じゃあ、あんたが作ってみろよ
第9話 おにぎり食べて、元気だせ!
12月2日(火)放送分
宮藤官九郎さんが脚本を手がける1月スタートのNHKの大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」で、主人公・金栗四三の恩師となる嘉納治五郎役を務める役所広司さん。“日本スポーツの父”と呼ばれる嘉納治五郎は、日本の五輪初出場のために奮闘するドラマの重要なキャラクターの一人だ。役所さんに、演じる嘉納治五郎への思いや役作りのエピソード、自身の五輪への思い出などを聞いた。
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ドラマのテーマは「“東京”と“オリンピック”」。日本人が初めて五輪に出場した明治の終わりから、東京に五輪がやってきた1964年まで、およそ半世紀にわたって描くオリジナルストーリーとなる。大河ドラマで近現代史を取り上げるのは1986年の「いのち」以来、33年ぶり。主演は中村勘九郎さんと阿部サダヲさんで、勘九郎さんは日本で初めて五輪に参加したマラソン選手・金栗四三役、阿部さんは「東京オリンピック」実現に執念を燃やす政治記者・田畑政治役を演じ、“リレー”形式で主演のバトンをつなぐ。
「2020年の東京五輪に向けて作るには、最高のタイミングだなと思いました」と「いだてん」を語る役所さん。宮藤さんの脚本について「面白いですね。粗削りなんだけど、繊細なところは繊細」と語り、「撮影をしていても、台本を読んでいても、今までと違う大河ファンが増えるんじゃないかと思っています」と手応えを明かす。
役所さんは嘉納治五郎について「立派な人だと思います。この時代に、これだけの語学力があって、オリンピックで世界平和とつなげて……。猛反対を受けながら日本をストックホルム五輪まで導く。『この人がいなかったらどうなっていたんだろう』というぐらいの人物ですよね」と評し、「ドラマでは前向きすぎて周りに迷惑ばかりかけているけど、こういう人がいないと歴史は動かないんだろうな、という感じがする人物」と魅力を語る。
ただ、役作りでは苦労もした。「動画がなくて、スピーチをしている音だけは聞いたことあるけど、すごく甲高い声で『これは難しいな』と思った(笑い)」と役所さん。そこで、写真や資料を読み込み、「ああ、こんな人だったんだ、と思いながら……。最終的には、宮藤さんが作り上げた嘉納治五郎と照らし合わせて、うまく実在感が出るといいなと思ってやっていました」と明かす。そして嘉納治五郎といえば、やはり柔道。「僕と(東京高等師範学校教授・永井道明役の)杉本哲太さんは、講道館に行って稽古(けいこ)しました。筋肉痛に打撲にと、いろいろ苦労しました」と苦笑する。
劇中では、フロックコートや山高帽を着用し、さらに口ひげもつける。役所さんは「ひげをつけるたびに、“ひげダンス”の音楽が自分の中で鳴る(笑い)」とちゃめっ気たっぷりに語り、「ドラマで山高帽をかぶる経験はなかったので、不思議な感じです」と感想を語る。実はひげは、一本一本くっつけているといい、「一回くっつくと直しがなくて楽なんですけど、ご飯を食べるのは大変。もうかなりの本数、ひげを食ってると思います(笑い)」と楽しそうに裏側を明かす。
勘九郎さん演じる金栗四三との共演シーンも多い。役所さんは勘九郎さんの金栗について「本当に昔の人みたいで(笑い)。マラソンランナーらしい体形に準備されていたし、熊本から出てきた、地方の人の感じがすごく出ていました。素晴らしい役作りをされていると思いました」と絶賛。「勘九郎さんの金栗四三の骨の一本になれるように役に立ちたいですね。やっぱり主人公が輝いているドラマでないと面白くない。みんなが金栗四三を盛り上げていく役割を背負っているのだと思います」と語る。
昨年8月には、1912年に五輪が開催されたスウェーデン・ストックホルムのロケに参加した。役所さんは「建物は100年前とあまり外観が変わっていないので、ロケをした価値はあったと思いました」と振り返り、「今回は、砂を大量に運んで、(陸上の)トラックを当時の砂の状態にしていました。しっかり準備をしてもらえたので、100年近い前に初めて日本が入場行進した雰囲気が出ていたと思います」と出来栄えに太鼓判を押す。
現地での撮影時は、金栗四三の気持ちに思いをはせた。「嘉納さんはいろんな国を視察などで経験していますので、あまりカルチャーショックはなかったでしょうけど、金栗四三さんはこんなところにいきなり連れてこられて、どんな気持ちだったんだろうと思いました」と役所さん。「ストックホルムでは、金栗四三さんは“ミッシングランナー”で有名人で。ロッカールームに行くところに金栗四三さんの写真が飾ってあって、『ああ、大昔に日本人がここに来たんだな』と思いました」と感慨深げに語る。
ところで、役所さん自身は、五輪にはどんな思い出があるのだろうか。最初の五輪の記憶は64年の東京五輪で、「あのころ、僕は長崎の片田舎にいて。でも、日本中が浮足立っていた気がします」と当時の印象を語る。「(柔道で)ヘーシンクに神永が負けた試合は印象に残っています。すごく悲しかった記憶がありますね」と振り返る。また、98年に長野で開催された冬季五輪には、現地まで足を運んだ。スキーのジャンプ団体で日本が優勝したときで、「あそこで(自身も)ウェーブやってたんですけどね」と笑顔で懐かしむ。
2020年には、いよいよ56年ぶりの東京五輪が開催される。役所さんは「できれば、世界のお手本になってほしいな、という気がしますね」と願いを込める。最後に、ドラマの見どころを聞かれた役所さんは、「100年ぐらい前に、日本人が世界とスポーツで戦うために、あんな遠いところまで行った。そこから日本で僕たちが見ているような『スポーツで感動をもらえる』というところに発展していった。ドラマではその過程が細かく、ユーモラスに描かれているので、『スポーツで世界中が交流する』ということを感じてもらえればいいなと思っています」とメッセージを送った。
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