解説:「名言製造機」と話題の「あんぱん」“寛伯父さん”役 54歳、竹野内豊が見せる円熟味と説得力

連続テレビ小説「あんぱん」で柳井寛を演じる竹野内豊さん(C)NHK
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連続テレビ小説「あんぱん」で柳井寛を演じる竹野内豊さん(C)NHK

 今田美桜さん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「あんぱん」(総合、月~土曜午前8時ほか)。本作で、マンガ家、絵本作家のやなせたかしさんがモデルの柳井嵩(北村匠海さん)の伯父で、医師の寛を演じているのが竹野内豊さんだ。俳優としてさまざまな話題作で活躍してきたが、意外にも朝ドラ出演は本作が初めて。現在54歳、年齢を重ね、演技の幅を広げてきたからこそ見せられる竹野内さんの魅力とは? 過去の出演作やインタビューなどからひもといてみたい。

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 ◇「ビーチボーイズ」で大ブレーク 以降は多彩な役に挑戦

 竹野内さんは、1989年に男性ファッション誌「MEN’S NON-NO(メンズノンノ)」(集英社)のモデルとして芸能界入りし、1994年放送の連続ドラマ「ボクの就職」(TBS系)で俳優デビュー。1995年の「星の金貨」(日本テレビ系)や、反町隆史さんとダブル主演した1997年の“月9”「ビーチボーイズ」(フジテレビ系)などで大ブレークを果たし、1990年代のドラマには欠かせない俳優の一人となった。

 当時は端正なルックスから、プレイボーイやクールな役どころを演じることが多かったが、2003年の「ヤンキー母校に帰る」では、新境地となる元ヤンキーの熱血教師・吉森真也を演じ、新たな魅力を開花。その直後に、「流転の王妃・最後の皇弟」(テレビ朝日系)で悲劇の人・愛新覚羅溥傑を見事に体現し、演技の幅の広さを見せつけた。

 さらに、2009年と2011年に放送された「BOSS」シリーズ(フジテレビ系)では、エリート警視・野立信次郎に扮(ふん)し、主演の天海祐希さんとコミカルな掛け合いを披露。2014年の主演ドラマ「素敵な選TAXI(センタクシー)」(カンテレ・フジテレビ系)では、コメディー演技の才能に磨きをかけ、過去に戻ることができる乗り物「選TAXI」の運転手・枝分を好演。クールな外見だが、話し好きでおせっかい、甘い物好きというキャラクターを魅力たっぷりに演じた。

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 また、近年では「義母と娘のブルース」(TBS系)や、主演を務めた「イチケイのカラス」(フジテレビ系)など、スペシャルドラマや映画化にまで発展する人気作に立て続けに出演。「義母と娘のブルース」では、先妻を亡くし、主人公の亜希子(綾瀬はるかさん)と再婚するサラリーマン・宮本良一役に扮し、家族への優しさや愛にあふれた父親を生き生きと表現。「イチケイのカラス」では、自由奔放で型破りなくせ者裁判官の入間みちおを、チャーミングに演じた。

 ◇「期待を裏切らないように取り組みたい」寛役への思い

 演じる役ごとに、がらりと表情を変える竹野内さんだが、2021年に主演した「連続ドラマW 東野圭吾 『さまよう刃』」(WOWOW)のインタビューで、今後演じてみたい役について「『こういう役柄がいい!』というのは正直ないのですが、常にイメージを覆せるようなものをやっていけたらいいなと思っています。あとは、自分が都会とはほど遠い自然の中で遊んで育ってきたので、田舎育ちで方言を話す役もやってみたいです」と語っていた。

 そんな竹野内さんが「あんぱん」で演じる“寛伯父さん”は、高知出身で土佐弁を話すキャラクター。まさに竹野内さんが望んでいた役とも言えるだろう。

 寛は穏やかで包容力があり、劇中では心に響く名言を連発。視聴者の間で「名言製造機」「高知一の人格者」などと話題になっている。跡取りを産めなかったことを謝罪する妻・千代子(戸田菜穂さん)に優しく寄り添う場面(第23回)では、その“イケおじ”ぶりに魅了される視聴者が続出した。

 竹野内さんは寛について「今回のように実在の人物をモデルとした役を演じる場合は楽しみでありながらも、ご本人を知る方々の期待を裏切らないように取り組みたいと思っています。私が演じる伯父の柳井寛という人物は、私たちが生きる上で根底に必要となる部分、忘れてはならないものを、日々の生活の中であたたかく思い出させてくれるような人物なのではないかと感じます」とコメントしている。

 シリアスからコメディーまで、多彩な役を演じ分けてきた竹野内さん。「あんぱん」では、まさに「円熟味」と言うべき大人の魅力を存分に発揮し、寛というキャラクターに説得力を持たせている。本作での寛の活躍はもちろん、竹野内さんが次はどのような役を演じるのか楽しみでならない。

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