北川悦吏子:「秋風羽織」を生んだ豊川悦司との深い絆 「還暦までにもう一回」と約束も

NHKの連続テレビ小説「半分、青い。」の脚本を手掛けた北川悦吏子さん 撮影/萩庭桂太
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NHKの連続テレビ小説「半分、青い。」の脚本を手掛けた北川悦吏子さん 撮影/萩庭桂太

 29日に最終回を迎える永野芽郁さん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「半分、青い。」(NHK総合毎週月~土曜午前8時ほか)で、最も人気を集めたキャラクターといえば、豊川悦司さんが演じた天才少女マンガ家の秋風羽織だ。当初はどこか常識が欠落したエキセントリックさと豊川さんの「怪演」ぶりばかりが注目されていたが、物語が進むにつれ、ヒロインの鈴愛(永野さん)の師匠として存在感を発揮。たびたび、その口から語られる「創作論」や「人生訓」、鈴愛ら弟子たちに対する「父性」で、多くの視聴者をとりこにした。「私も秋風羽織に関してはすごく思い入れがある」と明かす北川悦吏子さんに、この愛すべきキャラクターを一緒に作り上げた豊川さんへの思いを聞いた。

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 ◇「愛していると言ってくれ」のころも「『侃々諤々』っていうくらい2人で議論」

 「リアルを拾うんだ。想像は負ける」「半端に生きるな。創作物は人が試される」「物語を作ることは、自身を救うんだ」など、秋風が劇中で語った「創作論」のほとんどは、北川さん自身の“ものづくり”へのストレートな思い、書(描)き手としてのメッセージが込められているといわれる。

 「自分で創作について思っていることを、秋風が代弁してくれたような。私個人としてはそこまで強く言えないんですけど、秋風の姿を借りたからこそ、言えたというのはある」と北川さんは思い返す。

 もちろん、それが実現できたのは、1995年の大ヒットドラマ「愛していると言ってくれ」(TBS系)でもタッグを組んだ豊川さんの存在あってのものだ。「私と豊川さんは『愛していると言ってくれ』で33歳のころに出会って。あのときも『侃々諤々(かんかんがくがく)』っていうくらい2人で議論をして、相当大変な思いをしたんです(笑い)」と懐かしむ。

 ◇豊川悦司の妥協なき役作りは今も昔も変わらず… 

 根底には豊川さんの役に対する妥協のなさがあったようで、北川さんも「『愛していると言ってくれ』のときも手話は完璧でしたし、画家の役だったので、パリに行って絵を描いてきたらしくて、よくそこまでやるなっていうくらいの入れ込みよう」と半ばあきれ顔。

 それでも北川さんは「寄り添いたいというか、彼の思うことを聞きながら、脚本を書ければいいなって思った」と言い、「今回は朝ドラだし、お互い50(歳)過ぎたし、そこまで熱はないだろうなって軽く見ていたら、以前と同じようなテンションで」とうれしそうな表情を見せる。

 秋風のキャラクターは「(豊川さんから)僕はこう思う、こうしたい、これはどういうことなの?って感じで一緒に作り上げた」という。「だからこそ、あんなふうにすごく人気が出たんだなって。やるとなったら、とても振り切ってやっていただいて。朝ドラは1日でたくさん撮るから『家まで帰る時間がもったいない』って渋谷のホテルに住まれて。集中力を途切れさせないようになっていて、相変わらずだなって思いましたね」としみじみ語る。

 「終わったときに、『北川さん60(歳)になるまでにもう一回、一緒にやろうよ。還暦までに』って言ってくれて。私は『まだこの人は懲りてないんだな』って(笑い)。そこに応えられるように、私も体力をもたせなければって思いましたね。でも、とてもうれしかったですね」と北川さんは、ほほ笑んだ。

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