伊藤沙莉さんが主演するNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「虎に翼」(総合、月~土曜午前8時ほか)で、最高裁長官に就任した桂場等一郎を演じる松山ケンイチさん。「厳格な桂場とゆるさを持って生きる僕は全然違いますが、甘い物が好きなところは似ていると思います」と語る松山さんに、桂場を演じるうえで意識していることや、最終盤のドラマの見どころなどについて話を聞いた。
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松山さん演じる桂場は、司法の独立を重んじる裁判官。寅子(伊藤さん)の成長をずっと見守り続けてきた法曹界の先輩で、大の甘党だ。
桂場について松山さんは「桂場のモチーフになった人物は、小さい頃から剣道、武道に携わっていらっしゃった方。武士の精神っていうんですかね、そういうものを桂場の中に取り入れたいなと。昨年の大河ドラマ『どうする家康』で本多正信を演じていたので、なんとなく武士としての男性社会の中での立ち振る舞い、生き方、考え方みたいなものを、演技に取り入れたいなと思ったんです」と語る。
「(司法の独立に)ものすごくこだわりがありますから。ちょっとでもぶれるわけにはいかないと自分で律している部分があるので、厳格さは出てくるんじゃないかな」と感じたという。
そんな桂場と自身とを比べ、「僕は周りの常識やルール、法律を受け入れつつも、自分はどう心地よく、幸せに生きていくかを考えているので全然違うんですよ。僕は桂場と比べると、ゆるさを持って生きている気がします」と話す。
一方、「桂場って団子が好きだったりするじゃないですか。僕は辛いものは苦手ですが、甘いものは好きなので、そこだけはすごく似ていると思いますね」と笑顔を見せた。
そんな桂場を演じるにあたって、「仏頂面が基本の形なので、どう表現していくのか。どこまで崩してどこまで遊ぶのかを常に探っていました」という松山さん。
「桂場って、出てくるたびに煽り続けている感じがするじゃないですか。最初、寅子に『女性は男性より何十倍も勉強しないとだめ』のようなことも言ってしまうし、ずっと煽っている。それが寅子の背中を押すことにつながっていましたし、桂場はそういう意地悪な表現しかできないんだと思いますが、それだけだと“記号”でしかなくなってしまう。それを、どういうふうに今まで見たことのない記号にできるのかを常に探っていました」
仏頂面の桂場を演じる中で、「表情で表現できない代わりに、手や体などを使って表現できることもたくさんありました」と明かす。
「団子もありましたしね(笑)。本当にいろいろな表現ができたなって思うんです。桂場が団子を食べようとしたときに話しかけられて、それでも無視して食べればいいのに、食べないとか。団子を優先するのか、話を優先するのか迷っている表現にもなりますし、『どういう人間性なんだろう?』って見ている人にも伝わるじゃないですか。せっかく目の前にあるので、これを利用した方が記号的な何かから、また違った見え方ができるんじゃないかといつも考えていました」
撮影を振り返り、松山さんは「勉強になりましたし、いろいろと試せました。自由にやらせていただいて、現場の皆さんにも本当に感謝しています」としみじみ語った。
物語は最終盤に突入し、放送も残すところ、あと1週間となった。松山さんは「桂場は、最後の最後に公平性すらも捨てて、司法の独立の方にかじを切る瞬間があるんです。寅子や法曹界の人にとって、味方でもあり、時には敵にもなっていく。桂場なりの戦いを見届けてほしいです」と呼びかけていた。
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