解説:「あんぱん」黒井先生役・瀧内公美の“横顔” 社会派作品から時には体当たり演技も 強さから悲哀まで表現する圧巻の演技力

連続テレビ小説「あんぱん」で黒井雪子を演じる瀧内公美さん(C)NHK
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連続テレビ小説「あんぱん」で黒井雪子を演じる瀧内公美さん(C)NHK

 NHK連続テレビ小説(朝ドラ)「あんぱん」(総合、月~土曜午前8時ほか)の第35回(5月16日)が放送され、瀧内公美さん演じる女子師範学校の教師・黒井雪子のつらい過去が明かされ、話題になった。朝ドラ初出演ながらも、黒井の厳しさと強さ、弱さと悲しみまでを見事に体現し、視聴者をくぎ付けにした瀧内さんは、これまでにどのような作品で、どのような演技を見せていたのか、その“横顔”を紹介したい。

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 ◇時には体当たり演技も 

 瀧内さんは1989年生まれで、大学卒業後に本格的に俳優としての活動をスタート。2012年に映画デビューすると、2014年公開の映画「グレイトフルデッド」(内田英治監督)で映画初主演を果たす。その後は、2016年公開の「日本で一番悪い奴ら」(白石和彌監督)、「闇金ウシジマくん Part3」(山口雅俊監督)など、話題作に立て続けに出演した。

 2017年には、映画「彼女の人生は間違いじゃない」(廣木隆一監督)に主演し、週末に福島の仮設住宅から東京に向かい、デリヘルでアルバイトする貧困女性役を好演。2019年の「火口のふたり」(荒井晴彦監督)では、結婚を控えながらも、柄本佑さん演じるかつての恋人と何度も体を重ねるという、ヌードも辞さない難役を体当たりで演じた。

 そんな大胆な作品が続いた後、2021年には社会派なテーマを扱った映画「由宇子の天秤」(春本雄二郎監督)でドキュメンタリーディレクター役を演じ、新たな一面を披露。同作で数多くの映画賞を受賞し、演技の幅の広さを見せつけた。

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 デビュー以来、テレビドラマにもコンスタントに出演しているが、昨年のNHK大河ドラマ「光る君へ」の源明子役、今年1月期の連続ドラマ「クジャクのダンス、誰が見た?」(TBS系)の阿南検事役は記憶に新しい。「光る君へ」では、女の情念や嫉妬をまがまがしく表現。「クジャクのダンス、誰が見た?」では、強気でクールな検事をかっこよく演じた。

 ◇黒井先生役を振り返る

 そんな瀧内さんが「あんぱん」で演じる黒井先生は、主人公・のぶ(今田さん)が通う女子師範学校の教師。軍国主義者で、威厳に満ちた口調や態度は迫力満点だ。

 黒井を演じるにあたり、瀧内さんは以前「主人公ののぶさんに立ちはだかる壁として登場させていただきますので、非常にやりがいのある役です。パワフルに気合を入れて演じていこうと思っております」と意気込みを語っていた。

 第22回(4月29日)では、女子師範学校の厳しい規律に弱音を吐いたうさ子(志田彩良さん)に、黒井が「メソメソするな! あなたは弱すぎる。鏡川のボウフラよりも弱い。お国のために強くなりなさい」と厳しく指導する場面が描かれた。視聴者からは「ラスボス感」「視線合わせたら石になりそう」「めちゃめちゃ怖い」といった反響があった。

 甘えなど一切寄せ付けない黒井が、初めて人間味を感じさせたのが、第35回で自身の過去を吐露する場面だった。黒井はのぶの前で「一度……結婚したことはあります。女子師範を卒業してすぐに……嫁ぎました。3年間、子供ができず婚家を追われました」と告白。過去への後悔や、悲しみ、やりきれなさを、一瞬だけ口元がゆがむ表情の変化で見事に表現。視聴者からも「一瞬の間でどんなにつらい思いをしたか感じさせる瀧内さんの演技力よ!」「印象を残す人だなぁ」「師範学校のシーン、瀧内公美に魅了されっぱなしだった」など絶賛の声が上がっていた。

 大胆な作風から社会派なテーマまで、多彩な役を演じ分けてきた瀧内さん。「あんぱん」では、表面的には強く見える女性が持つ弱さ、悲哀を、圧巻の演技力で表現した。さまざまな作品で着実にキャリアを重ね、俳優としての魅力をますます増していく瀧内さんから、今後も目が離せない。

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