「東京リベンジャーズ」や「シン・エヴァンゲリオン劇場版」や「ウマ娘」など数々のヒットも生み出し、2021年もさまざまな話題を提供したアニメ界。また、特に今年特徴的だったといえるのが声優陣の幅広い活躍だろう。アニメコラムニストの小新井涼さんが独自の視点で分析する。
ウナギノボリ
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本年も間もなく終わりを迎えるということで、改めて2021年のアニメシーンを振り返ってみましょう。
今年はずばり、これまでもそれなりに知られて注目を集めていたアニメ文化が、より深く、より広くアニメファン以外の人々にまで浸透した年であったように思います。またそれによって、アニメに関わる人の中でも、特に声優の方々が、大きく活躍の場を広げた年でもありました。今年話題になった作品や関連トピックと共にみていきましょう。
まず今年印象的だったのは、何かしらの作品が盛り上がった際に、アニメ専門ではない一般媒体でも、その話題を目にする機会が多かったことです。
例えば、今年特に話題になった「東京リベンジャーズ」や「シン・エヴァンゲリオン劇場版」や「ウマ娘」。これらは作品が盛り上がると共に、報道番組や音楽番組にも頻繁に登場するようになり、プロモーション的な面もあるとはいえドキュメンタリーやラジオ特番まで放送され、度々SNSのトレンドもにぎわせていました。
こうした背景としては、2019年からの「鬼滅の刃」や、その後の「呪術廻戦」など、アニメの放送や公開をきっかけとした世間的な盛り上がりを経てきたことも大きかったのではないでしょうか。おかげで、各種媒体側もアニメを取り上げることへのフットワークがより軽くなり、話題のアニメにも常に注意深くアンテナを張るようになってきているのを感じます。
またそれに伴って、作品そのものだけでなく、コスプレ企画やアニソン特集といった、アニメ文化全体が一般媒体で取り上げられる機会も増えてきました。中でも特に、今年これまで以上にフィーチャーされ、活躍の場を大きく広げていたのが声優の方々です。
これまでもバラエティー番組などへの進出は決してゼロではありませんでしたが、少し前までは、起用する側の認知度に加え、「●●の声の人です!」と紹介されセリフを言ってもスタジオにもテレビの前にも分かる人が少なかったからか、出演するのは誰もが知る国民的長寿作品等に出演する、いわゆる大御所声優にほぼ限られていました。それが今年は、多くの話題作の誕生やそれに伴う作品の認知度の高まりもあり、大御所の方々に加えて、これまであまりテレビ出演の機会のなかったいわゆる若手や中堅と呼ばれる方々が、話題作の出演者を筆頭に次々と一般媒体への進出を果たしたのです。
また、そうした彼ら彼女らの活躍は単なる一過性の盛り上がりに止まらず、バラエティー番組をはじめ、ドラマやCM、映画などにも、顔出し/声の出演問わず登場するなど、活躍の場を大きく広げていました。
こうした大躍進の背景としては、それだけ話題作が生まれてきたこともありますが、何より声優の方々が元々持っていた“ポテンシャルの高さ”が大きいと思います。
現在声優は、アフレコがメインとはいえ、イベントやラジオ、配信や舞台等で幅広い活動をしており、バラエティーでのトークや顔出しのお芝居から、果てはものまねまで、場所を一般媒体に移しても十分通用するパフォーマンス力を持つ人が多いです。そして一般媒体側も、度々声優陣の起用を重ねるうちに、そうした彼ら彼女らの持つ高いポテンシャルに気づき、その生かし方が分かってきたのでしょう。昔からの「あのセリフ言ってください」といったお決まりのやりとりばかりではなく、声優という職業やご本人のパーソナルな魅力にまで焦点が当てられる機会が増えてきました。(これには、アニメファンとアニメファン以外を繋ぐ存在として、各所でアニメや声優に詳しいアイドルや芸人の方々が活躍されていたことも大きいと思います)
こうした意味で2021年は、アニメ文化がより広くアニメファン以外にまで浸透すると同時に、一般媒体に声優陣のポテンシャルが「再発見」された年でもあったと言えるでしょう。これをきっかけに来年以降も、声優の方々の活躍の場がますます増えていくことが期待される、そんな一年になったと感じています。
こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。明治大学大学院情報コミュニケーション研究科で、修士論文「ネットワークとしての〈アニメ〉」で修士学位を取得。ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)の全アニメを視聴して、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続中。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、現在は北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程に在籍し、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。
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