特撮ドラマ「仮面ライダーゼロワン」の新作映画「劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME」(杉原輝昭監督)が12月18日に公開された。テレビシリーズからおよそ1年間、飛電或人/仮面ライダーゼロワン役を演じ、「すごく良い場所に1年間いさせてもらった」と振り返る高橋文哉さんに、テレビシリーズの思い出や、鶴嶋乃愛さんが演じた秘書型AIロボ・イズとのエピソード、劇場版への意気込み、そして今後の俳優業について聞いた。
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今年8月に最終回を迎えた「仮面ライダーゼロワン」だが、1年間の放送を終えて高橋さんは、「完走して、本当にありがたい環境ですごく貴重な時間を過ごさせてもらっていたことを感じました」と率直な心境を口にする。「毎日が学びですし、劇場版で久々にお会いしても、皆さん僕の或人の雰囲気などで笑ってくださったりすると懐かしい感じがして、うれしい楽しい気持ちになります」と笑顔を浮かべる。
撮影を通して日々変化を感じていたというが、なかでも「最後の決戦を迎えた後は自分の中で『或人になれているな』というのを感じた瞬間があった」という。そのとき高橋さんは「ふとした瞬間でしたが『或人に体を乗っ取られていた』という感覚が1年間で唯一1回だけあり、それほど或人に身を委ねるようになれたんだなって」と思ったことを明かし、「役者としてもその感覚を大切にしたいなと思ったので、あの感覚は今でも覚えています。“(自分の意識が)寝て起きた”みたいな感じでした」と当時の状態を説明する。
飛電或人/仮面ライダーゼロワンを1年間演じてきた高橋さん。「家族や友だちからかなり連絡がきました」といい、「スタッフの皆さんとキャストのみんなとは、お互いに『1年間やったね』というのもありました」とねぎらい合ったという。
また今秋開催されたイベント『仮面ライダーゼロワン ファイナルステージ&番組キャストトークショー』の終了後には、「全部終わった時はやっぱり寂しさがあった」と話すも、「また一緒にやりたいと素直に思うし、再会した時に『成長したね』と言われたいという気持ちを持つと『いつかできるのでは』と謎の自信が出てきて、寂しさよりも共演できるように頑張ろうという気持ちが大きくなった」と期待感があふれてきたことを語る。
街中で声をかけられたことがあるかと水を向けると、「3回ほどあったけど全部放送が始まって間もないころで、そこからなくて。前髪を下ろすとイメージが変わると言われるしスタッフさんにも気づかれないこともあるけど、とはいえ3回って…」と苦笑い。
ただそのうちの1回、自身が前髪を下ろしている状態で親子連れに声をかけられたといい、「お母さまが気づいてくださったのですが、お子さんは『誰?』みたいな(笑い)。前髪を上げて『或人だよ』と言ったらキラキラした目で『或人だ!』となり、その瞬間はうれしかった」とにっこり。「『ヒーローをやらせてもらっている』のをすごく感じましたし今でも感じています」とうれしそうに話す。
テレビシリーズでの思い出深いシーンを質問すると、「“闇落ち”ですかね。イズ(鶴嶋乃愛さん)が爆発してしまうシーンから迅(中川大輔さん)が爆発してしまうシーンぐらいまでは大変かつ楽しくてたまらなかった時期」と高橋さん。その理由を「僕は役をいただいたらその役に日常からちょっとずつ持っていくのですが、イズの爆発シーンがある前日は、家に帰っても電気をつけなかったりご飯を食べなかったりした」と切り出し、「その期間イズはもちろん、他キャストとも『おはよう』『お疲れさま』など最低限の会話ぐらいだった」と説明する。
さらに気持ち作りのため「ロケバスでは寝ることが多いけど、その日は寝られなくて、ずっとイズの動画をループしていた。もちろん台本を読んで思い出すこともできるけど。当時の新鮮な記憶をフラッシュバックしたくなかった。或人はきっとイズとホームビデオみたいなものを撮っているはずだなと思ったのもあります」と明かし、「そういう意味ではやっていてきつい部分もあったけど、それを表現するのが楽しくて。毎日つらくて早く抜け出したいと思いつつ、現場への足は重くならなかったのは覚えています」と当時の心境を語る。
イズ役の鶴嶋さんと“コンビ感”が出てきた瞬間については、「16話に小指で約束するシーンがあって、そこからかな。『或人じゃ~ないとっ!』って小さい声で2人が一緒にやる時にすごく感じました」といい、「或人とイズはどっちが上とか下や優劣ではなく、お互いがお互いを尊敬し合って大切にし合っている存在だなと深く理解した。もちろん或人の中でイズは守るべき存在なので、そういう部分ではちゃんと守らなきゃいけないとも思えた」と感慨深げに話す。
高橋さんはイズとの印象深いシーンを、「印象に残っているのは1話の初対面だけど、印象深いのは最終話のイズを復元してからの2人のシーン」と挙げ、「あそこはイズだけどイズじゃない、双子の妹のような感覚だったので、せりふ一つ一つもつらかった。でもあの時は素の感情で何も作らずに、台本に沿ったせりふはもちろん言いますがあまり入れすぎないようにして、その時に感じたことをやりたいと思い、その場の生の空気でやりました」と振り返る。
そんな“相方”である鶴嶋さんとの共演シーンでは、「『或人じゃ~ないとっ!』と一緒にやるのも1回も合わせていないのに間が合う。それはイズが合わせてくれているだけなのですけど」とちゃめっ気たっぷりに言い、「徐々に息が合っていき最後はもうアドリブ合戦(笑い)。こっちのアドリブにどれだけついてこられるかなとか、僕が急にやったことを見るイズの顔が楽しみでした」と楽しそうに話す。
続けて、「そういうシーンは僕が最初に提案して、そこにイズとして乗っかってきてくれるのが“通常営業”。流れを説明して『わかった』と言って本番までにそれをイズとして作ってきて、アドリブにもしっかりついてきてくれる。むしろそれ以上のもので返してくるのですごく楽しかった。こうやって良い芝居は生まれていくのかなというのは感じました」と感謝する。
高橋さんは現在、俳優の田中圭さん主演の連続ドラマ「先生を消す方程式。」(テレビ朝日系、土曜午後11時)に、学園一の優等生だが裏の顔を持つ藤原刀矢役で出演中だ。
或人とは対極のようなキャラクターを演じることを高橋さんは「めっちゃ楽しい」といい、「正義のヒーローを1年間やってきたからこそ、逆に振り切るのは難しくなかったというか。滅や迅から或人のような役に行く方が難しいなと思う」と持論を語る。
続けて、「善と悪、表と裏で難しさはもちろん感じていますが、差をお見せしたい気持ちもあるし自分の中でも差は生まれているので楽しい。或人とは違う楽しさがあって、(遊園地の)お化け屋敷かコーヒーカップかみたいな、どっちも楽しさがあるけどまた違うという感じ」と目を輝かせながら話す。
今後やってみたい作品や役を聞くと、「いろいろな役をやってみたいけど、楽しそうだなとか難しそうだなと思うのはヤンキー役」とコメント。「自分の中に染みついているものを全部取っ払えるような役、今も(刀矢で)やってはいますが、また違う方向から挑戦できたらいいなって。(或人とは)逆に堅苦しい社長も気になりますね」と語る。
劇場版は「世界滅亡までの60分間を共に戦う、体感型タイムリミットサスペンス」。同時多発テロにより世界中が大混乱に陥る中、世界滅亡を図るエス/仮面ライダーエデン(伊藤英明さん)を止めるべく立ち上がる或人らの姿を描く。
高橋さんはテレビシリーズ後の或人に「『オレが守る』『オレが止める』とかは言うけど自分を俯瞰(ふかん)して見られるタイプではなかった。それが劇場版では相手の先のことまで考えつつ自分を俯瞰して見られるように成長している」と変化や成長を感じ、「台本をいただいて読んだ時に、今までとは違う、『ゼロワン』という作品を描くために関わっている人たちが何かをここで示したいのだろうなというのを感じたので、今まで通りじゃだめと思い、或人をすごく大人にした。でもイズに対しては主観で或人の気持ちだけを考えて演じ、エスに対しては俯瞰に変えて、といったことを意識した」と役作りのこだわりを明かす。
劇場版の見どころについて、「飛電或人を皆さまにお届けするのはこの作品が“最後”という思いがあります」と切り出し、「最後に見せる或人の姿はこうであるべきだというのを、自分なりにかみ砕いて考え出した“結論”が劇場版。今作が『仮面ライダーゼロワン』の“最後”の作品と思って見ていただければ、それぞれのキャラクターの想いや夢、目指す場所が見えてくると思う。『ゼロワン』の集大成として見てほしい」とメッセージを送った。(取材・文:遠藤政樹)
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