女優の杉咲花さんが俳優の吉沢亮さんとダブル主演した青春サスペンス映画「青くて痛くて脆い」(狩山俊輔監督)が、8月28日から公開された。原作は、デビュー小説「君の膵臓(すいぞう)をたべたい」が映画化された住野よるさんの同名小説で、杉咲さんは、ヒロインの秋好寿乃を演じている。杉咲さんに、役作りや吉沢さんとの共演の感想などを聞いた。
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「世界を変える」という大それた目標を掲げ、秘密結社サークル「モアイ」を設立した大学生の田端楓と秋好寿乃。ところが秋好は突然、“この世界”からいなくなり、モアイは社会人とのコネ作りや企業に媚びを売る就活サークルになり下がっていた。「大切な仲間」と「居場所」を奪われた楓は、モアイ奪還計画を実行していく……というストーリー。秋好を杉咲さんが、楓を吉沢さんが演じている。
もともと住野さんの小説は好きだったという杉咲さん。今回の原作が発売されたときもすぐに買って読んだという。そのとき、秋好というキャラクターに「すごく魅力を感じて、こんな役を自分ができたらいいな」と夢想していただけに、「まさかオファーをいただけるとは思っていませんでした」と喜びもひとしおだった。
原作の中での秋好は、理想が高く、真っすぐな性格のあまり、空気が読めない発言をして周囲を白けさせる、見方によっては「痛い人」。しかしそんな秋好も杉咲さんの目には、「すごく前向きだし、ポジティブだし、根が明るい人」と映り、演じるのが楽しみだったという。
演じながら理解できなかったところは「まったくなかった」といい、「物事一つ一つに対して後ろ向きになるのではなく、どちらかというと楽しんで取り組もうとしている姿は共感できました」と語る。
秋好と「モアイ」を一緒に作るのが、吉沢さん演じる楓だ。彼は秋好を失ったあと、モアイを乗っ取った人物への復讐(ふくしゅう)を開始する。もともと人付き合いが苦手な楓の復讐方法は独善的だ。そんな楓に対する印象は、杉咲さんの言葉を借りれば、「すごく許せない人と、『頑張れ』と応援するタイプの二つに分かれる」が、杉咲さんは「応援するタイプ」だという。
「それをやってはダメでしょうと思いますけど、ああいう楓のキャラクターだからこそ、あんなふうにしちゃったんだなと思えました。憎めないというか嫌いになれない部分がありました」と楓への共感を口にする。
その楓を演じる吉沢さんとは、映画「BLEACH」(2018年)で共演したことはあったものの、今回のように正面から向き合うのは初めて。当初、吉沢さんに対して、「人見知りの印象で、あまりお話しできないかなとちょっとドキドキしていた」そうだが、「撮影が進むにつれてお互いに打ち解けていく感覚があって、現場でも楽しくお話しさせてもらいました。(吉沢さんの)誰に対しても優しくて、無理し過ぎず、でもきちんと自分の意見を伝えながら相手への気遣いも忘れない姿は、私自身すごく勉強になりましたし、うらやましくもありましたし、すてきでした」と表現する。
演技の面でも、「吉沢さんのお芝居を目の当たりにして、台本を読んでいたときには感じなかった感情が、自分の中から出てくることがありました。それは吉沢さんが演じられたからこそだと感じています」と吉沢さんとの共演を喜び、感謝する。
杉咲さんが、「あんなに現場でゲラゲラ笑っていたことはなかったかもしれません」と振り返るほど、撮影現場は終始なごやかで、撮影の合間には、共演者たちと「人狼ゲーム」に興じたそうだ。
映画自体は、そんな和気あいあいとした雰囲気を微塵(みじん)も感じさせないサスペンスタッチで進んでいく。杉咲さんは「人に見られたくない部分がどんどん出てきて、隠されていたものがえぐられていくような描写もあります。ただの青春映画ではない、リアリティーと深みのある作品になったと思います」と今作をアピールした。
(インタビュー/りんたいこ)
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