奥平大兼:数々の映画賞受賞も“自分らしく”進む俳優道 「重圧はないです」

ドラマ「ネメシス」に出演する奥平⼤兼さん
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ドラマ「ネメシス」に出演する奥平⼤兼さん

 2020年、映画「MOTHER マザー」で鮮烈な俳優デビューを果たした奥平大兼さん。劇中、長澤まさみさん扮(ふん)するシングルマザーの秋子に、過剰な執着を持たれる息子・周平を演じ、第44回日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ、数々の映画賞で新人賞を受賞した。映画公開後、周囲の環境を含め、大きく変化した一年を奥平さんに振り返ってもらった。

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 3月に行われた第44回日本アカデミー賞授賞式。新人俳優賞に輝いた奥平さんは、壇上で「賞に満足することなく、またこの舞台に戻ってこられるように頑張りたい」と決意を語っていたが、式を振り返り「これまでテレビで見ていた方々とたくさんお会いして、ものすごく刺激を受けました。期待をしていただいた賞なので、その気持ちに応えられるように精進したいです」と決意を新たにしていた。

 デビュー作で高い評価を受けたことは、光栄なことでもあるが、一方でプレッシャーに感じることもあるのでは、と問いかけると「実はあまりそういう重圧みたいなものは感じていないです」とキッパリ。「もちろん、大きな賞をいただきましたし、新人賞というのは、自分に期待をしてくれている証だと思うのですが、あまり周囲の目を気にしすぎてしまうと、自分らしさみたいなものが、どんどん薄れていってしまうような気がするんです」と胸の内を明かす。

 ◇4月クールで2本の連ドラに出演

 浮足立つことなく、しっかりと自分を見つめながら、自分らしさを持って進む俳優の道。昨年「恋する母たち」(TBS系)で連続ドラマ初出演を果たすと、この4月からは「レンアイ漫画家」(フジテレビ系)、「ネメシス」(日本テレビ系)と2本の連続ドラマに出演するなど、波に乗っている。

 「ネメシス」では、天才AI研究者・姫川烝位を演じる。劇中、姫川は天才研究者らしく、難しい言葉を機関銃のように発するが、奥平さんは「とにかくセリフが多いので、なにも考えなくてもスラスラ言えるように、事前にたたき込んでいったのですが、現場に入ると、セリフにプラスしてパソコンをタイピングしながら……というように動きも加わるんですよね。そこを練習していなかったので、ゴチャゴチャになってしまい、大変でした」と撮影を振り返る。

 「結構苦戦しました」と苦笑いを浮かべていたが、そのぶん課題も見つかった。「撮影時間が限られているので、監督から言われたことを、どこまで瞬時に理解して対応できるかということも勉強になりました。また、今回の姫川という役は、細かい人物設定が台本になかったので、ある程度自分で考えて撮影に入ったのですが、それでももっと深く考えることができたのかなという反省点も見えてきました」。

 一方「レンアイ漫画家」では、軟派なモテ男を演じる。奥平さんは「すごく明るい役ですよね」と照れくさそうに語ると「僕自身、どちらかというとそんなに明るいタイプではなく、一人でいる方が好きなので、撮影に入る前に、積極的に初対面の人に話しかけるようにしていました」と社交性を持つように心掛けたという。

 ◇猫かぶらず自分らしく

 デビューから1年弱。激動の日々だったように感じられるが、「これまで漠然と映画やドラマを見ていたのですが、この仕事をするようになってから、俳優さんのお芝居に注目したり、監督の演出はどうなっているんだろうと考えたり、作品に対する目線は増えてきていると思います」と変化を述べる。

 大きな賞を受賞し、視界が開けたが「まだ目標というのはないです」と語る。その理由について「まだまだこの世界自体に慣れていないので、ご一緒してすごいなと思う方はたくさんいるのですが、誰かや、なにかを目標と言えるほど、お芝居に対して自信がないんです。もう少し自信がついたら、具体的な目標ができるのかもしれません」と説明した。

 そんななか、大切にしているのは“自分らしく”。

 「先ほども話しましたが、あまり周囲の期待に応えようとし過ぎると、自分が分からなくなってしまう。せっかくこういう仕事をさせていただいているのだから、『奥平大兼だから演じてもらいたい』と思っていただけるように頑張りたい。だからオーディションでも、最低限の礼儀はもちろん大切にしていますが、あまり猫をかぶらず、自分のマイナスな部分もしっかり出して、ありのままを見てもらいたいです」

 「すごく濃い一年でした」と語った奥平さん。大きく環境が変わっても、飾らず、気取らず、自分を見失わず――「楽しい」を大切に突き進む。

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