吉沢亮:「渋沢栄一を演じられて良かった」 初大河「青天を衝け」への思い 終盤も「突っ走っていきます」

NHK大河ドラマ「青天を衝け」主演の吉沢亮さん=NHK提供
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NHK大河ドラマ「青天を衝け」主演の吉沢亮さん=NHK提供

 俳優の吉沢亮さんが、渋沢栄一役で主演するNHKの大河ドラマ「青天を衝(つ)け」(総合、日曜午後8時ほか)。12月26日放送の最終回に向けて、物語は終盤戦へと突入している。撮影も先日クランクアップし、吉沢さんは「渋沢栄一さんを演じられて良かった」と振り返る。今回が初の大河ドラマで、昨年7月から1年以上にわたって、主演という大役を担ってきた吉沢さんに話を聞いた。

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 ◇「多くの英雄たちが時代の波にのまれていく中、生き残った」

 現代まで伝わる多種多様な企業、経済団体の設立と運営に携わり、「日本資本主義の父」と称される渋沢栄一。その人生は、尊皇攘夷(じょうい)派の志士から幕臣、維新後は新政府の要請で大蔵省の官僚、その後は実業家へ転身……と、激動の時代を生きた人物らしいものだった。

 「青天を衝け」のスタート前のインタビューで、そんな渋沢栄一の魅力について「これまで大河で描かれてきた人物とは違って、死ぬ瞬間のはかなさだったり派手な部分はないのですが、泥臭くても最後まで生き抜く強さみたいな生命力を持っていた人なのではと思います」と語っていた吉沢さん。1年以上にわたって演じ、改めてその「生命力」こそが渋沢栄一の魅力だという。

 「『青天を衝け』でも数多くの出会いと別れが描かれてきたと思いますが、幕末から明治という時代の転換点で、たくさんの英雄たちがその時代の波にのまれていく中、(渋沢栄一は)そんな人物たちの姿を近くで見てきて、多くのものをもらって成長していった。そして、最後まで生き残ったからこそ、素晴らしい功績をたくさん残せたのではないのでしょうか」

 91歳と長命で、江戸から昭和までを生きた渋沢栄一。「青天を衝け」では、そんな「生命力」からくるのであろう猛烈なエネルギーで、権力や時勢といった大きな壁にぶつかっても、くじけずに立ち向かっていく人物として描かれた。その行動理念は、藍玉の製造販売で村人を幸せにしようと励む豪農の親から教えられた「みんなで幸せになること」。「みんなで幸せになるため、世の中を良くしよう」の一心で、激動の時代を駆け抜けてきた。

 吉沢さんは渋沢栄一を「周りが幸せになることが本当に好きだった人なんじゃないかな」と推測する。「正直、使命感だけであそこまでのことはできなかったと思います。“人に喜んでもらいたい”という欲があったから、あそこまでのエネルギーを発揮できたのだと思います」と語る。

 渋沢栄一の「エネルギー」を表現する上で難しさもあった。とてつもないエネルギーを持つ人物だからこそ、セリフ量も膨大で、「とんでもないセリフ量で(笑い)。体力的な大変さもありましたが、セリフ量にも追い詰められながら、役者としての基礎を鍛えられたなと思います。貴重な経験でした」と充実感をにじませた。

 ◇コロナ禍の苦労 「パリ編」は現地ロケでなく良かった?

 2020年7月にクランクイン、コロナ禍で制作された作品にもなった。新型コロナウイルスの影響は撮影にも及び、当初、現地でのロケが予定されていた「パリ編」は、VFX(視覚効果技術)など最新技術を用いての撮影に切り替えられた。

 吉沢さんはコロナ禍での撮影について「本番までマスクはとれないし、その辺の苦労はありました」としみじみ。「(テストでは)マスク姿なので表情が分かりにくいっていう部分がどうしてもあって。目から下の表情が分からないだけで、本番、こうも相手の芝居が変わって見えるものかと思いました」と話す。

 一方で、現地でのロケが断念された「パリ編」については、「逆に良かったんじゃないかなって今は思います」と明かす。「クランクイン前、別の仕事でパリに行く機会があり、その際、渋沢栄一さんゆかりの場所を巡ったんです。そのとき思ったのは、どうしても“現代”が見えてしまう部分が多くて、映してはいけないものの制限がありすぎること。なので、VFXでやるって聞いたときは、割り切ったことで見せ方も広がると思いましたし、結果としてすごくキレイな映像になったので良かったと思います」と笑顔を見せた。

 ◇終盤は家族との時間が濃密に 「栄一は家族との付き合い方が本当に不器用」

 撮影の苦労もある中、初の大河ドラマで演じ切った渋沢栄一。吉沢さんは「渋沢栄一さんを演じることができたのは、何よりもうれしかった」と笑顔を見せる。

 「正直、初め『渋沢栄一』って聞かされたときは、新しいお札になる人という認識しかなかったですし、誰もが知っているようなヒーローに対する憧れもありました。ただ、お芝居をしていくうちにどんどん見え方が変わっていって、こんなにもすごい人物を自分は演じられるのかな、というプレッシャーの方が逆に強くなりました」

 最終回が近づいている物語。終盤では、渋沢栄一と家族との時間が濃密に描かれていくという。吉沢さんは「栄一は、幼いときから“みんなを幸せにするため世の中を変えないといけない”と、外に向かってエネルギーを向けていた分、意外と目の前のことに注意がいっていないので、家族との付き合い方が本当に不器用だなって演じながら思っています」と笑う。「(終盤でも)そんな栄一に振り回される家族を、嫌な感じじゃなくて、面白おかしく受け取っていただければ良いなと思います」とアピールする。

 最後に、終盤の見どころについて、「栄一の置かれている立場や状況は変わっていきますが、いくつになっても情熱を持って、時に空回りしながらも突き進んでいくので、作品自体もそんな栄一のエネルギーそのままに突っ走っていきます。これから、皆さんが知っているような渋沢栄一さんの功績もどんどん描かれていくので、親しみやすさもあると思います。ぜひ最後までお付き合いいただければ幸いです」と視聴者に呼びかけた。

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