ライオンの隠れ家
最終話 僕たちの新しい始まり
12月20日(金)放送分
俳優の阿部寛さん主演の連続ドラマ「下町ロケット」(TBS系、日曜午後9時)でギアゴーストのエンジニア、柏田宏樹を演じている馬場徹さん。2017年10月期放送の「陸王」、18年1月期放送の「99.9-刑事専門弁護士- SEASON II」に続き、TBS系の人気ドラマ枠「日曜劇場」の作品に出演するのは、この1年で「下町ロケット」が3作目となる。それ以前にも「ルーズヴェルト・ゲーム」(14年)や「99.9」のシーズン1(16年)に出演と「日曜劇場」と何かと縁があり、ファンからも「日曜劇場の名脇役、馬場徹さん」などと認知されているが、その素顔とは? 転機となったという、つかこうへいさんとの出会いや、今も肝に銘じている教えなどについて語ってもらった。
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今年6月に30歳の誕生日を迎えた馬場さんが、斎藤工さんや城田優さん、瀬戸康史さんらを輩出してきた人気ミュージカル「テニスの王子様」(テニミュ)出身というのは、ファンの間では知られた話。そんな馬場さんにとって、役者としての大きな転機となったのが、10年に亡くなった演出家・つかこうへいさんとの出会いだ。
テニミュ俳優として順調にキャリアを重ねていた馬場さんは、つかさんの舞台「飛龍伝2010 ラストプリンセス」(10年上演)のオーディションを自ら進んで受けることに。20歳を超えた頃で「このまま行ったら自分は役者としていつかダメになるんじゃないかって危機感があった。当時つかさんのことはよく知らなくて、でも怖い人のところに行って、めっためたにやられないと(芝居というものが分からない)と思った」と振り返る。
「その時、頭に浮かんだのが蜷川(幸雄)さんとつかさんで。たまたまつかさんの舞台のオーディションがあるって、飛び込みだけど行くしかないって受けさせてもらったら、その場で『やれ(合格)』ってなった」といい、「自分の考えを改めさせてくれるような人の下で、全く違う環境で演技に触れないとダメになるって思っていました」と当時の心境を語る。
つかさんが10年7月に亡くなったこともあり、「つかこうへい最後の愛弟子」などと呼ばれることもあった馬場さん。つかさんの下で実際に何を学んだのだろうか。
「とにかく僕がつかさんに言われたのは『考えるな』。考えるのは俺(つかさん)なんだから。俺の言った通りにやればいい。お前(馬場さん)はひたすら目の前にいる人にだけしゃべればいいから、それだけをやれって(笑い)。だから、余計なことは考えずに、本当にそれだけをやった感じです。『下町ロケット』においても、目の前にいる人に自分の思いを伝えるってことだけを意識して演じるっていうのは、変わっていない部分だと思います」とも語る。
その分、「せりふ覚えに関しては使える時間は全て使う」のが信条で、「僕の場合はとにかく大声を出してせりふを覚えます。あとは急に違うことをやっていて、『さっき覚えたせりふが出てくるのか』って自分で自分を試してみたり。そこはもう、繰り返し繰り返しの連続で、体になじませていくんです」と明かす。
そんな馬場さんは初の「日曜劇場」となった「ルーズヴェルト・ゲーム」で一つの“伝説”を作っている。第3話でのこと。馬場さんは青島製作所野球部の左腕投手・萬田智彦として、退社する際に自身の思いを従業員たちに伝えるため、熱のこもった“演説”をしたが、約4分の長ぜりふをものともせず、10回撮って一度もかまなかったという伝説だ。
「あの時は(主演の)唐沢寿明さんに『俺は10年に一度のいい芝居ができた。次はお前だ』ってプレッシャーをかけられて」と苦笑い。「ちょうど唐沢さんが打ちひしがれて雨に打たれているシーンの裏での出来事だったと思うんですけど。『マジかっ!?』て思いましたね。すごくいいシーンだったので、自分の力でさらに良くしたいって思いもありましたが、とにかく『伝わればいい』と。何とか一度もかまずにやりきれました。それこそ、寝てもしゃべれるくらいに準備はしましたが」と話してくれた。
昨年のちょうど今ごろは「陸王」の撮影で忙しい日々を送っていた。「こはぜ屋」の新規事業に懐疑的な考えを持つメガネの銀行マンとして馬場さんのことを覚えてる日曜劇場ファンも多いと思うが、馬場さん自身も「前半はずっとこはぜ屋さんをいじめていたのですが、それはそれで楽しかったですね」と笑顔を見せる。
実は「99.9」第2シーズンと撮影が一部かぶっていて、「午前中にこはぜ屋さんをいじめて、午後は『99.9』の落合陽平として“女の子のお尻の追っかけ”をやっていました」とニヤリ。「それぞれの作品のカラー、テイストも違ったので、気持ちの切り替えもうまくできていたし、役にも振り幅があったので、とてもいい経験をさせてもらいました」と今もいい思い出だ。
そこから1年。今回の「下町ロケット」でも、ギアゴーストのエンジニアの柏田としてきらりと光る存在感を発揮している。ドラマには続編からの参加となったが、「佃製作所がないとロケットが飛ばないとか、大企業だけでは成し遂げられないことが、下町の工場から生まれていく。それは多くの人に勇気を与えることだと思いますし、顔合わせで監督に『作業着で、みんながプライドを持って、町を歩けるような作品にしたいんだ』って言っていたのがすごく印象に残っていて。『作業着を着ているってかっこいいんだぞ』というのも表現したい一つです」と力を込める。
最後に俳優としての目標を聞くと「あえて作っていなくて。目の前にある作品に一生懸命向き合うことを第一に考えています。周りで見ていただいている方に『こういう俳優になっていくんじゃないか』って思っていただければ、それはありがたいことで、今の課題を一つ一つクリアして、現場で役として生きて、出会いを大切に進んでいきたいなって思っています」と語っていた。
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