全領域異常解決室
第7話 すべてお話します 物語はここから始まった
11月20日(水)放送分
小説「点と線」や「砂の器」などで知られる松本清張の没後30年となる今年、「連続ドラマW 松本清張 眼の壁」が6月19日午後10時からWOWOWプライムで放送(第1話は無料放送)、WOWOWオンデマンドで配信される。主演を務めた俳優の小泉孝太郎さんに本作の魅力や、自身の芸能キャリアについて語ってもらった。
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原作「眼の壁」は1957年に発表された社会派ミステリー。ドラマはバブル終焉(しゅうえん)期の1990年に舞台を移し、2億円の手形詐欺事件の真相を追求する一人のサラリーマン・萩崎竜雄(はぎざき・たつお)の活躍を描く。WOWOWの「連続ドラマW 殺人分析班」シリーズなどを手掛けてきた内片輝監督がメガホンをとり、テレビ朝日系のドラマシリーズ「警視庁捜査一課長」などで知られる深沢正樹さんが脚本を担当する。
「連続ドラマW 死の臓器」以来、約7年ぶりのWOWOWドラマ主演となった小泉さんが演じる萩崎竜雄は、ウキシマ電業製作所の経理課長で、強い正義感を持ち、手形詐欺の真相を追いかける。
そんな小泉さんが思う本作の魅力は「ゾクゾク感です。1話、2話、3話……と回を重ねるごとにゾクゾクする。真実に近づけば近づくほど増していくゾクゾク感には自信があります。そのゾクゾク感を感じながら、『眼の壁』というタイトルの意味も考えてほしいです。主人公を演じた僕自身、まだ答えが見いだせません。それくらい深い作品です。そしてそれとともにぜひ余韻に浸ってほしいです」と話す。
松本清張作品の特徴を問うと「善人も悪人も、人間というものをすごく深く捉えている。人間臭といいますか、その人間の生々しさだったり、善人の臭い、悪人の臭い、女性の香り。そうしたものが画面越しに臭いで伝わってきそうなことが特徴的ではないでしょうか」と評価した。
その中でも小泉さんが演じた萩崎は、“善人の臭い”が強い役どころ。信頼を寄せる部長の関野が2億円の手形詐欺に遭い、その後行方知れずとなってしまう。事件を隠蔽(いんぺい)しようとする会社に失望して一人で関野の行方を追う。
「松本清張作品というプレッシャーも感じながらやりましたけど、なるべく松本清張作品ということを考えないよう意識しました。萩崎はどんどん追い詰められて『なんでこんな人生になってしまったんだ!』と翻弄(ほんろう)される一方、心の奥底に熱いメラメラ燃えたぎるようなものを抱えてる人間で、信頼できる男だなと思います。そこの実直さ、純粋さと、ごくごく一般的な普通の男であることを大切に演じました。最初に衣装合わせで監督とお会いした時も『萩崎は色をつけるんじゃなくて無色透明で』ということで意見が一致しました。それで正解だったと思います。
この作品と出合えたことの幸せはもちろん、かみ締める部分が後々出てくるんじゃないかなと思います。うれしかったのは、撮影の途中で(共演した)先輩の加藤雅也さんが『すばらしい作品と出合えるって役者の運だし、これは絶対すばらしい作品になる。小泉くんの代表作になると思う』と言ってくださった。その言葉がうれしかったです。そうした作品に出会えた幸せも、かみ締めてもう一度ちゃんと見たいですね。本当に、『眼の壁』の世界で主演として起用していただいて、あの世界を生きられてとても幸せでした」
小泉さんは、2002年にテレビドラマ「初体験」(フジテレビ系)で役者デビューして以来、約20年間、芸能界で生きてきた。デビュー当時こそ小泉純一郎首相(当時)の息子として注目されたが、それだけで20年も芸能界の第一線に居続けるのは難しい。
「20年前この世界に挑戦しようと思った時は、役者業だけやりたかったんです。ところが、今はバラエティーの依頼がたくさんあり、情報番組からオリンピックの司会までやらせていただきました。芸能界のいろんな仕事をやるとは、20年前まったく想像しなかったです。ものすごく幸せなことだし、本当に人生って分からないですね。役者も他の仕事もいろいろできて、それを楽しんでいる自分がいる、ということが一番幸せなことかもしれません」
また、小泉さんは「芸能界が好き」と話す。「水がすごく合ってると思います。芸能界の仕事に飽きたことが一度もないんですよ。今のこの気持ちを持ち続け、いろんな仕事を楽しんでいきたいです。あとは地道に地道に、一歩一歩、一日一日、目の前に課せられたことに対して、毎日その日のベストを尽くすことが一番大事だと思います」
そう謙虚に語る小泉さん。その誠実さの源を問うと「もともとの性格で言うと、僕、人が好きだと思うんですよ」と自己分析する。
「人が好きだから、その人に対して失礼なことをしたくない。誠実に向き合いたい。僕は僕なりの生い立ちや家庭環境がありますけど、芸能界の皆さんもそれぞれいろんな生い立ちを抱えていらっしゃる。人にあまり言えないような悩みや家庭環境があったりする。それでも誠実に向き合って、一緒にお芝居したりバラエティーで一緒に笑ったりする。そこがいとおしいですね。たとえ過去にいろんな生い立ちがあったとしても、今そこに出会った意味っていうのは、きっとあると思います。だからその都度、その仕事で出会った人と楽しく真剣に向き合う。その時間が好きだから芸能界を楽しめるんでしょうね」
今後10年でやりたいことを問うと「僕、目標とか作らないタイプなんですよ」と答える。
「ただ30代で社会派作品には出たいなと思っていました。やりがいを感じますし、そうした作品にはまた出演したいです。でも10年後というと……自分が何をしているのか全く想像がつかないです。自分自身が楽しんで芸能界にいられることがベストではありますが、もしかしたらまったく役者業をやっていないかもしれないです。そんな自分がいてもおかしくないと思います。芸能人・小泉孝太郎として、ただただ芸能界で楽しんでいたいです。それが僕の理想なのかもしれないです」
芸能界の各所で引っ張りだこの小泉さん。会話の端々に感じる誠実さとしなやかさが、人々をとりこにするのかもしれない。(取材・文・撮影:桜井恒ニ)
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