女優の柴咲コウさんが出演する映画「ねことじいちゃん」(岩合光昭監督)が22日から公開されている。小さな島で暮らす猫と人々を描いた作品で、柴咲さんは都会から島へ移住し、カフェを開く謎めいた女性・美智子を演じている。柴咲さんに映画の撮影エピソードや今の女優としての考え方などを聞いた。
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原作は、累計発行部数35万部を超える同名の人気マンガ。NHK BSプレミアムのドキュメンタリー番組「岩合光昭の世界ネコ歩き」などで知られる岩合監督の初監督作で、立川志の輔さんの初主演作品。小さな島で暮らし、2年前に妻に先立たれた大吉(志の輔さん)は、飼い猫のタマと毎朝散歩することを日課にしていた。しかし大吉が体の不調を覚え、日々に変化が訪れ始めた矢先、タマが姿を消す……というストーリー。小林薫さん、田中裕子さん、柄本佑さんらも出演している。
オファーを受け、「『ねことじいちゃん』というタイトルで、監督が岩合さん、ということで、二つ返事でオーケーしました」と柴咲さん。そこには「岩合さんの初監督作品は二度とないので、関わりたかった」という思いがあったという。「内容に目を通さないうちから『やる』と決めて。それから脚本を読み込んでいきました」と語る。
たくさんの猫が登場する作品。そのため、柴咲さんは「撮影が始まる前はみんな不安でで、『猫待ちとかあるんでしょ』とか言っていたんですが……」と明かすも、「(監督が)見事に猫たちをうまく切り取ってくれて……。ベーコンというタマ役のにゃんこが、とにかくお利口だった、ということが大きいと思いますが、いろんなことがマッチして作品ができた感じですね」と振り返る。
演じる美智子は、都会から移住しカフェを開店する明るい女性。年齢層が高い登場人物の中では若い世代だ。柴咲さんは「同年代の方が見た時に、懸け橋となるようなキャラクターかなと思いました」と語り、「都会に住んでいる人に、映画をどう見てもらえるかなと考えて……。美智子のキャラや振る舞い方で、物語の浸透の仕方が違うのかなと感じたんです。だからといって何かするわけではないんですが、役者さんや監督とコミュニケーションを取り、岩合さんが求める美智子像に近付けばいいなと思っていました」と説明。「監督からは『とにかくお芝居しないでください』と言われて。表情や間合いはナチュラルにやってほしいという意向でした」と明かす。
共演者にはベテランが多く、柴咲さんは「本読みの時から『すごい人が集まっているな』と思いました。大先輩たちです」としつつ、「年齢とか関係ないよ、という、ほがらかでナチュラルな方たちばかりだったので、すごく居心地がよかったです」と笑顔を見せる。
共演という意味では、猫たちも大事な共演者だ。猫好きとして知られる柴咲さんにとって、猫はどのような存在なのか。「私にとって猫は癒やしですし、救いでもある。人間の言葉で会話はできないけど『分かってくれているんじゃないか』と思う瞬間も。生きるうえでは、良い時と良くない時はあるけど、寄り添って一緒にいてくれる、大事な存在ですね」と猫への思いを明かす。
18年には芸能活動20周年を迎えた。感慨を聞くと「ないですね(笑い)」とさらりといい、「『あっという間にそんなにたっちゃった』というか。16歳から(芸能界に)入って、いつの間にか36、37歳になっていて……。いつの間にか50、60歳になっているんだろうなって感じがします。でも、いちいち振り返るものでもないし、あまり数字とかは気にしていないですね」と淡々と続ける。
20代と30代で、仕事に対する考え方に変化はあったのか。「それは変わりますよね」とうなずき、「経験値が増えていくし、出会いの数も増えていくし、責任感は増していく。以前は、自分を守るというところが強かったんですが、(今は)そういうのは要らない、というか」と明かし、「その場その場で『この役にはこの人がいい』と話(オファー)をもらっているわけなので、そこでいかに(役に)マッチさせるか。あまり『自分、自分』ということでもないな、と思っています」と変化を語る。
多忙な女優業と並行して、昨年はアパレルブランド「MES VACANCES(ミ ヴァコンス)」を初プロデュースした。ブランドのコンセプトは「サステナブル(持続可能)で優しい服」で、生活環境にも自然環境にも優しい服。柴咲さんはプロデュースの意図について「危機感を持っているから、『やらないと』と駆り立てられるところがあります。どのようにして生かされているのか、環境などにあまりに目を向けない人が多過ぎるな、と。自分自身も知らなかった反省もあります。この世で起きている、どれだけのことを自分は知っているんだろうと思うと、知らないことってすごく怖いこと。まずは知って広めていく、というのが自分の役割でもあるかなと思っています」と明かす。
女優、アーティスト、そしてアパレル。さまざまなことに挑戦している柴咲さん。それらは「ぜんぶ自分の中では一つのサイクル」という。「そうじゃなかったら、やれていないと思います。楽しくなかったら続けていられないですし、そんな人生は嫌だ(笑い)。あとは『必要とされている』ということ。自分のやりたいことと、必要とされていることがマッチするって、すごくぜいたくなことなので、大事にしていきたいです」と笑顔を見せる。
多方面で活躍する柴咲さん。最後に、これから挑戦したいことは?と聞いてみると、「今、挑戦しまくっているので、さすがに余裕ないっす(笑い)」と充実した表情で笑みを浮かべて語ってくれた。
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