくても、すごく分かってくれている気がしました」と撮影を振り返りながら、綾野さんに感謝していた。映画は全国で公開中。

 <綾野剛さんのプロフィル>

 あやの・ごう 1982年1月26日生まれ、岐阜県出身。2003年俳優デビュー。主なテレビドラマに、NHK連続テレビ小説「カーネーション」(11年)、「最高の離婚」「空飛ぶ広報室」(共に13年)、「コウノドリ」シリーズ(15年、17年)。映画に「そこのみにて光輝く」(14年)、「新宿スワン」シリーズ(15、17年)、「怒り」「日本で一番悪い奴ら」「64-ロクヨン-」(いずれも16年)、「武曲 MUKOKU」「亜人」「ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~」(いずれも17年)など。石井岳龍監督作品には「シャニダールの花」(13年)、「ソレダケ/that’s it」(15年)に続いて今作が3作目。

 <北川景子さんのプロフィル>

 きたがわ・けいこ 1986年8月22日生まれ、兵庫県出身。2003年にモデル、女優として芸能活動を開始。主なテレビドラマに「謎解きはディナーのあとで」シリーズ(11~13年)、「悪夢ちゃん」シリーズ(12~14年)、「HERO」(14年)、「家売るオンナ」(16年)、「西郷(せご)どん」(18年)など。映画に「間宮兄弟」(06年)、「パラダイス・キス」(11年)、「ジャッジ!」(14年)、「の・ようなもの のようなもの」(16年)、「破門 ふたりのヤクビョーガミ」「君の膵臓をたべたい」「探偵はBARにいる3」(いずれも17年)など。待機作として9月公開の「響-HIBIKI-」、11月公開の「スマホを落としただけなのに」がある。

 (取材・文・撮影/りんたいこ)

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