趣里さん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ブギウギ」で俳優デビューした黒崎煌代(くろさき・こうだい)さん。本作では、ヒロインの弟に扮(ふん)し、新人とは思えないナチュラルな演技が話題となっている。いまのところ、今期の朝ドラで“最大の発見”と言っても過言ではないだろう。11月3日には初の映画出演作「さよなら ほやマン」が公開と、さらなる活躍が期待できる黒崎さんの“素顔”に迫ってみた。
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黒崎さんは2002年生まれ、兵庫県出身の21歳。2022年の役者オーディション「レプロエンタテインメント30周年企画『主役オーディション』」で全くの素人にもかかわらず約5000人の応募者の中から合格を勝ち取り、芸能界入りを果たした。
「もともと父親が海外で映像関係の仕事をしていたのもあって、子供の頃から映画というものが身近にありました。中学に上がってから、自発的に作品を見るようになって、高校のときは、同じクラスの“相棒”とコンビを組んで、脚本を書いてみたり、撮ってみたりしていたので、当時、将来は映画関係の仕事に就こうと、VFXのこととか学んでいたのですが……。大学進学を機に上京して、たまたまいまの事務所のオーディションを見つけて、チャレンジしてみようと思いました」
以前から映画の世界に携わりたい思いが強くあって、結果として、いまは“演じる”道へと進んでいる黒崎さんは、憧れの存在として3人の海外の俳優の名を挙げる。ベン・スティラーとジム・キャリー、そしてレオナルド・ディカプリオだ。
「ベン・スティラーに関しては、演じることも、監督も脚本もやっていて、すべて一流。そういった意味では僕も撮りたいし、書きたいし、演じたいので。ジム・キャリーは何がすごいかって、“運動神経”がすごい。それが面白さにつながっていると思っています。ディカプリオは『うまさ』。作品を全部見ているのですが、一番の印象としてあるのが、かっこいいよりもうまい。ディカプリオからの影響はすごく大きいです」
一番好きなディカプリオ作品は、キャリア初期の「ボーイズ・ライフ」。公開は1993年で、「漁るようにさかのぼって」初めて見たときは「衝撃的でした」と振り返る。ちなみに「さよなら ほやマン」で黒崎さんが演じたのは主人公の弟で、生まれつき障がいがあるという難役。1993年(日本は1994年)公開の「ギルバート・グレイプ」でのディカプリオの役柄とよく似ている。
そんな「ギルバート・グレイプ」にも通じる「さよなら ほやマン」は、自然豊かな美しい島で生きる兄弟と、都会からやってきた問題を抱えた女性の3人の出会いを中心に、自分の人生を取り戻そうと“もがく勇気”を描いた物語だ。主演を音楽ユニット「MOROHA」のMC・アフロさんが務め、呉城久美さんも出演している。
撮影を振り返り、演じるシゲルの役の設定に引っ張られすぎたことを反省する黒崎さん。「撮影前のリハーサルの途中でシゲルではなく障がい者を演じてしまっていることに気づいたんです」と話す。
「シゲルは自分を障がい者とは思っていない、なぜか人と同じことができない男。これではシゲルの葛藤が伝わらないと思ったので、自分自身どうすればいいのか、あいまいな状態でわざと現場に入って、迷いながら撮影の日々を過ごすことで、シゲルの葛藤が出ればいいなって思いながら演じてみました」
黒崎さんにとって初めての映画の現場。当然、自身の演技は「決して納得がいくものではなかった」とのことだが、完成した作品を見て、何を感じたのだろうか。
「もともと映画の世界に憧れがあったので、エンドロールで自分の名前が出たときは、感激してウルッときました。長年の夢がかなった瞬間で、恥ずかしさはなかったです」
放送中の「ブギウギ」では、マイペースな性格で動物好き、家族思いな六郎を好演。同役は300人以上の応募があったオーディションで射止めた。
「自己紹介のときに、審査スタッフの方と好きな映画の話で意気投合して、9割くらい映画の話をして終わった感じです。演技を見てもらう時間もあって、本来の目的はそこなのに、そのためにここに来ているのに、台本を渡されたら急に緊張してきて。『さっきまであんなに楽しかったのになんで?』って(笑い)」
ドラマの制作統括・福岡利武さんは起用の決め手として、黒崎さんの「天性の素朴感」「もともとお持ちのピュアな雰囲気」を挙げていたが、その点が伝わってくるかのようなエピソード。また、無事に六郎役に選ばれ迎えた撮影初日は「さすがに緊張しました」と話す。
「最初は手も震えて、声も出なくて、『もっと声出そうか』とか言われて、初日はもういっぱいいっぱい。でも2日目以降は、周りの方のおかげで何とかやっていくことができました」
実は六郎は、「ブギウギ」の脚本家・足立紳さんの思い入れの強い役だとか。
「足立さんとは2回ほどお会いしたことはあって、そういった話を聞いて、それでさらに緊張してしまって。でもありがたい話ですし、さらに頑張ろうとなりました。六郎は好奇心旺盛なのですが、対象の範囲が極端。僕は台本を読んで、すぐ六郎を好きになったので、見ていただいた方にも六郎を好きになってもらいたい、そうなるようにストーリーに沿って演じることができたらと思いました」
10月31日放送の第22回では、自身の出生の秘密を知った姉・スズ子(趣里さん)を、六郎が優しく抱きしめるシーンでの、黒崎さんのナチュラルな演技が話題になったが、今後、俳優として目指す場所はどんなところなのだろうか。
「細かいことを言えば、内面がにじみ出てくるようなリアクションのできる俳優になれたらなと思っています。あとは、独自の路線というか、まだないジャンルを作れるような、うまく隙(すき)間を見つけて、その道の一番を走っていくような役者になりたいです。ラブストーリーでもコメディーでも、後から出てくる方々が『黒崎煌代っぽいよね』と言われるような存在になるのが理想です」
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