大恋愛:大石静が語る脚本論 描いたのは「ラブストーリーの夢」

戸田恵梨香さんとムロツヨシさんが出演するドラマ「大恋愛~僕を忘れる君と」の1シーン(C)TBS
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戸田恵梨香さんとムロツヨシさんが出演するドラマ「大恋愛~僕を忘れる君と」の1シーン(C)TBS

 女優の戸田恵梨香さんと俳優のムロツヨシさんが出演するドラマ「大恋愛~僕を忘れる君と」(TBS系、金曜午後10時)が、「泣ける」「胸キュン」など、視聴者の心をつかんでいる。若年性アルツハイマーに侵された主人公と、自分を忘れていく恋人を明るくけなげに支える男性の切ない純愛物語で、「ラブストーリーの名手」と称される大石静さん(67)のオリジナル作品だ。近年のテレビドラマでは、小説やマンガなどの実写化が多い中、「オリジナルのドラマを生み出すことにこだわってきた」という大石さんに、脚本論やドラマを描くことについて聞いた。

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 ◇大石脚本のセリフの秘密

 「私みたいな普通の人間には、こういうピカレスクでエロティックな刺激が必要なんですよ」。これは、戸田さん演じる主人公・尚が、第1話で言ったセリフだ。日常会話ではなかなか出てこない言葉だが、どういうときにこうしたセリフが誕生するのかを大石さんに聞いてみると、「ぽろっと出る」といった回答が。

 「普通、そんなセリフ言わないじゃない? 脚本家にとって最も大事なのは、リアルなセリフを書く力があるということなんですけど、ただここはリアルじゃなくて……」と“ある狙い”があったと明かす。たとえば、大石さんが手がけた「セカンドバージン」(NHK総合)でも、「なにが欲しいかって言ったら、死のような快楽」というセリフがあったというが、実は、大石さんいわく、これも同じ“狙い”だったという。

 「普段人が言わないようなことを言うと、『ん?』って気になるじゃない? リアルなセリフだけだと、どんどん聞き流れていくんだけど、時々、絶対人が言わないような刺激的なことを混ぜ込むのが、私のテクニック」と種明かしする。また、「なくなりそうな日本語。例えば、『いざなう』『たゆたう』だとか、そういう言葉を時々使おうと思っている」とこだわりを明かす。

 ◇大石静が考えるドラマの使命

 「(脚本の)一行一行にこだわっている」と話した大石さん。「大恋愛」では、戸田さんとムロさんの胸キュンシーンが登場し、SNSでは「大恋愛。キュンキュンが止まらない」など、視聴者を胸キュンさせている。「ラブストーリーの夢を描いている」という大石さん自身も、「この2人が胸キュンすると、私も胸キュンする。自分で書いたのに、なんか見ていて胸キュン」と語る。

 「とにかく日常生活にはあり得ないような激しい思いと、その胸キュンが、ある種の夢だと思うんですね。視聴者は、激しい恋はそう簡単に手に入らないから、その夢を提供したいというつもりでドラマを描いたし、それがドラマの使命だと思うんです」と力を込める。

 これまでに数々の作品を世に送り出してきた大石さんは、「劇的な夢であったり、普段しないような苦労と、それを突破する力であったり。そのカタルシスをお客様に感じていただいて、生きる力になれば、『じゃあ明日も頑張ろう』と思ったりする気持ちになれば、私たちはドラマを作った意味があったなと思う」と語る。最後に、「ぜひ(最後まで)続けて見ていただきたいと思いますね」と視聴者に呼びかけた。

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