原泰久さんの人気マンガを俳優の山崎賢人さん主演で実写化した映画の続編「キングダム2 遥かなる大地へ」(佐藤信介監督)が、7月15日に公開される。2019年に公開された「キングダム」は興行収入57.3億円を記録し、同年の実写邦画作品No.1となった。そのヒット作の続編を、佐藤監督は何を意識して作り上げていったのか? コロナ禍というこれまでにない苦難の中での奮闘を振り返ってもらった。
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「キングダム」は、2006年からマンガ誌「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で連載中の人気マンガ。コミックスの累計発行部数は9000万部以上。中国の春秋戦国時代を舞台に、天下の大将軍を目指す信や、後に「秦の始皇帝」となる秦王・エイ政たちの活躍を描く。
佐藤監督は「前作は信(山崎さん)が田舎から出てきて、歴史の中枢にたどり着く成長物語だった」と振り返り、「『キングダム2』では、彼が志していた本当の戦場に出て行く。“天下の大将軍”になることが信の夢ですが、戦争の現実を知り、さらなる成長をしていく。そういうところを描いているのが今作です」と話す。
今回のテーマのひとつに“スピード感”を上げ「前作でやったことを今回もやるのではなく、やらなかったことに対して全力投球をしたのが『キングダム2』でした」と言い「馬の疾走とか、こんなに馬に取り組んだ日本映画はなかなかないと思います。いろんな手を使ってやっていますし、とことん馬に取り組んだ作品です」と馬のシーンは今作の注目ポイントになるという。
続けて「日本と中国で合わせると100頭くらい馬を用意しました。これだけで億単位のお金が動いています。前作でもかかったセットも億の値段になりましたが、今回も建てました(笑い)」と「キングダム」の世界観に必要なものを妥協しないで用意した。
コミックスはもちろん、アニメ化もされている人気作の「キングダム」。これだけの大作を実写化する上で気をつけたことを聞くと、「『キングダム』のマンガは非常に映画的なんですよね。原先生も学生のころに映画を志して、自身でも学校で映画を作ったことがあると聞いて合点がいきました。原作をモノマネするのではなく、映画としての『キングダム』を作る。『キングダム』を実写化するという感覚から離れて、『こういうものが映画だよね』と感動していただけるような作品を作るという気持ちでやりました」と良い意味で原作にとらわれないで映画を作ることを心がけた。
もうひとつ意識したのは個性的なキャラクターたち。佐藤監督は「原作に畏敬(いけい)の念を抱きすぎてそのままやろうとすると実写では縮小してしまうんですよ。信って現実にいたらこういう人だったんじゃないかな? 縛虎申(ばくこしん、渋川清彦さん)が本当にいたら、こういう将だったんじゃないだろうか? そういう現実味もにじみ出たらいいなと思い魅力的なキャラクターを作っていきました」と、ただ原作のキャラになりきるのではなく、一人一人の人生を描くような演出を手がけた。
それでも壁にぶち当たることはあり、「前作では世界観をどうするかが大変でしたね」と振り返る。「リアリティーを大事にするか、ファンタジーなものにするか。どちらかに絞ったほうがやりやすいですが、ありそうでなさそう、なさそうでありそうというのを狙っていたので、この世界観を作るのは時間がかかりました。要するに、リアリティーとファンタジーの融合を目指したわけです」と話す。そして、結果的に絶妙なバランスで作り上げることができ、今回から登場するキャラクターたちの形成にも生かすことができたという。
「キングダム2」は中国にロケハンに行ったころに、新型コロナウイルスが出始め、あっという間に世界に広まっていった。
「製作も中断しました。この作品を作り続けていいのか? 作り続けられるのか? ということもスタッフの間でささやかれていましたし、何回も会議を行いました。でも、みなさんを元気にするような映画を作っているので、止まってはいけない。とはいえ妥協はしたくないし、ほふく前進のように進むしかありませんでした。少しずつ少しずつ、用心しながらやっていき、撮影もクランクインからクランクアップまで1年はかかりました」と振り返る。
中でもこだわったのは中国での撮影だった。「中国での撮影をなしにできないかという案もありました。でも一番譲れなかった。いくらCGがあるとはいえ、中国(が舞台)の作品を描くのに中国の画(え)を撮らないという選択肢はなかった。中国での撮影を何が何でもやるというのは絶対に捨てられなかったです」。
未曽有の危機を経験しながらも、妥協せずじっくり映画を作り上げていった佐藤監督ら製作陣。最後に本作の見どころを聞くと「これだけの人を描いた多面的な物語はなかなかないと思います。信たち底辺で頑張る人たちから勇気をもらう人もいれば、中間職やその上たちの苦悩や頑張る姿も同時に見せています。なかなか見られないエンターテインメントだと思います。時間もかけて作っています。視覚だけでなく音響なども楽しんでいただけたら」とアピールした。
※山崎賢人さんの「崎」は「たつさき」
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