乃木坂46鈴木絢音：「今が一番幸せ」　大好きな辞書テーマの書籍発売　10年間「やり切った」

　アイドルグループ「乃木坂46」の鈴木絢音さんが3月7日、初めての書籍「言葉の海をさまよう」（幻冬舎）を発売した。本好きな鈴木さんと、辞書を作る人々との対談集。根っからの文学少女だけに、書籍発売の喜びはひとしおだ。3月28日には10年間在籍したグループを卒業する。「人生で今が一番幸せ」とほほ笑む鈴木さんに、書籍に込めた願いと、乃木坂46への思いを聞いた。

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　◇辞書は「人間臭い本」

　「言葉の海をさまよう」は、小説誌「小説幻冬」（幻冬舎）に掲載された鈴木さんの対談連載「言葉の海をさまよう」を書籍化。出版社「三省堂」のバックアップを得て、鈴木さんと辞書の編さん、編集、校正者や、印刷会社社員、デザイナーなどとの対談をまとめている。

　鈴木さんは書籍化に「まず昨年、連載をやらせていただいたことも驚きでしたが、今度は書籍化って、これまでなじみがなさすぎて、なんだか作家先生になった気分です（笑い）。たくさんの人に手に取ってもらえるうれしさもあり、後世に残るものでもあるので不安もあります」と口にする。

　辞書を好きになったのは、乃木坂46に入って上京する際に父親から渡された国語辞典がきっかけだった。「上京したばかりで友人もあまりおらず、ずっと本を読みあさっていたのですが、当時はすごくお金も少なかったので、読むものがなくなってしまって（笑い）。そんなとき、父親から渡された辞書を見て、これは読み終わらないだろうなって（笑い）。長い時間をかけて楽しめるんじゃないかなって読み始めました」と明かす。

　国語辞典は論理的かと思いきや、読み進めていくうち、意外にも「人間臭い本」だと知り、魅了されていった。「語釈に、執筆者のいろいろな経験が詰まっていて。執筆者の個性が透けて見えるんです。読み始める前は一番人間臭さから離れていると思ったら、今では一番人間臭い本なんじゃないかなと思っています」と笑う。

　連載では、辞書の編さん者や編集者、校正者ら、言葉のスペシャリストたちと対談した。「『やばい』という言葉が江戸時代からあるということや、料理の『ビビンバ』が正しい読み方じゃないことなど、思いがけない新たな言葉の発見がありました。読んでいただけると、言葉の楽しい発見があると思います。対談形式で、読みやすくなっているとも思うのでぜひ手に取っていただけるとうれしいです！」とアピールした。

　◇これからの乃木坂46「とても楽しみ」

　2月18日、グループに加入してちょうど10周年となる3月28日をもっての乃木坂46卒業を発表した鈴木さん。先にグループから旅立った先輩・秋元真夏さんとは、卒業日が近づくにつれ、話すことが多くなっていったという。「楽屋では、ずっと隣に陣取らせてもらっていました。いろいろな思い出話をしたり、“真夏さんリスペクト軍団”の話をしたり……（笑い）」と楽しげに振り返る。

　2人の卒業で、グループの創成期を知る1、2期生はいなくなる。秋元さんとは、今後のグループの話も重ねた。「今までとは違う大変さが待っていそうですよね、と話しました。下から上っていくことも大変でしたが、それ以上に、勢いを止めないことは大変ですよね、と」。だが、心配はあまりないようだ。

　「3期生の梅ちゃん（梅澤美波さん）や、やまちゃん（山下美月さん）が本当にしっかりしているので。私が後輩になりたいくらいでした（笑い）。梅ちゃんもやまちゃんも、乃木坂46以外の場でも活躍していて、グループにも貢献してくれていると思います。4期生と、（昨年加入した）5期生とみんなで、今までの乃木坂46のいいところを残しつつ、新しい風も取り入れた『これから』がとても楽しみです」

　乃木坂46での10年間は「やり切った感はあります」ときっぱり。「本を出させていただいたり、大好きなフルートで先日はドラマ（『リバーサルオーケストラ』）にも出させていただいて。人生で今が一番幸せ。これ以上は高望みです」とほほ笑む。

　ただ、コロナ禍でファンとの交流は減ってしまった。心境を聞くと「（これからも）ファンの皆さんと会える機会は大切にしていきたい」と話す。今後、どのような活動をしていくのか明言はしていないものの「これまで出会ってきた人たちと、再びお仕事でご一緒させていただくことが目標です」と力を込める。

　もし、また書籍を出す機会があったら、何を書きたいだろう。「私に書くことができるかは別として……（笑い）。音楽が好きなので、あまりまだ知られていないようなマイナーな楽器をテーマにした小説とかを書いてみたいな」と声を弾ませた。

　▽

　「言葉の海をさまよう」は、鈴木さんと辞書作りに携わる方たちとの対談のほか、改めて感じた辞書への愛を語るエッセーや、ファースト写真集「光の角度」（幻冬舎）を手がけた写真家・新津保建秀さんによる口絵写真（16ページ）を収録している。四六判、168ページで1650円。