8月9日に東京ビッグサイト(東京都江東区)ほかで開幕した日本最大の同人誌即売会「コミックマーケット(コミケ)96」は数々の変更点があった。入場有料化、企業ブースが1.5キロ離れた青海展示棟に移動して初の2地区での開催、1日多い4日間開催……とこれまでにない転換期を迎えた。ふたを開けてみれば、初日の9日は約16万人が来場し、昨年夏のコミケ94の初日とほぼ同程度、2日目の10日も昨年夏の2日目より約1万人多い17万人となり、大きな混乱もなかった。単独インタビューに応じたコミックマーケット準備会の市川孝一共同代表は「4日間が終わったわけではないので、まだ成功とは言えませんが、手応えは感じています」「大きな混乱がないのは、スタッフの努力があるからこそ」と話す。また、今後は入場無料に戻すことも検討していることを明かした。
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コミケは、1975年に始まったマンガや小説、ゲーム、音楽などの同人誌の即売会で、現在は夏と冬の年2回開催されている。今回のコミケ96、12月28~31日のコミケ97、2020年5月2~5日のコミケ98は、4日間にわたって東京ビッグサイトと青海展示棟で開催される。青海展示棟は東京ビッグサイトから約1.5キロ離れている。同じ敷地内ではない二つの離れた地区でコミケが開催されるのは、今回のコミケ96が初めてとなった。
2020年夏の東京五輪に向けた工事のため、東京ビッグサイトの東展示棟が使えず、南展示棟が新設されたものの、一日ごとに配置できるサークルスペースが従来の約75%になる。そこで4日間の開催によって、より多くのサークルを受け入れられる体制にした。東京ビッグサイトの西展示棟、南展示棟に個人が同人誌を販売するサークルスペース、青海展示棟にアニメなどの関連企業が出展する企業ブースが配置された。酷暑の中、2会場を移動するのは大変ではあるが、シャトルバスを利用する人も多かったといい、2会場の開催は大きな混乱はなかった。
コミケの来場者は、同人誌のみが目当ての人、同人誌は購入せず企業ブースにしか行かない人、同人誌、企業ブースの両方が目当ての人がいる。来場者全員が2会場を移動するわけではないため、2会場での開催に踏み切ったところもあるという。
これまでのコミケでは、一般参加者は無料で入場できたが、コミケ96では有料のリストバンドが必要となった。2会場になり、会期も1日増えたことで、会場費、警備費などの費用が大幅に増えたこともあり、有料化したという。リストバンドは、冊子版カタログ(書店販売価格2500円、当日販売価格2000円)に4日分が付属。当日も500円で販売された。
有料化によって混乱もありそうだが、初日は来場者が大幅に減ることもなかった。市川共同代表が「コミケの参加者はモラルが高く、列の割り込みをしないなどルールをしっかり守る方が多い。コミケは参加者に守られているんです。今回、リストバンドを着けて参加されている方々を見て、感動しました」と話すように、運営側の事情を理解し、ルールを守った参加者が多かったようだ。
変更が多かったこともあり、市川共同代表は「準備が大変だった。五輪が決まった時から試行錯誤をして、計画を練った。4日間が終わったわけではないので、まだ成功とは言えませんが、手応えは感じています」と胸をなで下ろす。
大きな混乱を招かなかったのは、スタッフの努力も大きい。「約3300人のボランティアスタッフがいて、現場ではスタッフが本当に頑張っている。大きな混乱がないのは、スタッフの努力があるからこそ。東京ビッグサイトで開催されたほかのイベントに行って、会場や人の流れを調査したり、努力してきた」と力を込める。
12月28~31日のコミケ97、2020年5月2~5日のコミケ98は、今回の回のコミケ96と同じ形での開催され、2020年冬のコミケ99からは、東京ビッグサイトの東展示棟が再び使えるようになる予定だ。市川共同代表は「今回やコミケ97、98の収支も見てみないと分からないところもありますが、今後は再び無料化することも検討している。コミケはマーケット。スーパーマーケットやデパートは入場無料だし、全員が参加者で平等であるという考え方をしている」と語る。
令和初のコミケは初めてづくしとなったが、今後はどうなるのか……。模索が続きそうだ。
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