虎に翼:「エンタメで描くことを当たり前にしていきたい」 脚本家が朝ドラで性的マイノリティーを描いた理由

連続テレビ小説「虎に翼」の脚本を担当する吉田恵里香さん
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連続テレビ小説「虎に翼」の脚本を担当する吉田恵里香さん

 伊藤沙莉さんが主演するNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「虎に翼」(総合、月~土曜午前8時ほか)。同性カップルや性別適合手術を受けた人物が劇中に登場するなど、これまでの朝ドラでは見られなかった描写に、視聴者の注目が集まっている。なぜ朝ドラで性的マイノリティーを描こうと思ったのか。脚本を担当する吉田恵里香さんに話を聞いた。

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 「虎に翼」の第1回(4月1日放送)は、憲法14条のナレーションと共に幕を開けた。吉田さんは「憲法14条には、全ての国民は法の下に平等であると記されています。昔と比べたら良くなっていることもあるけれど、いまだにあまり平等ではない扱いをされている人がいるのも事実だと思うんです」と語る。

 「当たり前ですが、性的マイノリティーは、寅子が生きていた時代よりも、もっともっと前から存在していました。意図的か無意識かは置いておいて、大半の方々が見ないようにしてきたことを、ちゃんと見せることに意味があると思いました」

 吉田さんは「当時から存在していた人たちをきちんと描きたい」と強く感じたといい、「“挑戦”とか“とがった”とかそういう気持ちは全くなく、自然とこういった形になりました」と明かす。

 「性的マイノリティーが最近出てきた問題だと思っている人も多くて、『今解決できないから未来に投げちゃおう』というマインドになってしまうこともあると思うんです。だから、実は70年以上も前からずっと放置されてきた問題なんだと分かってもらえるだけでもいいのかなと考えています。当時は折れて、世の中の流れに身を任せた人がたくさんいたと思うので、それを知ってもらうことが大事ですし、昔も今も悩んでいる人がいることを知ってもらって、何か問題提起につながれば、やる意味はあったのかなと思います」

 2022年には、俳優の岸井ゆきのさんと高橋一生さんがダブル主演したNHKの連続ドラマ「恋せぬふたり」の脚本も担当。他者に恋愛感情を抱かず、他者に性的に惹(ひ)かれることもない「アロマンティック・アセクシュアル」の男女を描き、話題となった。

 吉田さんは、性的マイノリティーについて、理解を深めて偏見をなくしたいという思いがある一方、「当事者の方が矢面に立つべきではない」とも考えているという。

 「当事者の方は教材ではないですし、『教えてほしい』と強いるのは違うと思うんです。それならば、エンターテインメントが知るきっかけになったらいいなと。本来は社会や政治が扱うべき問題ですけど、エンターテインメントを通して伝えていけるように、ないものにしないように、表現を続けていきたいです」と言葉に力を込めた。

 そういったテーマを描く上で「間違うこともありますし、当事者の方を傷つけてしまって、深く反省したり、申し訳ない思いでいっぱいになることもありました」と振り返る吉田さん。

 「それでも、『怒られるからやらない』『分からないからやらない』『だからエンタメで使わない』では、歩みが遅くなってしまう。演者さんに矛先が向かうのは嫌ですけど、私が怒られたり批判されるのは構わないので、自分でも学術書や研究書を読むなど勉強しながら、エンタメで描くことを当たり前にしていきたいです」と語っていた。

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