放課後カルテ
第10話(最終話) これからも健康でいてほしい
12月21日(土)放送分
女優の松本まりかさんが、「WOWOWオリジナルドラマ 向こうの果て」で連続ドラマ初主演を務めることが明らかになった。本作で数奇な人生を送る“いくつもの素顔を持つ女”池松律子を演じる松本さんは「台本を読んでみると、体が疼(うず)き、自分の細胞が目を覚ましていくような感覚でした。こういう作品をやってみたかったですし、ずっと求めていたような作品です」と意気込みを語っている。
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物語の舞台は、昭和60年の東京。アパートの一室で発生した放火殺人の犯人として逮捕された池松律子(松本まりかさん)と、死亡した小説家・君塚公平は幼なじみだった。事件を担当する検事・津田口は真相を追って、これまでに律子と関わってきた人物と接触を始める。律子の数奇な人生と、彼女を取り巻く男たちの姿が次第に明らかになってくるが、男たちが口々に証言する律子の印象は、すべてがバラバラだった。津田口は事件を深追いするほど、徐々に律子という人物そのものに傾倒していく……。
本作は、ドラマ、舞台、小説の三つのコンテンツで展開されるオリジナルシナリオの連動プロジェクト。人気劇団「ゴツプロ!」の座付き作家でもある脚本家の竹田新さんがドラマ版、舞台版の脚本と小説を書き下ろす。映画「ミッドナイトスワン」や「全裸監督」などを手がけた内田英治さんが監督を務める。なお、舞台版は、4月23日から下北沢・本多劇場で上演され、小泉今日子さんが律子を演じる。
律子は、男たちの人生を破滅させてしまう一方、けなげに生きてきたというキャラクター。さらに、接する相手によってまったく異なる印象を与えるという難役で、松本さんは「前途多難」と語りつつも、劇中で披露する津軽三味線のけいこにも取り組んでいるという。
「WOWOWオリジナルドラマ 向こうの果て」は、WOWOWプライムで5月14日から毎週金曜午後11時放送・配信。全8話で、第1話は無料放送。
かなり骨太な作品だなと、その中でどっぷり生きられる役が来たなと思いました。台本を読んでみると、体が疼き、自分の細胞が目を覚ましていくような感覚でした。人間の本質に目を向けるようなハードな内容に驚きましたし、ポップな作品が多い今の時代に、ここまで真逆なものを作れることがすごいなと感じました。生半可な気持ちじゃできないなと思います。こういう作品をやってみたかったですし、ずっと求めていたような作品です。
もちろん、連続ドラマ初主演というのは、普通に考えたらうれしくて喜ぶべきことですよね。ただ、今は主演ということ以上に、作品の大きさを感じています。この「向こうの果て」という作品の主人公・池松律子を演じられることが私にとってすごく意味を持つだろうなと思っています。
彼女のことを理解するのは前途多難だなと思っています。接する相手によって見せる顔が全然違うんですが、多重人格ではないし、意識的に演じ分けているわけでもない。彼女の奥にある核心に触れないと、チープな表現になってしまうなと思っています。台本を読めば読むほど深みにはまっていく感覚です。それでも、彼女を演じたいという気持ちがメラメラと沸いてくるんです。
タイトルは「向こうの果て」ですが、律子が見ている景色は絶望でしかないんです。だからこそ、その先を見ていないと生きられない、ものすごく死を近くに感じている女性だと思います。今回、「死んでるように生きてる」というセリフがあるのですが、私自身、数年前まで死んでいたように生きていた時期があって。今は、ありがたい環境に身を置けているなと思いますが、当時はお仕事もなくて自分は生産性や存在価値がないと思い込んでしまったことがものすごくきつかったんです。生きる楽しさみたいなものを見失っていたんですよね。そのせいか、生に対しての執着や、求めるものの理想はすごくあるんです。そういう意味では、彼女のことがわかる気がしています。
難しくてまだまだですが、三味線の稽古はすごく楽しいです。三味線を演奏する方って、みんな身体を壊して辞めてしまうらしくて。自分の身体を滅ぼしながら、命懸けで表現しているのがすごいなと思いました。極めれば極めるほど、身体に負担がかかってしまうそうなんです。三味線を弾くと、すごく集中できるんですよね。楽しくて夢中で時が経つのを忘れるくらいずっと弾いていたいです。
小泉さんと同じ役を演じられるというのは、恐れ多いですし、身の引き締まる思いです。この作品が決まったときに、うれしいメールをいただいたのですが、今日までそのメールが本当に作品に向き合う力になりました。こんなに人に感動や力を与えてくださる方なんだと改めて感じています。もちろん、舞台も観に行きます。生の舞台で小泉さんが演じる律子がすごく楽しみですし、早く観たいです。
令和の時代に、こんなにも人間の本質をえぐりだす作品はなかなか観られないと思います。今では希薄になってしまった人と人との結びつきや、人間ドラマは、本当の意味で琴線に触れる作品になると思います。私自身、まだ演じる律子がどんな女かわかり得ない部分ばかりで挑戦でもありますが、彼女は接する相手それぞれからは全然違う顔を持つ女に見えています。どんな女に見えるのか、本当の律子はどんな女なのか。ラストも衝撃的なので、ぜひ最後までご覧ください。
◇「昭和という時代が育んだ、果てしないパワーと悲しみが詰まっている」内田英治監督
彼女がまだ10代の頃、私の作品「ガチャポン」に出演していただいた。くしくも、彼女にとって初めての映画出演、僕は初めての監督作品だった。そして今作。松本まりか、初めての連続ドラマ主演作品だ。この巡り合わせを、単なる偶然とは思えない。きっと素晴らしい作品になるだろう。
私は《昭和》という時代に人一倍の憧れをもっている。劇団ゴツプロ!を初めて観劇したとき、そんな少年時代を強烈に思い出した。昭和の感情が詰まったゴツプロ!の作品がドラマになると聞き、それはそれは喜んだ。
このドラマには昭和という時代が育んだ、果てしないパワーと悲しみが詰まっている。
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