放課後カルテ
第7話 お前が学校に来ようが来まいがどうでもいい
11月23日(土)放送分
NHKの「よるドラ」枠(総合、月曜午後10時45分)の連続ドラマ「恋せぬふたり」でダブル主演を務める岸井ゆきのさんと高橋一生さん。ドラマは、「アロマンティック」という他者に恋愛感情を抱かない指向と、「アセクシュアル」という他者に性的に惹(ひ)かれることがない指向を持つ「アロマンティック・アセクシュアル」の男女を描くコメディーだ。高橋さんと岸井さんは共に、世間でいう「普通」とは違う一面を持っている意識があるといい、世間の“普通”に「どうしても賛同できない」と語る高橋さんと、「『普通じゃないよ』とよく言われたりする」という岸井さんに、ドラマ出演を通じて感じたことを語ってもらった。
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高橋さんは、恋愛もセックスもしたいと思わず、アロマンティック・アセクシュアルを自認する高橋羽(さとる)、岸井さんは、人を好きになったことがない、なぜキスをするのか分からない、恋愛もセックスも分からずとまどってきた兒玉咲子を演じる。
高橋さんも岸井さんも、アロマンティック・アセクシュアルという言葉を今回初めて聞いたという。
高橋さんは、「アロマンティック・アセクシュアルの方々がいらっしゃるということを意識したことがなかったですし、直接お話をうかがったこともありませんでした」と告白。「ドラマには考証の方々が入ってくださったので、その方たちとまずお話をする場を設けていただきました。お話は2度、3度くらい重ねました。台本の監修にも入ってくださっている方々だったので、『このときはどういった感覚なんだろう?』ということをおうかがいして、自分なりに“擦り寄せていく”感じで進めていきました」と話す。
岸井さんは「私はアセクシュアルという言葉は知っていました」と語る。「アロマンティックは知りませんでしたが、アセクシュアルについては、なんとなくそういう人たちがいるということだけは存じ上げていました。ただ、当事者の方と話す機会もなかったし、調べたこともなかったので、(出演オファーの)お話をいただいてから、一生さんと同じように、考証の方とお話をする機会を設けてもらって、台本や役について一緒にお話をしたり、質問したりしました」と明かす。
二人ともアロマンティック・アセクシュアルについて知っていくうちに、その多様性に気づいていったと話す。
高橋さんは、「アロマンティック・アセクシュアルの方々はそれぞれとても多岐にわたっていて、細分化された多様性があるんです。たとえば、僕が演じさせていただく羽は、人との『接触』や『距離(の近さ)』に抵抗を感じるのですが、岸井さん演じる咲子は『接触』や『距離』は大丈夫。お芝居をさせていただく中で、『こういうことなんだな』という感覚がなんとなく分かっていった感じです」と振り返る。
一方、岸井さんは、「アセクシュアルだけの人もいるし、接触や距離が大丈夫な人もいるし、ダメな人もいて、“アロマンティック・アセクシュアル”という一つのくくりでは説明しきれない」と感じつつ、「どんな個性を持っていても、みんな変わりないということにも気づけました。どんなセクシュアリティーを持っていても、みんな同じ“道”を生きているというか、生活をしていることには変わりないので」と結論づける。
“多様性”を本作のテーマの一つとして捉える高橋さんと岸井さん。だが、「もしも価値観が違う人に出くわしたらどうするか?」という問いの答えは割れた。
価値観の合わない人に対しては、精神的に「鎖国」する、つまり異なる価値観を認めつつ、自分の世界にこもるという高橋さん。「精神的鎖国でしょうか。無理にこちらの考える正しさを押しつけても仕方がありませんし、ある程度放っておけあえる距離を見つけることが大事なのではないかと思います」と話す。
また、「精神的鎖国と言いましたが、そこに“認識”があるかないかとでは大きく違うような気もしています。たとえ理解できなかったとしても、そういう人がいるんだということを“認識”するだけで、周囲との関わり方を変えられるということに気づきました。そうすると、人との接し方の選択肢が増えるんです」とも語った。
一方、岸井さんは、「私は価値観が違う人たちに対して、『なんで、なんで?』と聞いちゃう。あまりに価値観が違うと、本当に疑問に思ってしまうので。自分の価値観を押しつけるとかじゃなくて、相手のことをもっと知りたいと思うんです。(価値観が違う人に対して)ある種の興味があるのかもしれません」と打ち明けた。
真逆の考えを持つ二人だが、前述の通り、世間でいう「普通」とは違う一面を持っている意識がある点で共通しているようだ。
高橋さんは、「多くの人の言う“普通”にはどうしても賛同できないことがあるので、自分はマイノリティーだなと思います」と苦笑い。岸井さんも、「会話の中で、『普通じゃないよ』とかよく言われたりするんです。でも、自分の中では“普通”だったりするから、反論しないで『へぇ、そうなんだ』みたいに受け流します。みんな違って、みんないいじゃないですかと思うので」と語る。
そんな二人だからこそ、世の中に多様性があってほしいという思いは強いようだ。
高橋さんは、「いろいろなことが共有できるようになったこの時代だからこそ、人間が抱える『みんなと同じじゃないと不安』という思いはなおさら強くなっているように思えます。ですが、やはり人間は多様性があってしかるべきだと思いますし。いろいろな可能性があっていいのではないかということは、この作品を通して改めて感じられました」と振り返る。
岸井さんは、「みんな一人一人が個性を持って生きているので、私がすごく思っているのは、『やっぱりどんな個性を持っていても、みんな堂々と生きていきたいじゃん!』ということ。堂々と生きている人ってかっこいいし、多様性とか個性を認め合って一緒に楽しく生きて生けたらいいな、どんな人も自信を持って生きていけたらいいよねっていう大きな思いを持っていますし、そういう思いが(見る人にも)伝わればいいなと思います」と締めくくった。
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