ポツンと一軒家:疑似体験とドラマ性で視聴者を魅了 番組Pが語る制作の裏側

人気バラエティー番組「ポツンと一軒家」の植田貴之プロデューサー=朝日放送提供
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人気バラエティー番組「ポツンと一軒家」の植田貴之プロデューサー=朝日放送提供

 衛星写真や地元住民の情報を頼りに、日本各地の人里離れた一軒家で暮らす人たちを追うバラエティー番組「ポツンと一軒家」(ABC・テレビ朝日系、日曜午後7時58分)が話題だ。2018年10月7日にレギュラー放送を開始し、2019年12月15日までの全放送回の平均視聴率が17.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)を獲得するなど、大河ドラマ(NHK総合)、「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ系)などが放送されている日曜夜8時台で人気番組としての地位を確立している。果たして、視聴者を魅了し続ける理由とは何なのか……。同番組の植田貴之プロデューサーに制作の裏側を聞いた。

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 ◇カメラはずっと撮影 空き家もオチとして使用

 「ポツンと一軒家」は、タレントの所ジョージさんがMC、予備校講師の林修さんが「パネラー」として出演。特別番組「人生で大事なことは○○から学んだ」(ABC・テレビ朝日系)の一企画として誕生した。きっかけは、スタッフが発した「ドライブをしているときに、山の中に家があるけど『どんな人が住んでいるんだろう』『なんでこんなところに住んでいるんだろう』」という言葉からだった。

 その後、8本の特別番組の放送を経て、レギュラー化。これまでに約140軒の家を紹介してきた。魅力の一つに挙げられるのが、捜索隊が目的地となる一軒家にたどり着くまでの過程の描写。スタッフは運転を誤れば崖から落下してしまいそうな道を走行し、ときには、道が複雑に分かれて、右往左往する姿も映し出されている。臨場感を出すため、ドライブレコーダーとドローンでの撮影を駆使しているのも特徴だ。

 各ディレクターには、撮影用のカメラとドライブレコーダーを、一軒家を発見するまでの道中、常に「回し続けるよう」指示しているという。「道中で本当に起きたことを、そのままお伝えする」ためで、目的地となる一軒家が空き家だったという“オチ”も、そのまま放送する。

 ドローンでの撮影については、「各ディレクターがこだわりを持って」高い山の標高差を映したり、人里離れた深い山に入っていくなど「ナレーションでは伝えきれない部分を映像で分かるようにしている」と説明する。スタッフが懸命に捜索する姿をありのまま伝えることで「視聴者の方は疑似体験できているんだと思う」と言葉に力を込めていた。

 ◇番組Dは「ビフォーアフター」スタッフ 丁寧な取材で「ドラマ」引き出す

 番組のもう一つの魅力は、“ポツンと一軒家”の住人の知られざる人生を紹介しているところだ。植田プロデューサーは、人里離れて暮らす人には「積み重ねてきた人生や、あのような環境で暮らしているからこその生活観がある」と分析していて、各ディレクターに「生活の様子や住んでいる理由など、疑問に思ったことは全て聞くようにさせている」と明かす。

 それにしても、突然、訪ねてきた撮影クルーに対して、住人があそこまで心を開いて話をしてくれるのはなぜなのか。「ポツンと一軒家」のディレクター陣は以前、同時間帯で放送されていた人気番組「大改造!!劇的ビフォーアフター」のスタッフだったというのも無視できない。

 取材シーンのロケは「2~3日かけて」撮影しているというが、欠かさないのが「取材相手をリスペクトする気持ち」。対象は目的地にたどり着くまでの道中で道を尋ねる人にまで及ぶ。また植田プロデューサーによると、「『ビフォーアフター 』でリフォーム中の施主と長い時間を共有してきたスタッフなだけに、一般の方に対する接し方にすごくたけている」といい、「ポツンと一軒家」の住人にも「『築何年ですか?』と聞いたり、かやぶき屋根や土間といった家の話ができる」のも強み。以前の番組での経験を生かした丁寧な取材とコミュニケーション能力が、そこで暮らす人々の「ドラマ」を引き出していると言っても過言ではないだろう。

 ◇一軒家の選定とネタ切れは…

 目的地が「空き家だったことはあるが、ボツネタはゼロ」と豪語する植田プロデューサー。では、一軒家の選定はどうしているのか。当初は、各ディレクターが地図を持ち寄り、会議で話し合ってきたという。しかし、特番で何回か放送をする内に、たどり着いた一軒家に「100%ドラマ性がある」ことに気付き、現在は「各ディレクターが『面白そう』『行ってみたい』って思ったら、ドンドン行ってもらう」方針だ。

 一軒家の“ネタ切れ”についても「地図上にはまだまだ山ほどある」とのこと。一方で、住んでいる人と出会えるかどうかは、「行ってみないと分からない」という状況だが、番組の知名度が上がり、「一軒家を紹介してもらえるようになってきて、地元の方たちに助けられて放送が成り立っている」部分も大きいという。

 2020年の番組は1月5日からスタート。この日は、島根県で、ミステリーサークルのようなものが描かれた畑の近くにある一軒家を紹介する。今後も、視聴者が疑似体験できるような映像と思わず引き込まれる“ポツンと一軒家”で暮らす住人のドラマが聞けるのか、注目だ。

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