香取慎吾:外出自粛で気分が沈んだ時期も 三谷幸喜が「背中を押してくれた」

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三谷幸喜さん(左)が監督・脚本のドラマシリーズ「誰かが、見ている」主演の香取慎吾さん(右)

 香取慎吾さんが主演、三谷幸喜さんが監督、脚本を務めたドラマシリーズ「誰かが、見ている」が、9月18日から動画配信サービス「Amazon Prime Video(アマゾンプライムビデオ)」で配信されている。これまでも2004年のNHK大河ドラマ「新選組!」をはじめ数々の作品でタッグを組んできた2人だが、香取さんは新型コロナウイルス感染拡大の影響で外出自粛が続き、「気分が沈んでしまう時間が長かった」と話しながらも、「そんなときでも、三谷さんが『前に進まなきゃ』と思わせてくれた」と明かす。三谷さんも「香取さんは、僕にとってパーフェクトな俳優。本当に得難い人」と語るなど、コロナ禍という未曾有(みぞう)の事態においても、お互いの存在は“ものづくりの素晴らしさ”を改めて実感させてくれる稀有(けう)な関係だという。2人に今作に懸ける思いやステイホーム期間の心境などについて聞いた。

 ◇三谷幸喜、デジタルコンテンツへの新たな挑戦

 今作は「Amazon」が企画から参加した日本オリジナルドラマシリーズの第1弾。何をやっても失敗ばかりで予想もしないハプニングを巻き起こす主人公・舎人真一(香取さん)と、書斎の壁に偶然発見した“穴”から、真一の生活をのぞき見するのをひそかな楽しみとしている隣人・粕谷次郎(佐藤二朗さん)を中心に巻き起こるドタバタを描いたシットコム(シチュエーションコメディー)だ。

 「香取さんを主演に何か作りたいと常に考えていた」という三谷さんだが、脚本のアイデアは「配信ありきで作り上げていった」と配信ドラマという新たな挑戦の意味合いも大きかったようだ。「配信なので、世界に向けて作ることができる。僕の芝居はせりふ劇が多いんですが、それプラス、動きや表情など、シチュエーションで面白く見せることが大事。香取さんが一人で部屋にいるだけで面白くなる設定にしようというところから、舎人のキャラクターが生まれていった」と秘話を明かす。

 「シットコムなので、主役のキャラクターが一番重要。一応、1話30分という枠はありますが、Amazonさんからは『ちょっと延びても構わない。あまり枠にはこだわらなくてもいい』と言っていただき、それならば地上波ではできないものを思い切りやってやろうと。私はずっと(尺が決まっている)テレビの現場にいたものですから、それはものすごく新鮮で。なにもかもが新しい世界でやらせていただいて、本当に楽しかった」と三谷さんは充実感をみなぎらせる。

 香取さんは「三谷さんとご一緒させていただくときは、脚本を読む前からいつもワクワクしている」と笑顔で語る。三谷さんが「脚本を読む前から、どんな役でもやりたいと思っていた?」と尋ねると、香取さんは「そりゃあ、もちろんですよ!」と答え、「脚本を読んでも面白くて、すぐに読み終わってしまった。撮影していても『もう撮影が終わっちゃったな』と思って、完成した作品を見ても『もう見終わっちゃった! 早く次が見たい!』となる。三谷さんはいつも『早く次のものがほしい』と思わせてくれて、ご一緒しているとずっと僕はワクワクが止まりません」と再びタッグを組めることがうれしくて仕方ないといった様子だ。

 ◇相手を振り回す役になって「爆発した!」(香取)

 香取さんが演じる、おかっぱ頭と黄色いつなぎがトレードマークの主人公、舎人真一はなんとも愉快なキャラクターだ。三谷さんは「ダメ男で、まったく社会にも適応できない男」と説明。「でも彼は、自分の知らないところで世界中の人を幸せにしていく。それが最終的に彼自身の再生や復活に立ち戻っていくという物語にしたかった」と話す。シットコムは通常、1話完結型が多いが、「配信の場合、全話が一気に配信されることになります。まとめて見る人も多いということですので、1本目を見たら、最後まで見なければ気が済まないといった連続性も持たせたいと思いました。新しい形のシットコムをやってみたかった」とシットコムでありながら、連続ドラマのようなストーリー性を盛り込んだ。

 香取さんは「三谷さんとご一緒させていただくときは、いつも“振り回される役”を演じることが多かった」といい、「でも今回は相手を振り回していい役。だから台本を読んで、“引っ掛け問題”なのかなと思ったんです。三谷さんからは何も言われていないけれど、『あなた、分かっていますよね。あなたのこれまで演じてきた役柄からすると、舎人にはこんな裏テーマがあるんですよ』というメッセージが込められているのかと思って、最初は戸惑いました(笑い)。でも引っ掛け問題じゃなかった。『本当に振り回していいんだ!』と思って、爆発させていただきました。すごく楽しかったです」と香取さんにとっても新境地になった。

 ◇未曾有の事態でもやるべきは「魅力的な物語を作ること」(三谷)

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、世界は未曾有の事態に直面。エンターテインメント業界もあらゆる変化を求められている。第一線で活躍する2人にとって、新たに芽ばえた思いはあるだろうか?

 三谷さんは「こういった期間にリモートドラマが生まれたり、僕の作品も(ウェブ会議サービスの)ZOOMを用いて皆さんに見ていただいたりしたんですが、そうやって新しいジャンルが生まれていくのは素晴らしいことだし、それぞれとても魅力的で面白いなと思いました」と切り出し、「そうやっていろいろなものを見ていくうちに最終的に思ったのは、結局、描かれる物語の面白さが一番大事なんだということ。どんなに新しい受け皿ができたとしても、話が面白くなければ、やっぱり面白いものはできない。当たり前のことですが、やっぱり僕らがやらなければいけないのは、『魅力的な物語を作ることなんだ』というところに立ち戻った気がしています」としみじみ語る。

 「結構、気分が沈んでしまって。その時間が長かった」と打ち明ける香取さんは、「稲垣(吾郎)さん、草なぎ(剛)さんと3人でファンミーティングとして全国を回るはずだったんですが、それもなくなってしまった。また今年の1月にソロアルバムを出したんですが、そのソロライブを4月27日にさいたまスーパーアリーナ(さいたま市中央区)でやる予定でした。『ソロのライブでこんなに大きな会場。大丈夫かな』と言いながらも、すごく楽しみにしていたんです。それもなくなってしまった」と落ち込んだことを明かし、「僕にはあまりないことなんですが、下を向きそうになってしまった時間もあって。これからどうなっていくんだろうということも含めて、いろいろと自分の人生や仕事、エンターテインメントのことについて考えました」と語る。

 人との関わり合いについても、「これまでの僕は“密”だったんだなと気づいた」という。「仕事の打ち合わせにしても、電話一つで済むところでも、足を運んで会いに行って直接話したいと思うし、感謝を表したいときには握手をさせてもらうこともある。人と話すときは目を見て話したいんだけれど、今はマスクをしているから相手がどんな表情をしているのか分からなかったり……。改めて、僕は距離の近い付き合い方をしているし、密なんだなと思った。それができないことがマイナスに感じてしまって、つらかったですね」としみじみ語る。

 「世界が変わってしまった部分もあるので、対応して生きていかなければ」と徐々に気分を切り替えているというが、「そんな中、PARCO劇場(東京都渋谷区)で三谷さんの舞台が始まるというニュースを目にして。『どうしたらいいんだろう』と滅入っていたときに、三谷さんが舞台を作ろうとしているということが、すごく僕の背中を押してくれたんです。『前に進まなきゃ』と思わせてくれた」と三谷さんが大きな力をくれたという。

 ◇「理解力と表現力のどちらもパーフェクトな俳優は香取さんしか知らない」(三谷)

 「本当に!?」と驚いた様子の三谷さんだが、そんな三谷さんにとっても、香取さんは心強い存在だという。「僕がこんなふうになるといいなと思ったものを、思い通り、もしくはそれ以上にして返してくれるのが香取さん。本当に得難い人です。舎人は一人芝居の部分が多いので、台本に書き切れないものはリハーサルや本番など、その場で作っていくこともありましたが、香取さんは、僕の思いを瞬間的に理解して、瞬間的に表現してくれる。理解力と表現力のどちらもパーフェクトな俳優さんって、僕は香取さんしか知らないと言ってもいい」と力を込める。

 特に今回は喜劇俳優として「全幅の信頼を寄せた」という。「今作で、ソファに手がはさまってしまうという芝居をするシーンがあるんですが、香取さんはそれだけで3分間くらいを一人でもたせつつ、ちゃんと面白くしてくれる。そんなことができる俳優さんって、志村けんさんか、香取さんくらいじゃないか」と三谷さんは改めて香取さんの才能にほれ直していた。

 (インタビュー/成田おり枝)

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