石原夜叉坊選手:UFC234で「負けたら引退」! 崖っぷちの覚悟語る

石原夜叉坊選手(C)WOWOW
1 / 2
石原夜叉坊選手(C)WOWOW

 総合格闘家の石原夜叉坊選手が、10日に豪州メルボルンのロッド・レーバー アリーナで開催される「UFC234」で、韓国のカン・ギョンホ選手と対戦する。石原選手は、2015年にUFCと正式契約後、2連続KO勝利で最高の滑り出しを見せたが、ここ5試合は1勝4敗と負けが先行。現在2連敗中と“崖っぷち”に立たされている。負けられない一戦を前にした石原選手が「負けたら引退」という覚悟や意気込みなどを語った。

ウナギノボリ

 ――カン・ギョンホ戦まで2週間を切りましたが、コンディションはいかがですか?

 最高ですね。この2年、苦しい思いもしてきて、自分の強い部分も弱い部分も改めて知りましたし、どこで自分が勝負できるかも分かりました。いい練習もできていますよ。

 ――石原選手は2年半前から米国に拠点を移しユライア・フェイバー率いる「チーム・アルファメール」で練習してきましたよね。それが今回、日本でトレーニングキャンプを張ろうと決めた理由はなんでしょうか。

 米国に1人で渡ってやっているときは、「俺がやらなアカン」と思いすぎて、視野が狭くなっていたんです。それが知らないうちにストレスになっていって、いっぱいいっぱいになっていたこともありました。それが、日本に帰ってきたら、僕のことを昔からよく分かってくれてる仲間が、練習中に日本語で「力抜けよ」「一呼吸置けよ」って言ってくるんです。その一言一言が、自分の心に大きな余裕を作ってくれました。何より、自分の育った国の言葉で追い込めて、コミュニケーションも取れているので、体より心のケアができているんです。そのおかげで今はすごく調子がいいですね!

 ――仲間たちが、試合に向けた心を作ってくれているわけですか。

 はい。みんなが仕上げに協力してくれてます。だから今の僕、強いですよ、本当に。

 ――では、昨年6月にピョートル・ヤン選手に敗れて以降、取り組んできたことは、技術的なことよりメンタル中心ですか。

 ほとんどメンタルですね。心のケアとモチベーションバック。実際、心が充実してきたら、これまでできなかったことが、できたりするようにもなりました。やっぱり、心技体ですね。心に豊かさがないと、自分の可能性すら止めてしまう。今は心がケアできたからこそ、戦いにも戻ってこれたと思ってます。

 ――ピョートル・ヤン選手との戦いの後は、「自分を信じきれなかった」というコメントもありました。

 信じきれなかったですし、自分と向き合えてもなかったですね。一生懸命やってきたんですが、ただ一生懸命やってた“だけ”という感じで……。アメリカに行って、すごくいい環境で、毎日全力を出し切るっていう練習ができていたけれど、心のどこかでストレスを感じていて、自分の世界が小さくなってた。だから前回、初めてKO負けしたあと、思い切って5カ月間、格闘技から離れたんですよ。その間、必死で遊びまくりました。そうしたら心に余裕ができて、見えなかったものも見えてきた。連敗したあとに遊んでいる僕を見て、「夜叉坊、なにやっとんねん。あいつ終わったな」と思った人もいるかもしれないですが、僕はなりたい自分になるために、必要な過程だったと思っています。

 ――遊びまくることで自分を取り戻したっていうところが、夜叉坊さんらしいですね。ただ、現在連敗中ということで、後がない立場でもあります。

 自分は後がないとは思ってなくて。そういうネガティブな気持ちは一切ないんですよ。自分の感覚は、みんなには見えないから伝わらないかもしれないですが、すべてがベストの状態なので。

 ――負けることを考えてないから、崖っぷちとも思っていない、と。

 次は今、UFCと結んでいる契約の最後の試合で、負ければもう次の契約はないでしょうし。そういう状況であることは、もちろん分かっているんですよ。だから、負けたら僕は引退するって決めていますから。

 ――負けたら引退ですか!

 でも、それは追い込まれて言ってるわけではなくて、それぐらい今回は自信があるし、世界と戦えると思えているので。カン・ギョンホ選手の倒し方次第で再契約もあるでしょうし、やっとその準備ができた感じです。この2年間、アメリカに出て、1人で踏ん張って苦しいことしてきましたし、それが今の自分につながってると実感しています。だからアメリカでの2年間は、遠回りとも近道とも思ってはないですが、必死でやってきたから、今があると思っています。

 ――対戦相手のカン・ギョンホ選手についてはどんな印象ですか?

 本当に世界のアベレージですよね。世界のトップで戦っている選手の中で、ちょうど真ん中ぐらい。この選手をいい形で倒せれば、間違いなく世界で戦っていける。でも、これに負けているようなら、もうやらないでいいですし、世界のトップにいけるわけがない。倒しますよ!

 ――近年、UFCでは日本人選手がなかなか結果を残せておらず、日本人UFCファイターもかなり少なくなってしまいましたが、そういう状況についてどう感じていますか?

 それは日本人が自分らしい戦い方をできていなかったからだと思うんです。でも日本人って、強いですから! そこに自信を持ててないだけで、僕らには僕らのトレーニングの方法があるし、僕らには僕らの戦い方がある。バッチリはめ込めば勝てますよ。それを僕が証明したいし、そこまでたどり着いてると思っています。

 ――今、世界に多くのMMAプロモーションがあって、UFC以外を目指す日本人選手も増えてきています。その中で石原選手がUFCにこだわる理由はなんですか。

 だって、UFCが世界一じゃないですか。僕はUFCという舞台に上がって、連勝したり、KOしたりして、大金もらって世界が変わった瞬間も見ています。日本では味わえないことを僕は向こうで味わってきた。あれを味わってしまったら、もう抜けられないですよ。だからUFCトップファイターの生活ぶりや遊び方なんかも含めて、日本では見られないことを僕が日本に持って帰ろうと思ってます。そうしたら独壇場ですよね、僕しかいないですから。

 ――自分が夢を見せると。

 誰もできなかったことをやれるところにいるんですから! 僕、こんなに真剣に何かに取り組んだことって、これまでなくて。すごくもがいて、悔しい思いもして、やっと自信を持って、「今の俺が一番強い」って言えるようになった。次の試合では、これをぶつけたい。これで無理だったら、先のことなんか考えられないし、それぐらいの自信がありますから。負けたらやめる、それだけ。だから今、生き切ります!

 ――期待しています! オーストラリアは先日、大坂なおみ選手がテニスの全豪オープンで優勝したばかりですし。

 ぜったいいいエナジーが(今のオーストラリアには)ありますよね。日本人として、大坂なおみさんに続かないと!

 ――「UFC234」の会場は、大坂選手が優勝した時と同じ、「ロッド・レーバーアリーナ」ですからね。

 えっ! 本当ですか!? 今、すごい鳥肌がたちました。そうしたらKOで勝って、ファイトボーナスをもらって、インタビューで大坂さんに感謝の言葉をいいますよ。「ええ空気作ってくれて、ありがとう!」って。そして大坂さんをデートに誘いたいですね(笑い)。

 *……WOWOWは、「生中継!UFCー究極格闘技ー UFC234 in メルボルン ミドル級王者ウィテカー初防衛なるか!? 2年ぶりのアンデウソン・シウバ復帰戦」と題して、石原夜叉坊選手とカン・ギョンホ選手の試合などを、10日正午からWOWOWプライムで生中継する。

写真を見る全 2 枚

テレビ 最新記事