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11月3日(日)放送分
世界最高峰の総合格闘技イベント「UFC248」が日本時間3月8日、米ネバダ州ラスベガスで開催される。メインイベントは無敗の王者、イズラエル・アデサニヤ選手が、シドニー五輪レスリング銀メダリストのヨエル・ロメロ選手を迎え撃つミドル級タイトルマッチ。さらに中国人初のUFC王者ジャン・ウェイリー選手対元王者ヨアナ・イェンジェイチック選手の女子ストロー級タイトルマッチも組まれている。WOWOWの「UFC-究極格闘技-」解説者を務める格闘家の高阪剛さんが「UFC248」の見どころを語った。
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――「UFC248」のメインは、前回ロバート・ウィテカーを破りミドル級統一王者となったイズライル・アデサニヤが、ヨエル・ロメロを挑戦者に迎える防衛戦となりましたが、この試合、高阪さんはどう見ていますか?
アデサニヤにとっては、すごくリスキーなカードだと思いますね。もともと今回の挑戦者は、昨年8月の「UFC241」でロメロに判定勝ちした、パウロ・コスタの予定でしたよね?
――それが濃厚だったのですが、コスタはケガで夏ごろまで復帰できないということで、そのコスタ戦の判定で「ロメロが勝っていた」という声も多かったヨエル・ロメロが挑戦することになりました。
しかもロメロとやるというのは、アデサニヤ本人が希望したと言われていますよね。であるならば、これは深読みしすぎかもしれないですけど、ロメロと戦うことで、アデサニヤは自分の新たな動きや、未知のものを引き出そうとしているのかもしれません。
――自分を試してみるというか。底力を引き出そうとしているんじゃないか、と。
そんな気もするんですよね。普通で考えたら、やる必要がない相手じゃないですか。ロメロは戦績上では連敗中ですよね? それでありながら、その爆発力やフィジカルの強さは誰もが認める存在で、負ける可能性も含んでいる。そういう相手をあえて選んだのなら、アデサニヤの“もっともっと成長したい”という意識の表れなんじゃないかと思うんです。
――それぐらいロメロは難敵でもあるわけですね。
ロメロって、まだスタミナ十分な1~2ラウンドは飛び抜けたフィジカルで、まさに“モンスター”のような力を出すじゃないですか。それが後半のラウンドになってくると、わかりやすくスタミナが切れてくる。ただ、これは“UFCトップファイターあるある”でもあるんですけど、スタミナが切れたように見えながら突然復活して、ものすごい攻撃を仕掛けてきたりするんですよ。
――ウィテカー戦では後半の3ラウンドと5ラウンドに王者をKO寸前まで追い詰めました。
だから相手からすると、ロメロがもう見るからに疲れていて“いける!”と思った瞬間、ものすごい打撃が飛んできたりするので、まったく気が抜けないんですよ。アデサニヤがその辺りをどのくらい客観視できているのかが、この試合のポイントのひとつじゃないかと思います。
――後半、突然爆発するロメロにどう対応するのかがポイントだと。
簡単に言うと、動きが悪くなったときのロメロって顔面がら空きなので、対戦相手にも隙(すき)が生まれやすいんです。そこで突然速い打撃が飛んできたり、予想できない動きをしてくるので、アデサニヤがどこまでそれを認識しているのか。ロメロみたいなタイプとはやったことがないはずなので、そこが気になりますね。
――でも、「予想できない動きをする」っていうのは、アデサニヤもまさにそうです。
アデサニヤの場合は、もちろん試合の組み立てもしっかりしていますが、その場のアドリブで、体の反応を使った攻撃ができている状態だと思うんです。例えば、ウィテカーとの王座統一戦では、バランスを崩した状態から強い打撃が打てたりとか、自分が考えていたコンビネーションではない動きで、相手を追い込んだりしていたと思うんです。そう考えると、ロメロが予測不能の動きをしてきたとき、アデサニヤもまたそれに反応して、これまで見せたことがない動きをしてくれるんじゃないか。そういう新たに覚醒する瞬間が見られるかもしれないというのが、個人的な楽しみでもありますね。
――アデサニヤがバランスを崩しながらも、すごいフックやハイキックが打てるっていうのは、やはり体幹の強さからくるものなのでしょうか?
それもあると思います。なおかつ軸がブレた状態からでも強い打撃が打てるということは、普通は人の体を支える支柱っていうのは1カ所か、多くて2カ所なのですが、アデサニヤの場合はもしかしたら、3~4カ所ぐらいあるのかもしれませんね。
――そんなに特異な体質なんですか?
支柱を中心にしないと、あんな強い打撃は打てないですからね。だから通常の人間では作れない場所に柱が作れるんじゃないか、そんなふうに思ってしまうくらい、アデサニヤのバランスは飛び抜けていますね。だから、スタミナが切れた後に突然強い攻撃ができる、不思議なスタミナを持ったロメロと、常人では考えられない動きができるアデサニヤがやることで、これまで見たことがないMMAが見られるんじゃないかと、自分は期待しています。
――「UFC248」では、セミメインイベントにジャン・ウェイリーvsヨアナ・イェンジェイチックの女子ストロー級タイトル戦も組まれています。
中国人初のUFC王者ジャン・ウェイリーと、元王者のヨアナという興味深いカードですね。ある意味、ウェイリーの真価が問われる一戦。まずウェイリーの強さというのは、一言でいうと“怖いもの知らず”というか、苦しい局面をあまり経験してないからこそ大胆に攻めることができ、そこからくるあの爆発力だと思うんですよ。前王者ジェシカ・アンドラージとのタイトル戦でも、あの強打と圧力に定評があるアンドラージの懐に自分から入っていって、一気に打撃で仕留めましたからね。
――フットワークが抜群でしたが、あれは勇気がないとできないことですね。
だからウェイリーは技術の取捨選択というか、ここは組むべきとか、ここは打撃でいくべき、っていう選択がすごくしっかりできている印象があります。いわばMMAとしての戦いのレベルが高い。
――打撃系に見えて、これまでMMA20勝のうちKOが10回、一本勝ちも7回あります。
状況によってやるべきことをちゃんと変えられる、そこの頭の切り替えがうまい選手で、そういうセンスがUFCで開花したと思うんです。普通、打撃系の選手は、なかなかあそこまでうまくできないものですが。
――ウェイリーのバックボーンとしては、散打のほかに中国のシュアイジャオという着物を着て行う相撲のような格闘技。韓国でいうところのシルムみたいなものの経験もあるみたいです。
ああ、なるほど。だから、自分のやってきたさまざまな格闘技をMMAにしっかりと落とし込んで試合を組み立てられているんですね。対するヨアナの方は、キックボクシング、MMAともに経験値という面ではトップクラス。しかもUFCでずっとハイレベルな試合を続けているというのが強みですね。
――UFCですでに13戦、そのうち9試合がタイトルマッチです。
また、試合のたびに前回の反省点を修正してきている印象が強いんです。特に今回は、ストロー級タイトル戦で2度負けを経験して、そこからもう一度はい上がろうという試合なので、すごく強い意志を持って臨んでくると思います。
――では、王者時代よりスキルはアップしていると思いますか?
だと思います。“何が良くなかったのか”を考える作業って、選手にとってつらい作業なんですよ。自分の弱いところと向き合わなければならないので。それを乗り越えてきている感じが、ヨアナにはあるんですよね。だから今度のタイトルマッチは、技術があってアグレッシブな試合が見られるんじゃないかと思います。
――ウェイリーにとっては、ヨアナのあのスタミナと手数は脅威ですね。
だからヨアナは4~5ラウンドまで持っていきたいと思うんですが、ウェイリーはそうさせないように早い段階から仕掛けていくと思うんです。それプラス、ヨアナのプランそのものを崩すことができるかがポイントになるでしょう。また、ウェイリーは王者でありながら成長途中というか、自分の持っているものをMMAに落とし込んでいる最中で、それがうまくいっている気がするんですよ。
――中国ではちょっと前までMMAはマイナーだったので、高いポテンシャルを持ちながらMMAの知識が不足気味な中国人選手が多かったと思いますが、ウェイリーはすごくMMAにアジャストしています。
これまでの中国の選手はいいものは持っているけど、その技術がバラバラで、MMAとして一つの技術体系になっていない場合が多かった。でも、ウェイリーみたいな新しい世代は、UFCの最先端の試合を見ながら、それを参考にしてトレーニングできた世代ですから。先頭を走ってきた人たちの技術プラス、自分が持っている独自の技術を組み合わせて、バージョンアップすることができた。そういう意味でウェイリーは、今回ヨアナという壁を乗り越えることができたら、新たにアジアの格闘技を引っ張っていく存在になると思います。
*……試合の模様は、「生中継!UFC‐究極格闘技‐ UFC248 in ラスベガス 全勝王者アデサニヤ&女子ストロー級王者ジャン、ダブルタイトルマッチ!」と題し、3月8日正午からWOWOWプライムで生中継。
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2024年11月05日 15:00時点
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