UFC252:ヘビー級タイトルマッチ決着戦 スティーペ・ミオシッチvsダニエル・コーミエ WOWOWライブで放送 高阪剛が見どころ語る

「UFC252」に出場するスティーペ・ミオシッチ選手(左)とダニエル・コーミエ選手 撮影:Getty Images
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「UFC252」に出場するスティーペ・ミオシッチ選手(左)とダニエル・コーミエ選手 撮影:Getty Images

 日本時間の8月16日、UFC APEX(米ネバダ州ラスベガス)で無観客で開催される世界最高峰の総合格闘技イベント「UFC252」をWOWOWライブで、8月16日午前11時から生中継する。「UFC252」のメインイベントは、1勝1敗で迎えるヘビー級タイトルマッチの決着戦で、王者のスティーペ・ミオシッチ選手と挑戦者のダニエル・コーミエ選手の試合。注目の一戦の見どころを、WOWOWの「UFC-究極格闘技-」解説者として知られる“世界のTK”こと格闘家の高阪剛さんが語った。

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 --王者ミオシッチ選手と挑戦者コーミエ選手のヘビー級タイトル戦は、1年ぶりの再戦となります。ミオシッチにとっては、3試合連続でコーミエ戦です。

 これはやりにくいでしょうね。お互いに手の内が分かった上で、勝つための戦略を練らなければならないわけですから。今回、改めてミオシッチ選手とコーミエ選手の1試合目と2試合目を見てみましたが、この2試合は“未知の部分”があったからこその展開になっている。例えば1試合目の時、コーミエ選手は序盤、ミオシッチ選手の打撃を過剰に警戒していたように見えたんです。

 --ミオシッチ選手はそれまで、マーク・ハント選手、ファブリシオ・ヴェウドゥム選手、アリスター・オーフレイム選手、ジュニオール・ドス・サントス選手といった、そうそうたるヘビー級の猛者をKOしています。

 だからコーミエ選手は“打撃を食らうのは嫌だ”という意識が先行して、体を横に向けて顔を背けるようなシーンが何回かあったんです。でも、何度かクリーンヒットではないパンチを受けてから、“そこまで恐れるほどじゃない”と感じたんじゃないかと思うんです。これは超一流であるコーミエ選手レベルでの話ですが……。

 --これまで戦ってきた相手と比べて、飛び抜けてパンチが強いわけじゃないぞ、と。

 それをコーミエ選手が感じて、思い切って前に出てクリンチが組めてからアッパーを入れたら、ミオシッチ選手が少し嫌がったので、そこからペースを握りだしたんです。そもそもコーミエ選手って顔面が打たれ強いので、ミオシッチ選手の方からすると、“これだけ打撃でプレッシャーをかけているのに、なんでこいつは怯まないんだ?”という感じだったと思うんです。そしてクリンチを対処している時、至近距離の右フックをもらってしまいKOされてしまった。

 --コーミエ選手が王座奪取したのが1試合目でした。

 そして再戦となる2試合目は、コーミエ選手が最初から打撃を恐れずミオシッチ選手の顔面を狙いにいって。チャンスがあったらテークダウンを狙いにいくという展開で正直、余裕がありましたよね。ところが3ラウンドに一回、ミオシッチ選手の前蹴りが入ってコーミエ選手の動きが一瞬止まったんです。そこから今度はミオシッチ選手の方が、“コーミエは顔面は怖がらないけど、腹に穴があるんじゃないか?”と、悟ったんじゃないかな。そこからボディーを執拗(しつよう)に攻撃して、4ラウンド目はほぼボディー狙いで。そこから打撃で畳み掛けましたね。

 --逆転TKO勝ちで王座奪回しました。

 なので2試合を並べてみると、どちらも最初に劣勢だった方が、試合中に活路を見いだして逆転勝ちしているんです。これなんか、手の内が完全に分かっていないからこその試合展開だったと思うんです。

 --今回は、お互い手の内がしっかりと分かった上での3試合目になると。

 だからこの3試合目はお互いやりづらいと思うんです。コーミエ選手からしたらボディーブローのディフェンスはしっかりと準備してくるでしょうけど、ミオシッチ選手もそれを見越しているから、そのままボディー狙いでくるとは考えにくい。また、相手の攻撃に対処するというやり方だと、どうしても後手後手に回ることになりますから。

 --となると、先の先を読むというか。また新たな戦略を考えなければならない訳ですね。

 そういうことです。だからコーミエ選手側からすると、抜群のレスリング力を持っていながら、1回目も2回目もそこまでタックルを混ぜてくることはなかったし、グラウンドコントロールに徹することはやっていないので。前半は寝かせたり、ケージレスリングで体力を削っておいて、後半、打撃勝負を仕掛けるということも考えられます。

 --コーミエ選手自身も「今回はテークダウン地獄を味わわせる」と言っています。

 テークダウンまでいかなくても、ケージに押し付けてのコントロールも容易でしょうからね。ケージに押さえつけられているだけでも体力は奪われているので、そこもミオシッチ選手は気をつけながら試合をしなきゃいけない。だからコーミエ選手の攻撃にミオシッチ選手がどう対応するか、という展開になると思うんです。普通、挑戦者が王者への攻略法を練るものですけど、この2人に関しては、王者の方が対策に時間をかける必要がある。

 --たしかにコーミエ選手にとって、ミオシッチ選手のような長身のストライカー(193cセンチ)は、今までライトヘビー級時代も含めて何度も戦っていますが、ミオシッチ選手にとっては体の小さいトップレスラー(180センチ)との対戦というのは、コーミエ選手だけです。

 だからコーミエ選手相手の時だけ、練習内容も試合の組み立ても変えなきゃいけない。またパンチの使い方がコーミエ選手は独特なんです。基本、ジャブと右ストレートですが、微妙な距離設定なんですよ。普通、こんな身長が低い選手は、ここにパンチは届かないだろうっていうところにも届いてしまう。だから、コーミエ選手のパンチが届く距離を、いかに外して自分の打撃を入れることができるかが、ミオシッチ選手としては一つポイントだと思います」

 --また、コーミエ選手はクリンチもうまいです。

 ただ、ミオシッチ選手も2回目の試合の時、コーミエ選手が前に出て組もうとしてきたところを、サイドステップで体を入れ替えるシーンがあったんです。前からその動きをやっていたのですが、組みに来る相手に至近距離でそれができたというのは、ミオシッチ選手にとっても収穫だったかもしれない。1試合目の時は、組みにきたコーミエ選手を前に押し返すか、後ろに下がるかしかやってなかったんですが、“横にずらすと相手がこんな簡単にいなすことができるんだ”という感覚がつかめていたら、あのいなしの技術は、一つのキモになるかもしれない。

 --そこで組ませずに、コーミエ選手にペースを握らせなかったら、ミオシッチ選手がKOする可能性も高まるという。

 そうですね。組もうとしたところをいなされると、絶対に対応が遅れるんですよ。そういう時に、打撃をもらったりするものなので。だからスタンドの攻防も、単純に打撃だけでなく、そういった組みも交えた探り合いという、高い次元での攻防が見られるんじゃないかと思います。

 --ヘビー級だけれども、大味ではなく細かい技術も駆使した試合になるだろうと。

 そうです。ですから、今回はヘビー級の迫力はもちろんですが、細かい技術の攻防までじっくりと見てほしいですね。

 WOWOWライブで8月16日午前11時から「生中継!UFC‐究極格闘技‐ UFC252 in ラスベガス 最重量ヘビー級注目の一戦、ミオシッチvsコーミエ 3度目の激突!」と題して放送。解説を高阪さん、堀江ガンツさんが務め、実況を高柳謙一さんが担当する。8月17日午後6時には、WOWOWライブでリピート放送する。

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