恒松祐里:「おかえりモネ」“スーちゃん”役で存在感 若きベテランの的を射た芝居

NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」で野村明日美を演じる恒松祐里さん (C)NHK
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NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」で野村明日美を演じる恒松祐里さん (C)NHK

 清原果耶さん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「おかえりモネ」(総合、月~土曜午前8時ほか)。直近の第16週「若き者たち」(8月30日~9月3日)では、百音(モネ、清原さん)、菅波(坂口健太郎さん)、亮(りょーちん、永瀬廉さん)、未知(みーちゃん、蒔田彩珠さん)、4人それぞれの思いが交錯し、最後はモネと菅波がやっと互いの気持ちを通じ合わせることに成功と、怒涛(どとう)の展開を見せた。その一方で、改めて視聴者から熱い視線が注がれたのが、百音の一番の幼なじみである“スーちゃん”こと明日美(恒松祐里さん)だ。役を演じる恒松さんも、22歳ですでにキャリア15年を超える“若きベテラン”として存在感を放った。

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 ◇明日美の他者への優しさが際立った屈指の名シーン

 恒松さん演じる明日美は、保育園から百音といつも一緒の、一番の幼なじみ。明るくチャキチャキした性格で、よくしゃべる。両親は島で唯一のスーパーマーケットを営み、高校卒業後は仙台の大学に進み、学生生活を謳歌(おうか)。現在はアパレルショップの店員で、百音より少し前に上京するも、急な事情で住むところがなくなってしまい、百音と同じ汐見湯に下宿することに。

 また、物心ついたときから亮を思い続けていたが結局、振り向いてもらえず、それを明るく口にできる強さを併せ持っている……というキャラクターで、これまでも時折、(特に恋愛面に関して)一人、大人びた発言をすることもあった。

 第16週は、そんな明日美の他者への優しさが際立った週でもあった。未知が亮を思うあまり、亮がいざというときに百音を頼ることに納得がいかず、その不満を表に出してしまったシーンでのこと。

 「みーちゃんさ。そんなの分かっているよ。こういうとき、りょーちんが本音いうのはモネだよ。昔からそうじゃん。何だろうね、そういう関係。むかついた時期もあったけど」と亮と百音の関係性を理解した上で、「モネ、行ってきてよ。私とかが行くとさ、りょーちん、笑って、逆にさっさとバスに乗っちゃうかも。あいつはね。かっこつけるからね。私やみーちゃんには。りょーちん、バス乗せないで」と孤独を抱えたまま気仙沼へと帰ろうとする亮を迎えに、百音を送り出すと共に、未知の気持ちへと寄り添ってあげた明日美。

 その直後、汐見湯へとやってきた菅波に対して未知が、自分の感情を優先し、亮と百音の関係性について「何か空気感じませんでした? あの二人は昔から通じ合ってる」と思わせぶりに伝えてしまった瞬間、未知の発言をとがめるように「みーちゃん!」と声を上げた場面も含めて、明日美の“人の良さ”というものが浮き彫りになった屈指の名シーンだったと思う。

 ◇女優としての強みは「器用さ」だとも語っていた…

 同週では、その後、三生(前田航基さん)と悠人(高田彪我さん)も合流し、久しぶりに幼なじみ6人が一堂に。互いに思いをぶつけ合い、わだかまりを解いていく姿が視聴者の感動を呼んだが、ここで口火を切ったのも明日美だった。幼なじみ6人のうち、未知をのぞいた5人は同級生だが、どこか“お姉さん然”とし、常に会話の中心にいる明日美の姿は、役者としての恒松さんとも大いに重なる部分がある。実際に幼なじみ役の6人の中で、演技経験は最も豊富。7歳から“演じ”始めて、22歳にしてキャリアは15年を超える。

 「おかえりモネ」ではあまり見せていないが、射抜くような“目ヂカラ”を持っており、映画「トウキョウソナタ」や「散歩する侵略者」などで知られる黒沢清監督から、かつて「末恐ろしい女優」と評されたこともある。凛(りん)とした美しさを放つ一方で、ビーノさんの同名マンガを実写ドラマ化した「女子高生の無駄づかい」(テレビ朝日系、2020年)のヲタ役のようにコメディーもこなせる懐の深さも魅力だ。

 「おかえりモネ」においてもこれまで、随所で演技巧者ぶりを披露。特に第16週では、一連の騒動の中、SNS上では「スーちゃんがいてくれてよかった」という声が多数上がっていたが、物語に安定感をもたらす、若きベテランとしての“的を射た芝居”に「スーちゃん役が恒松祐里でよかった」と思わせる瞬間は多々あった。

 以前のインタビューで、自身が考える女優としての強みは「器用さ」だとも語っていた恒松さん。その上で「上辺だけでだますような器用さにはならないようには気を付けていて。それをやってしまうと『ただの器用』で終わってしまうので、これからもお芝居や役としっかりと向き合った上で、器用さを生かして、作品に面白さやスパイスを加えていけたらと思っています」と明かしていたが、今後も器用さを生かした的を射た芝居で「恒松祐里がいてくれてよかった」と思わせてくれるはずだ。

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