安田顕:「まじめすぎない」ことの大切さを実感 「うつ病九段」病気と闘うプロ棋士役への思い

12月20日に放送されるNHK・BSプレミアムの特集ドラマ「うつ病九段」で主演を務める安田顕さん (C)NHK
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12月20日に放送されるNHK・BSプレミアムの特集ドラマ「うつ病九段」で主演を務める安田顕さん (C)NHK

 12月20日放送のNHK・BSプレミアムの特集ドラマうつ病九段」で主演を務める俳優の安田顕さん。ドラマはうつ病と闘う将棋棋士の姿を描いた作品で、安田さんは現役のプロ棋士・先崎学九段役を演じる。自分に負けずにうつ病と闘う先崎九段の姿に「心を揺さぶられた」と語る安田さんに、役作りや撮影を通して抱いた思いなどを聞いた。

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 ◇病気に立ち向かう姿に「ぐっときた」

 ドラマは、現役のプロ棋士として活躍する先崎九段がうつ病と闘う日々をつづった手記「うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間」(文藝春秋)が原作。ある日、将棋界で起こった不祥事への対応や映画の監修に追われるなど休みのない日々を送っていた先崎(安田さん)は、うつ病を発症。精神科医の兄・章(高橋克実さん)が推薦した病院に入院し、担当医から長期の休養と当面の将棋禁止を命じられる。囲碁のプロ棋士でもある妻・繭(内田有紀さん)は復帰を信じ、娘・春香(南沙良さん)と先崎を支える。壮絶な闘病の末、先崎は退院するが、うつ病で将棋のルールをまったく理解できない頭になっていた……という内容。

 原作と脚本を読み、「心が揺さぶられた」と安田さん。「自分自身に負けずに立ち向かっていく様子が、脚本ですごく描かれていて。そして、それを支える家族。そういうものにぐっときました」と語る。演じるのは、今も将棋界で現役のプレーヤーとして活躍する先崎九段。実在する人物を演じるのは「やっぱり、よりスイッチが入る」といい、「人生で一番大変な時期というものを背負わせていただくわけですから、きちんと取り組ませていただきたい、という思いは持っていました」と意気込みを明かす。

 将棋そのものに詳しいわけではないとしつつ、棋士について「非常に頭を使う、勝負の世界の人たちなんだなと感じました」と印象を語る安田さん。先日も、藤井聡太二冠のある写真を見て「ぞっとした」という。「盤上を見つめているとき、片目が髪の毛で隠れていて、(もう片方の目が)鋭い目で、ぐっとにらんでいたんです。ホラー映画かと思いました(笑い)。あんな目をするんだ、と……」と驚いたことを明かす。

 役作りでは、自主的に詰め将棋を解くなどしたほか、先崎九段に対局中の心理や指し方、対局姿勢などを聞いた。ただ、“うつ病”役には「正解がない」ため、「すごく与(くみ)し難いと思いました」。そこで先崎夫妻と会い、闘病時の思いなどを聞いたという。

 「コピーするのは絶対無理なので、ご夫婦の思いをうかがいたかった。たとえば、原作では(表情が)“こわばっていた”と描かれていますが、奥様は“全身の筋肉が緩んでいて、目が死んでいるようだった”とおっしゃられていました。大変デリケートな問題ですけど『どういうふうに見えていましたか、感じていましたか』ということなどをうかがわせていただきました。最初にそういうお話をうかがえて、すごくありがたかったです」と安田さん。また、“目が死んでいる状態”を作りだすため、「コンタクトを外して、何も見えない状態を作ってはいました」と細かい工夫も明かす。

 ◇「まじめすぎないこと」を大事に

 プロ棋士でうつ病、というデリケートな難役を演じた今作。自身のキャリアの中でも「印象に残る現場だった」と振り返る。「(視聴者の)全員が『すごいね』というものでなくてもいいと思う。一人でも二人でも『よし、明日がんばるか』と刺さってくれれば……と思います」と安田さんはドラマへの思いを語る。

 撮影を終え、改めて大事だと感じたこともあった。それは、物事に取り組む上でのいい意味での「適当さ」だったという。

 「物事をまじめに、真剣にとらえすぎるより、適度に、適切に、適当に。『なんくるないさ』というものを、どこかで持っていないといかんぞ、と……。このご時世、今はそれを持つことの方が大変ですが、そういうものを持っていることは大事だなと思っています」と安田さん。続けて「心がけたいんですけど、それが難しいんですよね」と苦笑しつつも、「(そうした心持ちを)なるべく抱えたいな、と思っています」と穏やかな笑みを浮かべて語っていた。

 特集ドラマ「うつ病九段」は12月20日午後9時から放送される。

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