林家正蔵:初大河「西郷どん」で特殊メーク 大村益次郎役…見どころは「おでこ」!?

NHKの大河ドラマ「西郷どん」で大村益次郎を演じる林家正蔵さん (C)NHK
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NHKの大河ドラマ「西郷どん」で大村益次郎を演じる林家正蔵さん (C)NHK

 30日に放送される鈴木亮平さん主演のNHK大河ドラマ「西郷(せご)どん」の第37回「江戸無血開城」から長州藩医・大村益次郎が登場する。演じているのは落語家の林家正蔵さん。今回が初の大河ドラマで、出演決定時の心境を「まさかお声がかかるとは思っていなかったので『ヤッター!』という感じ。非常にうれしかったですね」と笑顔で明かす。見どころは特殊メークによる「おでこです」と力を込める正蔵さんに、役や、大村ら時代を変えた英傑たちへの思いを聞いた。

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 ◇大村益次郎という人は世の中を見渡す目を持っていた

 一人の噺家(はなしか)として落語に重心を置きつつ、俳優に声優にとマルチな活動をしてきた正蔵さんにとって、大河ドラマとは? 「大河に出演できるというのは、ある種、歌手にとっての紅白(歌合戦)出場みたいな。僕にはそんな経験は無いのですが、そういうことを役者の先輩がおっしゃっていて、『なるほどな』って思いました」と実感する。

 維新の十傑の一人に数えられる大村益次郎。医学や蘭学を学ぶと、兵学者となり、長州征伐や戊辰戦争で、長州藩兵を指揮し勝利に導く。江戸城明け渡しの後、上野寛永寺でのろしを上げた彰義(しょうぎ)隊を、見事な軍略で、わずか一日で攻略したことでも有名だ。

 正蔵さんの父(初代)林家三平さんの影響もあり、昔から大河ドラマをよく見ていて、1977年放送の「花神」で(四代目)中村梅之助さんの演じた大村を「かすかに覚えてはいる」とも話す正蔵さん。「『大村益次郎役をやってもらいたい』とのお話をいただいたとき、すぐにインターネットで司馬遼太郎さんの『人斬り以蔵』を買いましたね。その中に大村の半生をつづった『鬼謀の人』という短編があって。あとは伝記的なものを何冊か読んだのですが、私としては、そんなに変わった人とは思わなかった」と振り返る。

 大村は医家の出身で、武士のしきたりや作法に無頓着だった変わり者かつ合理主義者としても知られている。「おでこが膨らんでいて、豆腐が好きで、当時の常識としてのあいさつもろくにできない。それでも未来をしっかりと見据えていて、付いてこられない人が多かった。そのために誤解を生むような発言もあったかもしれないけれど、大村益次郎という人は世の中を見渡す目を持っていた。こういう人って、身の回りにたまにいたりするので、僕自身はそれほど奇人変人とは思えず、こうやって生まれ育ったのだから、それはそうだろうって腑(ふ)に落ちた」と印象を語る。

 ◇2時間近くかけて特殊メーク 登場シーン「おでこが歩いているように見える」

 記念すべき初大河の撮影現場はどのようなものだったのだろうか。「大村がいきなり江戸城へ乗り込んできて、西郷さんやらなんやらがいる中で『何だ、お前は?』って思われないといけないから、なるべく人と接することもなく、楽屋にこもっていましたね」と少し残念そうに話す正蔵さん。それでも「日本でもトップといわれる特殊メークの方に来ていただいて、撮影開始3時間前には楽屋に入って、あの特徴的なおでこを丁寧に2時間近くかけて作ってもらったので、その分、役への気持ちは入りやすかったですね」と思い返す。

 役作りに関しては「特別に何かをしたというよりかは、手元に集めた文献、資料を読みあさることに没頭して、とにかく大村という人物をおなかの中に入れておくってことが一番だった」と言うが、撮影前日は大村にならって「豆腐しか食べなかった」といい、「一日、豆腐だけで過ごして『オレは益次郎だ、オレは益次郎だ』って暗示もかけたりして」と、ちょっとした小咄(こばなし)も披露。

 撮影現場では、1980年代の小劇場ブームを知る者として、思いもよらない出会いもあったようで、「(有栖川宮役の)小須田康人さんは元々『第三舞台』の役者さんで、僕なんかは紀伊國屋ホールの客席で目をキラキラとさせながら見ていた思い出があるので、ドキドキでしたね」とうれしそうな表情も。

 そんな正蔵さんに改めて大村としての見どころを尋ねると、「おでこ」とにやり。「まずは第37回で、長い廊下を歩く大村益次郎のおでこを見てください。おでこが歩いているように見えますから。そこはぜひ見てもらいたいですね」とアピールした。

 ◇時代を変えた英傑たちに父親を重ねる 「選ばれてしまったという部分が…」

 時代を変えた英傑たちへの思いも語った。正蔵さんによると「何か時代にピックアップされた、選ばれてしまったという部分が、自分の父親にも重なるところがある」と持論を展開。

 「父はテレビの普及が無かったら、ただただちょっと変わった一人の落語家で終わっていたのだろうなって思うんですね。ところが昭和33(1958)年に真打ちになった時、テレビタレントなるものが他にいなかったから、噺家さんがテレビに出されて、ブラウン管の中の人気者になってしまった。そういった意味では、うちの父親も時代にピックアップされた人なんだろうな」と説明する。

 「きっと西郷さんや大村も、時の流れの中、その変わり目に『あなたは必要だから』と選ばれてしまったような気がする。自ら進んでというよりかは、時代に巻き込まれて、自分の役目を果たすと、その時代から去っていった。ふと父親の姿が浮かんだというか、なんか似ているのだろうなって思いましたね」と思いをはせていた。

 「西郷どん」は、明治維新150年となる18年放送の大河ドラマ57作目。薩摩の貧しい下級武士の家に生まれた西郷隆盛(吉之助)の愚直な姿にカリスマ藩主・島津斉彬が目を留め、斉彬の密命を担い、西郷は江戸へ京都へと奔走する。勝海舟、坂本龍馬ら盟友と出会い、革命家へと覚醒。やがて明治維新を成し遂げていく……という内容。

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