水川あさみ:ベストセラー短歌集に着想得た映画「滑走路」で主演 浅香航大、寄川歌太も

映画「滑走路」に出演する(左から)寄川歌太さん、水川あさみさん、浅香航大さん(C)2020「滑走路」製作委員会
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映画「滑走路」に出演する(左から)寄川歌太さん、水川あさみさん、浅香航大さん(C)2020「滑走路」製作委員会

 自らのいじめや非正規雇用経験をテーマに短歌を発表し続けた故・萩原慎一郎さんの初の歌集にして遺作「歌集 滑走路」(角川文化振興財団/KADOKAWA)が映画化されることが3月25日、明らかになった。女優の水川あさみさんが主演を務める。水川さんは、将来への不安を抱える切り絵作家の翠を演じる。今秋公開。

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 映画は、苦難の中でも生き抜く希望を歌った短歌集「歌集 滑走路」に着想を得たオリジナルストーリー。非正規、いじめ、過労、キャリア、自死、家族などをテーマに、現代を生きる若者たちが不安や葛藤を抱えながらも希望を求めてもがき生きる姿を描く。

 今年1月期に放送された連続ドラマ「やめるときも、すこやかなるときも」(日本テレビ)を手掛けた桑村さや香さんが脚本を担当。映画「シン・ゴジラ」(2016年)など数々の作品で助監督として活躍してきた大庭功睦さんが監督を務める。撮影は既に終了しており、現在は編集作業中だという。

 また、浅香航大さん、寄川歌太(うた)さんの出演も発表された。浅香さんは非正規雇用者の自殺問題に向き合いつつ、自らも過重労働に苦しむ厚生労働省の若手官僚・鷹野役として出演。寄川さんは、幼なじみをかばったことでいじめの標的にされてしまう中学2年生の学級委員長役を演じる。

 コメントは以下の通り。

 ◇水川あさみさんのコメント

 萩原さんの短歌は読む人の心にそっと寄り添いながらも包み込み、心に響くエールをくれるなと思いました。映画では、それぞれの人生が交差し行き交いながら葛藤し決断し立ち止まり、前に進む姿は誰しもの背中を押してくれる作品になったのではないかと思っています。

 たくさんの現場を助監督としても経験されてきた大庭監督ならではの細やかな視点や発想力は、一緒にいて刺激的かつ面白い経験をさせてもらい感謝しています。原作同様に、見ていただいた人の心に寄り添う作品になっていればうれしいなと願っています。

 ◇浅香航大さんのコメント

 多くの人がなにかと生きづらさをどこかで覚えるこの時代に、ささやかな希望を見いだせる、止まり木のような作品だと思いました。僕が演じた鷹野は、厚生労働省に勤める若手エリート官僚で、官僚の仕事は、想像を超える仕事量と情報量、責任感などに圧倒されましたが、鷹野の苦悩や葛藤を演じる上で重要なピースとなりました。撮影に入る前の打ち合わせから印象的に感じた大庭監督の熱量の高さと、キャスト・スタッフ共に高い緊張感の中、撮影を終えた今、仕上がりをとても楽しみにしています。

 ◇寄川歌太さんのコメント

 大切なものを守ること、それを貫くことで自分がつらい状況になっていく。そこから逃れたいけれど、人を傷つけたくない。前を向いて歩いていくんだ。この一つ一つの思いを大切に演じ、そして僕自身葛藤もしました。その葛藤に大庭監督はいつも気づき寄り添って、僕の思いを丁寧に聞き出してくださいました。

 すべての撮影を終え、役から自分自身に戻った瞬間、涙が止まりませんでした。たくさんの方に支えていただき、僕にとって大きな一歩となりました。ぜひ見て感じていただきたいです。

 ◇原作者のご両親のコメント

 息子萩原慎一郎が苦難を乗り越え希望へと編んだ第1歌集「滑走路」をイメージした映画化に心から感謝します。慎一郎が空を飛ぶための翼になると願った31文字が、皆様の心に届きますように祈っております。

 ◇原作者の弟・萩原健也さんのコメント

 歌集「滑走路」は、いかなる逆境にも立ち向かい、努力を惜しまなかった一人の歌人が作り上げた作品です。兄は文学史に名を刻んでいくと僕は確信しています。映画となる今こそ、萩原慎一郎の真骨頂を見せる時です。

 ◇大庭功睦監督のコメント

 「非正規雇用の歌人がのこした歌集」という触れ込みをもって読んだ歌集「滑走路」でしたが、そういった触れ込みには到底収まりきらない豊かな感情の機微が感じられ、それらの歌をつづった原作者・萩原さんの繊細な感受性、優しいまなざしに思いをはせました。

 考案した企画の端緒となったのは、ウェブに数多く書かれていた、原作読者の方々の書評でした。萩原さんの歌を、まるで自分自身の事が歌われたかのように感受した読者の方々が、自らを投影しつつ気持ちのこもったレビューを多数書かれているのを目にし、その深い交流に感銘を受け、「この読者の方々を登場人物に据えた群像として、ストーリーを紡げないか」と考えたのです。

 桑村さんとの脚本作り、また、撮影の現場において常に心がけていたのは、萩原さんの「繊細な感受性、優しいまなざし」を失わないことです。それらが読者の方々の共感を呼び起こした大元にあるのなら、オリジナルストーリーとして作られる映画も、その感受性、まなざしに寄り添いながら作られていく必要があります。何よりも、原作者の萩原さんと、そのご家族、そして、原作歌集を愛する読者の方々を失望させてしまうような映画にだけは絶対にしてはならないと考えていました。その思いを心強いスタッフ、キャストらと共有して映画作りに臨みました。皆様に映画としてしっかりとお返しできるような作品になればと思っております。

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