小野憲史のゲーム時評:ゲーム業界の女性進出 求められるキャリアパスの整備

小玉理恵子さんが受賞したGDCの様子
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小玉理恵子さんが受賞したGDCの様子

 超硬派のゲーム雑誌「ゲーム批評」の元編集長で、ゲーム開発・産業を支援するNPO法人「国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)」元代表の小野憲史さんが、ゲーム業界の現在を語る「小野憲史のゲーム時評」。今回は、ゲーム業界における女性の開発者の比率と現状について語ります。

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 3月に米サンフランシスコで開催されたゲーム開発者会議GDCでは、女性の活躍が目立った。ゲーム開発者の投票をもとに顕彰される「ゲームディベロッパーズチョイスアワード」の生涯功労賞では、アクションアドベンチャー「アンチャーテッド」シリーズなどで脚本やディレクターをつとめたエイミー・ヘニグさんが、女性で初めて選出された。

 また、パイオニア賞にはRPG「ファンタシースター」シリーズなどを手がけた、セガゲームスの小玉理恵子さんが選ばれた。同賞に日本人が選出されたのは3人目で、こちらも女性では初めてとなる。他にベストモバイルゲーム賞とベストデビュー賞に輝いた「フローレンス」も注目された。若い女性の初恋を描いたアドベンチャーゲームで、プロデューサーは女性のカミナ・ビンセントさんだ。

 もっともゲーム産業全体を見ると、女性の開発者は少数派だ。国際ゲーム開発者協会の調査によると、2017年のゲーム開発者の男女比は、男性74%、女性21%、その他5%となっている。これは日本でも同様で、業界団体のCESAが行った「ゲーム開発者の就業とキャリア形成2018」では、女性の回答者の割合が15%に留まっている。

 ポイントは国別の女性の社会進出と隔たりがあることだ。「The Global Gender Gap Report 2015」によると、アメリカの男女平等指数ランキングは28位で、日本は101位だ。にもかかわらず、女性のゲーム開発者比率に大きな違いはない。男女平等指数の先進国である北欧でも同様で、3位のフィンランドも4位のスウェーデンも女性のゲーム開発者比率は20%だ。

 これにはゲームが男性向けの遊びとして発展してきた背景があるだろう。もともとゲームはシューティングやアクションなど、男性が好むとされるジャンルから始まり、女性の業界志望者も少なかった。そのうえ、男性の管理者層には男性の新人を採用しがちな傾向がみられる。その結果、女性のキャリアパスが未整備な状態が続き、結果的にゲーム業界は男性中心社会になったというわけだ。

 もっとも、スマホゲーム時代になって女性ユーザーの割合は急増している。米調査会社のnewzooによると、ゲーマーの男女比は54%対46%で、スマホゲームだけをみると52%対48%となる。ゲーマーの男女比が半々であるのに対して、女性のゲーム開発者が2割に留まるということは、「ゲーム業界は女性ユーザーのニーズに応え切れていないのではないか」という仮説が生まれる。

 同資料によると男性はシューティングゲームを好むが、女性はパズルゲームを好み、男性よりも女性の方がSNSや口コミで新しいゲームを発見する割合が高いなど、嗜好性や行動にも違いが見られるという。もっとも、性別を巡るステレオタイプに陥ることで、視野狭窄に陥る恐れもある。これを回避するためにも、ゲーム開発者の男女比是正が重要で、これは日本だけでなく、世界全体の課題だといえる。

 幸い日本のゲーム業界は少子化の影響も伴い、各社ともに人材の採用・育成に力を入れはじめている。女性のキャリア問題についても、ゲーム開発者会議のCEDECで議論が行われるなど、業界全体の意識向上が見られるようになってきた。ゲームは本来、多様な人材がさまざまな職務で長く活躍できる分野だ。日本のゲーム業界は多様性の面で先進国と言われるようになることを期待したい。

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 おの・けんじ 1971年生まれ。山口県出身。「ゲーム批評」編集長を経て2000年からフリーのゲームジャーナリスト。08年に結婚して妻と猫4匹を支える主夫に。11~16年に国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)代表として活躍。退任後も事務局長として活動している。

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