永野芽郁:「ど真ん中にいない感じが、私そのもの」 “普通OL”直子役に抱いた共感  映画「地獄の花園」撮影秘話

映画「地獄の花園」で主人公・田中直子を演じる永野芽郁さん
1 / 4
映画「地獄の花園」で主人公・田中直子を演じる永野芽郁さん

 映画、ドラマで主演やヒロイン役を務めるなど活躍を続ける女優の永野芽郁さん。5月21日に公開される映画「地獄の花園」(関和亮監督)では、主人公で“普通OL”の田中直子役を演じており、殴る蹴るのアクションも披露する。「脇にいて、ど真ん中にいない感じが私そのもの」と直子に共感する永野さんに、役作りやアクション挑戦の感想、今作に参加して改めて実感した女優業への思いなどを聞いた。

ウナギノボリ

 ◇不安だった“暴言”

 「地獄の花園」は、主人公・直子(永野さん)の職場の裏で繰り広げられる、社内の派閥争いをかけた女性社員の“拳”による抗争を描いた作品。ある日、一人の“カリスマヤンキーOL”の蘭(広瀬アリスさん)が中途採用されたことをきっかけに、全国から直子の会社が狙われることになる……というストーリー。お笑いタレントのバカリズムさんが脚本を担当している。

 永野さん演じる直子は、社内の熾烈(しれつ)な派閥争いをクールに傍観している、ごく“普通”のOL。派手なメークや衣装に身を包んだ個性的なキャラクターが多い中、制服を着て同僚ととりとめのない会話を楽しむ、従来なら主人公を引き立てるような平凡なキャラクターだ。そんな立ち位置の直子を、永野さんは「自分と近い」と話す。

 「直子は作品の中で一番普通。物事を俯瞰(ふかん)で見ていて、“主人公の脇にいる親友”という表現がぴったりな女の子で、私ともすごく似ている部分が多かった」と永野さん。「直子は人のことや自分のことを分析している人物で、その分析力や、脇にいて“ど真ん中にいない感じ”が私そのものだな、と。私も物事を分析しながら『こうかな、ああかな』と頭の中で独りでしゃべったり、独りで考えたりして過ごすタイプだから、似ているなと思いました」と共通点を明かす。そんな自身に近いキャラクターゆえ、役作りはあまり必要なかったという。
 
 ただ、劇中では派手なアクションを披露しており、そのための稽古(けいこ)は4~5カ月前から始めた。「本番も、できる限り自分でやりたかったので、アクションはすごく練習しました」と明かす。これまで今作のような派手なアクションは経験がなく、「全部新しくて面白かったですけど、すごく大変でした」と苦笑い。参考資料として渡されたのはマーベル作品で、「想像していたより壮大だな、と(笑い)。こういうふうにしたいんだと分かりました。撮影現場ではただ殴り合っているだけだったのに、完成した作品を見たら、手を出したら人がすごく飛んでいく、というようなシーンもあって、『自分、強いんだ』と、ちょっと錯覚しましたね」と笑う。

 “普通OL”の直子だが、予告編では「まとめて殺してやる!」と絶叫する姿も見せている。また、2月に開催された大型ファッションイベントに登場した際は、ピンクの特攻服姿で「寝言こいてんじゃねぇよ、ブス!」というせりふを会場に響かせた。これまでの永野さんの“明るく天真爛漫(らんまん)”なイメージとは異なる姿だ。永野さんはこうした“暴言”には慣れておらず、「イントネーションが合っているか分からないし、心配で不安だった」と告白。ただ、本番では「感情を作ったら、内から湧き出てくるものがあったので、そこに身を任せて。監督が最終的に『良かったよ』と言ってくださって、安心しました」と話す。

 直子は普通OLだが、実はヤンキーマンガに詳しい一面も。永野さんは“ヤンキー”には「一度決めたことを曲げずにやり遂げる」というイメージを抱いており、そこは自身とも重なる、という。「自分の中にヤンキー要素があるとしたら、そういうところかな。私も『これをやりたい』と思ったことは、絶対にやりたいと思う。殴り合いとかはしないけど、気持ちの強さは通じるものがあるかなあ、と思います」と共通点を見いだしている。

 ◇イメージは「壊したいとは思わない」 

 今作には、さまざまな個性的なキャラクターが登場する。小池栄子さん演じる“地上最強のOL”鬼丸麗奈もその一人で、直子と対峙(たいじ)するシーンもあり、小池さんとは時間をかけて組手の練習を行った。そんな小池さんとの共演について、永野さんは「大先輩なのに疲れたとも言わず、真っすぐ対峙してお芝居してくださって。自分もこういう女優さんになれたらいいな、と思いました」とあこがれを口にする。

 撮影の合間にはプライベートの話や、ときには“相談”することもあったという。「私に“天真爛漫”というイメージがあると思うから、笑っていないと心配されることがすごく多くて。だから『笑っていないときに心配されない方法は何ですか?』と聞いたんです(笑い)。そうしたら『笑わなくて全然いいよ! でも芽郁ちゃん、笑っていると可愛いもんね』と言ってくださって……。笑っていると可愛い、と言われると笑っていたくなるな、と。すごく救われて……すてきな言葉をもらったと思いました」と声を弾ませる。

 そうした明るく天真爛漫な“イメージ”と本来の自分にギャップを感じるときもあるというが、「自分自身楽しんでいることにうそはないし、笑顔でいることを心がけているのもうそじゃないから、(イメージを)壊したいとは思わないし、そのままでいいかなと思っています」とほほ笑む。

 直子役を演じ切り、「きっと今までに見たことのない私をお見せできると思います」とコメントしていた永野さん。最後に改めて、撮影を終えた今、何を得たのか聞いてみると、「この世界の端っこにいるような中心にいるような役を演じてみて、『誰かを楽しませること、ワクワクさせることは楽しいな』と改めて感じました」と、女優という仕事の魅力を口にした。

 「この(作品の)世界は、映画やドラマという架空の世界でしか作れないもの。改めてお芝居の楽しさやこのお仕事の醍醐味(だいごみ)を感じられたので、このタイミングでこの作品に挑戦できたことは自分にとってプラスになりました。今は(コロナ禍で)いろんなことを考えないといけない世の中だけど、あまり深いことを考えずにただ笑って見ていられる作品を、笑いながら作る側にいられたのは、幸運なことだなと思います」と持ち前の明るい表情を見せた。

写真を見る全 4 枚

映画 最新記事