吉高由里子さん主演の大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合、日曜午後8時ほか)で藤原道兼を演じた俳優の玉置玲央さん。道兼は、1月7日放送の第1回のラストで、自分を抑えられず主人公・まひろ(吉高さん)の母・ちやは(国仲涼子さん)を殺めるなど、「起爆剤」として物語の盛り上がりに大いに貢献してきたが、そんな彼にもついに最期の時が……。途中、弟の道長(柄本佑さん)に救われ、生き方を改めたものの、序盤は「クズ」の名をほしいままにしてきた道兼について、玉置さんが振り返った。
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10年前の朝ドラ「花子とアン」 当時の吉高由里子インタビュー
道兼は、道長の次兄。ちやはを殺めたことをきっかけに、信奉する父・兼家(段田安則さん)に言われるがまま、一家の「汚れ役」を担うようになり、花山天皇(本郷奏多さん)の退位の際にも暗躍した。その後、兼家が後継者に長兄・道隆(井浦新さん)を選んだことから、自暴自棄となるも、道長の言葉に救われてからは、民のことを思うようになり、関白にもなるが、その矢先……。
時に視聴者のヘイトを一身に集め、時にあわれな姿をさらし、同情さえも誘ってきた道兼だが、やはり第1回の、“ちやは殺し”のインパクトは大きかったように思う。玉置さんは「1話で視聴者の皆様が離れちゃうのが不安だった」と明かす。
「僕は100人見てくださる方がいらっしゃるとしたら、100人全員に見てもらいたいし、見ていただくだけではなく、面白いと思ってもらいたい、満足してもらいたい、そこに到達するためにできることがあれば、何でもやるっていうタイプなんです。だから、そういった考えを持っている人間は、100人いたのが 99人にって感じで一人減っても嫌なので、不安だったしプレッシャーもありました」
あくまで理想は理想だと、玉置さん自身も認めるが、周囲の肯定的な声が力にもなった。
「物語の流れとしても、道長とまひろの運命としても大事な出来事ではあったのですが、心強かったのは共演者の皆さんやスタッフの皆さんがものすごく肯定してくれたこと。『これでよかったんだ、大丈夫だったんだ』と思わせてくれたのは、ありがたかったですし、このまま道兼というヴィラン、ヒール役をまっとうしようと思えたっていうのはあります」
ある意味、人としては弱く、嫌われ役でありながら、思わず感情移入してしまう人間臭さも魅力だった道兼。玉置さんの豊かな表情(筋)演技もたびたび話題に。
「顔に関してもこんなに反響があるとは思っていなかったんです。確かに、少し過剰にやっている部分はありますけど、そんなに目とか、表情筋を使っているつもりはないので。だからあまり意識はしてないんです」
一方で、4月7日放送の第14回で、兼家から後継者に選ばれず、父親に向かって「この老いぼれが……」と切り出し、憎しみに満ちた憤怒の表情で「とっとと死ね!」と言い放ったシーンについては「自分でもすごいと思いました。こんなに顔を動かす必要ある?って」と告白。
「でも、撮影中はそんなことはまったく考えていなくて、事前のリハーサル、ドライ(・リハーサル)で『こういう顔しよう』とも思っていない。でも、あのセリフを言うとああなっちゃうみたいで。すごく自分のことを棚に上げて、かつポジティブにとらえるならば、道兼をやろうとするとちゃんとああいう顔になるんだなって。結果、よかったなとは思っています」
「光る君へ」が、「真田丸」(2016年)、「麒麟がくる」(2020年)に続く、3作目の大河ドラマで、昨年2月の出演発表の際「『真田丸』では切腹を、『麒麟がくる』では火縄銃の分解と組み立てをやらせていただいたので、今回も何か普段やらないようなことをやらせていただけたらなあと思っています」と語っていた玉置さん。
改めて、道兼役にどんなやりがいを感じていたのだろうか……。
「結構、クズの役多いんですよ、殺人犯かクズを結構やっていて、言い方あれですけど、“お手の物”なんです。その点では、(脚本の)大石静先生からもお墨付きといいますか、『ぴったりな役あるのよ』といただいた役なので、そもそも『よしやるぞ!』という気持ちはありました。で、ふたを開けてみたら『おい、なかなかじゃねえか』っていう。でも今回、周囲から肯定の言葉をたくさんもらえて、改めてクズ役でもっといっぱいやれる、いろいろなやり方があるし、いろいろなクズを自分はやれるんだなって思えたというか。それは、この作品のやりがいでもあったし、今後のやりがいにもなりました。でも、本当はいい人の役、やりたいんですよ(笑い)」
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