麒麟がくる:将軍・義昭の“壊れっぷり”に視聴者熱視線 滝藤賢一「お坊さんのままがよかったのかな」

NHK大河ドラマ「麒麟がくる」に足利義昭役で出演している滝藤賢一さん (C)NHK
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NHK大河ドラマ「麒麟がくる」に足利義昭役で出演している滝藤賢一さん (C)NHK

 俳優の長谷川博己さん主演のNHK大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」(総合、日曜午後8時ほか)。12月6日放送の第35回「義昭、まよいの中で」では、将軍・義昭の苦悩と狂気を体現する、滝藤賢一さんの“壊れた演技”に視聴者の熱い視線が注がれた。「義昭は室町幕府の将軍ですが、貧しい人たちのために生きていたお坊さん・覚慶(かくけい)から描かれているので、その思いを大切にしながら芝居してきました」といい、「義昭の最初の思いは、“戦をなくしたい”だったと思うんです。でもそこは戦国時代です。この時代を生きるには、義昭は優しすぎたのかな、きっとお坊さんのままがよかったのかなと思ってしまいます」と話す滝藤さんが、自身の役どころについて語った。

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 ◇義昭の苦悩を全身で表現する滝藤賢一のすごさ

 第35回は、藤吉郎(佐々木蔵之介さん)から、信長(染谷将太さん)は将軍や幕府はもはやどうでもよく、帝や朝廷との関係ばかりを強化しようとしていることを聞き、不安に駆られる光秀(長谷川さん)。その一方で、摂津(片岡鶴太郎さん)率いる幕府内では、信長の力をそぐべく、その重臣である光秀を暗殺する計画が持ち上がる。

 数日後に開かれた将軍主催の茶会に招かれた光秀に、刺客たちの刃(やいば)が襲いかかる。光秀は将軍・義昭(滝藤さん)の元へ急ぐのだが……という展開だった。

 この日の義昭は、精神的にかなり不安定になっていることを露呈してしまう。駒(門脇麦さん)の前で首にヒモを巻き、「わしは時折、己の首を絞めたくなる」「哀れなわしをいっそ絞め殺してくれ」と詰め寄ると、終盤、光秀の暗殺を企てた摂津を幕府から排除することを決意するも、顔をゆがませ「信長とわしは性が合わぬ」と光秀に訴えるなど、見事な壊れっぷりを披露。

 SNSでは「あの優しい公方様は、どこに行ったのじゃ」「すっかり孤独だな公方様」「怒濤(どとう)の疑心暗鬼」「メンタルがボロボロ」「義昭さん、マジ狂気」などと視聴者は反応。さらに「滝藤賢一の迫真」「滝藤さんの壊れた演技すごい」「眼球キョロキョロしているし、精神的に不安定なのをうまく表している」「足利義昭の苦悩を全身で表現する、滝藤賢一という役者のすごさが画面から伝わってくる」「圧巻! 滝藤さんの狂気、吸い込まれそう。この人やっぱりすごい」といった感想が並んだ。

 ◇義昭は「弱い人」 摂津に「心を壊された」

 将軍に駆け上がってからの義昭について、滝藤さんは「父から受け継いだ『麒麟がくる世の中』を目指そうとしますが、れっきとした武士だった父、そして兄・義輝(向井理さん)とは違うので、自分ができることは何なのかとすごく悩んだと思うんです」と胸中を推し量り、「結局、進むべき方向性が定まらず、いろいろな人たちを権力で押さえ込むようなことになってしまいました。そういった背景から、義昭は弱い人なんだとも考えられますね」と結論づける。

 また、「摂津がいないと幕府は回らないというのも、義昭は分かっていたと思います」と話す滝藤さん。「ですが、信長が好き放題に戦を仕掛けているあの局面で、何を言ってもかわされ、周りも摂津の言うことにしか動かない。そうやって摂津に心を壊されていき、追い込まれるような形になり、結局は光秀の言うとおりに幕府の古い体制を一掃、つまりは摂津を除外するしかなくなったんですよね。そうなってしまうと、義昭を守ってくれる人は三淵藤英(谷原章介さん)のみ。それはかなりの恐怖だったと思います」と語る。

 ◇信長との対立、決定打は? 「駒と義昭は、時代を先取りしすぎた」

 第35回で鮮明になった義昭と信長との対立については、「積もり積もったものもあったと思いますが、決定打は、信長が延暦寺へ侵攻した場面だと思います。お坊さん、女子供も関係なく討ち取っていった、その非情な行動に、信長に新しい世を作るのは無理だ、戦だらけの世の中になってしまうと感じたのではないでしょうか」と役の気持ちを代弁。

 義昭に心よりどころであった駒との関係性も揺らぎ始めたが、「(駒と義昭は)同じ考えをもって、同じ世を目指した唯一の理解者だと思いますし、同士だったと思います。駒だけが義昭のことを分かってくれていて、心は完全に通じ合っているけど、義昭がその道からだんだん外れたんでしょうね」と自身の考えを披露する。

 「戦をなくしたいというのが義昭の最初の思いでしたが、信長を倒すことに猪突(ちょとつ)猛進になり、信長を討たないと麒麟はこないと思っていたと思います。戦国時代ですから、大名同士仲良くして、話し合いで収めてほしいと言っても、誰も言うことを聞かない。そういう中で、義昭の考えは理想でしかなかった。初めは訴え続けていたけど、いざ幕府に入ってみたら全くダメだった。義昭はいろんな人間に挟まれていじめられつづけますし、とても苦しかったんだろうなと思います」と同情しつつ、「駒と義昭は、時代を先取りしすぎたんだと思います。戦国時代に生きるには義昭は優しすぎましたね。きっと覚慶のままの方がよかったのではないかと思います」と改めて強調していた。

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