長江俊和:島崎遥香の“オーラ”を絶賛 ドラマ「東京二十三区女」の制作エピソード語る

WOWOWのオムニバスドラマ「東京二十三区女」で監督・脚本を務める原作者の長江俊和さん
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WOWOWのオムニバスドラマ「東京二十三区女」で監督・脚本を務める原作者の長江俊和さん

 映像作家で小説家の長江俊和さんが監督・脚本を務めるWOWOWのオムニバスドラマ「東京二十三区女」が12日から放送される。ドラマは倉科カナさんや安達祐実さんらが演じる各話の主人公が、東京に実在する恐怖スポットへと足を踏み入れていくホラーミステリー。「AKB48」の元メンバーで女優の島崎遥香さんが全話に登場するほか、第6話では主演も務めている。同作の原作者でもある長江さんに、企画の背景や撮影エピソード、劇中で重要な役割を務める島崎さんのキャスティングなどについて聞いた。

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 ◇島崎遥香の璃々子役を絶賛 「AKB48時代のイメージに当てはまる」

 「東京二十三区女」は、長江さんの小説が原作のホラーミステリー。全6話で、各話の主人公が東京に実在する恐怖スポットへと足を踏み入れていく……という内容。主演女優として、第1話「渋谷区の女」に倉科さん、第2話「江東区の女」に安達さん、第3話「豊島区の女」に桜庭ななみさん、第4話「港区の女」に壇蜜さん、第5話「板橋区の女」に中山美穂さん、第6話「品川区の女」に島崎さんが登場する。

 島崎さん演じる原田璃々子は、ストーリーを進行させるうえで欠かせない重要人物だ。璃々子役を演じる島崎さんについて、「璃々子を誰に演じてもらうかいろいろ考えていて、島崎さんがぴったりなんじゃないかと思った」と長江さんは語る。

 その理由を聞くと、「(璃々子は)変わった女の子で、霊感があって、不器用で人と接するのがうまくないけど、透明感がある人物。『AKB48』時代の島崎さんのイメージに当てはまるなと思ったんです。実際に演じてもらったら、ぴったりでしたね。美しい方で、透明感も出ていて、オーラもあって。彼女自身の持っているオーラみたいなものに、“璃々子感”が出ていたと思います」とうれしそうに語る。島崎さん自身も、どこか不思議な璃々子に共通点を見いだしていたようだ。「台本を読んだときに『これ私みたいですね』と言っていました」と長江さんは明かす。

 島崎さん以外にも、倉科さん、安達さん、桜庭さん、壇蜜さん、中山さん……と豪華女優が顔をそろえた。長江さんは「小説の内容にばっちりな方に出ていただいた」と手応えを明かす。「中山さんには、数奇な運命に翻弄(ほんろう)された女を艶っぽく演じていただきました。モノローグを読んでいただいたんですが、感動しましたね。淡々と切なく読んでいただいて、イメージ以上のもの。倉科さんは影の部分と明るい部分の裏腹な感じを絶妙に演じていただいて。ミステリーの主人公としては最高の演技をしていただいたかなと思います」と語る。

 さらに、「安達さんは鈴木砂羽さんと対立するんだけど、安達さんは可憐(かれん)で、鈴木さんは狂った演技。2人の攻防が見ものになったなと思います。桜庭さんにも、絶妙な演技をしてもらいました。小日向文世さんとの老いらくの恋の話だけど、いやらしい感じがなく、ありそうだなと思える演技。壇蜜さんは自身にミステリアスな雰囲気があって、竹中直人さんといい塩梅(あんばい)でやっていただきました」とそれぞれの主演女優について感想を語る。
 
 ◇「ドラマにできるか」と戸惑いも… 

 そもそも、なぜ東京と、そこにまつわる恐怖を描こうと考えたのか。長江さんは「僕は大阪出身で、東京に出てきて30年ぐらいたつんですが、引いた目で『東京って面白いな』と思っていたんです。で、一区ずつ調べていったら、興味深いことがいっぱいあった」と企画の背景を明かす。

 「板橋区の『縁切榎』に行ったら、絵馬がいっぱいあって、そこには『夫と別れたい』と実名や携帯番号も書いてあったり、『息子が変な女にたぶらかされていて、別れさせてください』と書いてあったり。マイナスの方向で、せまいところに何百という絵馬があるのを見て、負のオーラが渦巻いているなと思って、『これをテーマにミステリーを作れないかな』と。そんな感じに各区を調べていきました」と長江さん。そんな作業は「すごく楽しかったですね」といい、「苦しい部分もあるんですが、どんな話になるのかな、と。書くのに3年ぐらいかかりました」と制作の裏側を説明する。

 映像化にあたって監督も務めた長江さんは、「やりがいを感じていました」と振り返るが、当初は戸惑いもあったという。「小説を書くときは、純度が濁る気がするので、映像化についてはあまり考えていないんです。だから(映像化の話を受けて)『これ、ドラマにできるのかな』と戸惑いもありました」と打ち明ける。また、物理的な問題として、「渋谷のど真ん中でロケができるのかとか考えたり……。どこまで小説のイメージを映像化できるか不安感はありました」と長江さん。ただ、完成した今は「結果的にはキャスト、スタッフの方が頑張って、いいものになったのではないかと思います」と手応えをみせる。

 ロケは懸念していた通り、苦労が多かったという。「渋谷のロケは苦労していましたね。はじめは、全部ダメって言われたんです。渋谷の街の下を流れている川の上を歩いていくので、センター街とかキャットストリートとか脚本には書いたけど、(ロケは)ダメだと言われて……。何度も警察署に掛け合ってもらい、なんとかオーケーしてもらったんです」と苦労を明かす。

 2020年には東京五輪が控えている今、改めて東京をテーマにした作品を世に出す意義とは? 最後にそう聞いてみると、長江さんは「オリンピックに向けてどんどん変わっています。例えば渋谷も、小説を書いたときからまた変わっている。日々どんどん変動していく街なんだなと思います」とし、「だからこそ、こういう記録として残しておいて。ただの記録というより、エンターテインメントにして読んでいただいて、東京にそんな伝説があったんだなとか、ちょっとでも思い出してくれる人がいればいいな、と。僕自身、調べていく中で『そうだったんだ』という思いがありました」と語った。

 ドラマは、12日からWOWOWプライムで毎週金曜深夜0時放送。第1話は無料放送。

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