ドラゴンボールDAIMA
第6話 イナヅマ
11月18日(月)放送分
「四畳半神話大系」「夜は短し歩けよ乙女」などで知られる作家、森見登美彦さんの小説が原作のアニメ「四畳半タイムマシンブルース」が、9月30日から3週間限定で劇場公開される。京都を舞台にした個性的なファンタジー小説を数多く執筆し、読者をとりこにしてきた森見さんだが、「もともと京都は意識していなかった」という。森見さんに、京都への思いや12年ぶりにアニメ化された「四畳半」の感想などについて聞いた。
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森見さんは、京都大学在学中の2003年に執筆した「太陽の塔」で作家デビュー。京都大学大学院修了後の2009年、東京で国立国会図書館の職員として勤めていたが、作家業が忙しくなり翌年退職。専業作家となるが、連載を多く抱え、2011年に体調を崩したことがきっかけで、故郷の奈良に戻った。現在も奈良に在住しており、京都にも仕事場を持つ2拠点生活を送っている。
「その当時とても弱っていて、ものすごく静かなところに行きたかったんです。本当は京都にとどまっていれば良かったんですけど、奈良に行っちゃって、奈良の静けさに慣れてしまいました。それから奈良にこもりっきりです」と笑顔で振り返る。
多くの小説の舞台となっている京都への思いを聞くと、「もともと京都を意識してはいなかったんですよ。身の回りの風景を舞台に小説を書こうと思ったら(京大在学中に)デビューしてしまい、京都の大学生もので注目を集めたので、その延長線でずっと京都を書いていました。自分の生活圏を舞台に、妄想を膨らませるという感じだったので、京都を書きたかったのではなく、その時に自分が京都にいただけだったんです」と明かす。
「京都だから、強引なファンタジーが許されるということに、後々気付きました。京都は、外から来てしばらく在住し、また外に出て行く人や、昔からの人もいる。重層的な都会ですよね。サイズもほどよく、東京みたいな大都会でもない。昔は意識していませんでしたが、自分が妄想を広げる舞台として、とてもいいんでしょうね」と思いを語った。
今後も京都を舞台にした小説を書くのかと聞くと、「それは分からないですね、そろそろ奈良もいいかな」と楽しそうに笑った。
アニメ「四畳半タイムマシンブルース」は、2010年にアニメ化もされた「四畳半神話大系」と、「ヨーロッパ企画」の上田誠さんの戯曲「サマータイムマシン・ブルース」の“悪魔的融合”によって生まれた小説が原作。
“私”の元に25年後の未来からタイムマシンに乗ってやってきたという男子学生・田村が現れる……という展開で、タイムマシンで昨日に戻って、壊れる前のクーラーのリモコンを持ってこようとしたり、悪友の小津たちがタイムマシンで勝手気ままに昨日を改変、過去を書き換えたりするなどタイムマシンを無駄遣いすることになる。
森見さんにアニメの感想を尋ねると、「可愛かったですね」と笑みを浮かべ、「どのキャラクターも可愛くて、テレビシリーズの『四畳半神話大系』を踏まえつつ、ひと味違った雰囲気に仕上がっていました」と語る。
12年ぶりにアニメ化された「四畳半」で感じたことは「変化」だった。ひたすらに不毛な日々を繰り返していた主人公の「私」だが、「四畳半タイムマシンブルース」ではストーリーをけん引する存在となっており、どこか成長したようにも思える。
森見さんは、原作小説を書いている時から「かつての『四畳半』には書けない、別な形になるな」と感じていたといい、「当時の行間に満ち満ちていた熱量では書けないので、無理に再現することはやめようと思っていました。どうすれば上田さんの舞台を小説にできるか、というところからスタートしました。『四畳半』の続編を書こうというアイデアではなかったんです」と明かす。
森見さんと上田さんは2008年ごろから関わりがあり、「四畳半神話大系」のほか、劇場アニメ「夜は短し歩けよ乙女」「ペンギン・ハイウェイ」では上田さんが脚本を担当した。今回のコラボが実現したのも、「アニメ向きではないと思える僕の小説を、これまでは上田さんがアニメにするため脚本で苦労していたので、たまには僕も苦労して、小説向きではないヨーロッパ企画の舞台を小説化しようと思った」ことがきっかけだ。
「小説にするには、強いキャラクターを持ってこないと、ヨーロッパ企画の個性的な俳優さん(の芝居)にかなわない。『四畳半』のキャラクターを使って、上田さんの舞台を小説にしよう」と決めたという。
「四畳半神話大系」「有頂天家族」「有頂天家族 二代目の帰朝」「夜は短し歩けよ乙女」「ペンギン・ハイウェイ」、そして「四畳半タイムマシンブルース」と、森見さんの小説はこれまで6作品がアニメ化されているが、実は「僕の小説はアニメ化しにくいと常々思っています」と語った。
森見さん自身は、「執筆するとき、宮崎駿監督や押井守監督の世代なので、時々(影響が)にじみ出ちゃうこともありますが、アニメを意識して書いているわけではないんです」といい、「自分のイメージの源泉に、子供のころに見たアニメがあるだけで、頭の中でアニメ化したものを書いているわけではないんです。(自身の小説がアニメ化されるのを)自分でも不思議に思っているんですよね」と笑う。
それでも、アニメ化が続いている現状に「僕がビジュアル的に派手な場面を書いたからといって、それをアニメ化したいと思うかといったら、そうではないと思います。『有頂天家族』の監督がよく話していたことですが、ファンタジーな映像はアニメで作りやすいけれど、キャラクター同士の関係性や心の機微を再現するにはどうすればいいかと、こだわっていました。アニメ的な小説を書いたからアニメになるのではなく、それ以外の(心の機微などの)部分が(制作者の)琴線に触れるのかもしれない。『四畳半』にしても、主人公のモノローグとかそうですよね」と分析した。
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