塀の中の美容室:原作者・桜井美奈が語る 内容は当然知っていても「ドラマのラストは泣けました」

「連続ドラマW-30『塀の中の美容室』」の場面カット=WOWOW提供
1 / 6
「連続ドラマW-30『塀の中の美容室』」の場面カット=WOWOW提供

 俳優の奈緒さんが主演するWOWOWドラマ「連続ドラマW-30『塀の中の美容室』」(金曜午後11時)が8月22日からWOWOWプライム・WOWOWオンデマンドで放送・配信される。全7話で、第1話は無料放送(アーカイブ配信あり)。女子刑務所に実在する美容室をモデルにした同名小説をドラマ化。原作者の桜井美奈さんに執筆のきっかけやドラマ化への思いを聞いた。

あなたにオススメ

 ◇トイレに行くのも許可が必要 刑務所内は「やはり制約が多い」

 7月にスタートした「連続ドラマW-30『殺した夫が帰ってきました』」に続き、人気作家の桜井さんが2018年に著した小説「塀の中の美容室」(双葉文庫)をドラマ化。全国の女子刑務所の数カ所で営業を行っている“塀の中”の美容室をモデルにした原作は、「読書メーター 読みたい本ランキング」第1位を獲得し、同名コミカライズ作品も高い評価を得ている。

 女子刑務所の中で受刑者が一般客の髪を切る“あおぞら美容室”を舞台に、美容師の小松原葉留(奈緒さん)がさまざまな事情を抱えた客の思いに寄り添うように、彼女たちの言葉に耳を傾けながら髪を切っていく。人々との出会いを通し、葉留が自ら犯した罪、そしてこれからの人生とどう向き合っていくのかを繊細に描き出す。

 原作者の桜井さんは「担当編集の方がドキュメンタリー番組で『刑務所の中に美容室がある』というのを知ったこと」をきっかけに、「私自身、それを聞いたときにすごく興味をひかれたのと、そんな場所があるのかと驚きもありました。小説ではあまり扱われていない題材だったので、挑戦してみたいと思って、書くことに決めました」と語る。

- 広告 -

 取材のため、笠松刑務所(岐阜県笠松町)を実際に訪れた。「駅から刑務所までの道を間違えて、正面ではないところから入ったのですが、入口がいくつかあったことと、思ったほど塀も高くなく、圧迫感はありませんでした」というが、中に入ると「一番記憶に残っているのは、やはり制約が多い、ということです。刑務作業中は、トイレに行くのも許可が必要で、ミシンを使って作業をしていても、それは通常の工場とは違うのだと思いました」と感じたという。

 映像化にあたっては、「何回か映像化のお話があったものの結局決まらなかったので、『ついに!』というのが率直な感想ですし、うれしかったです」と喜びをあらわにする。

 主演の奈緒さんについては、「主人公の葉留のイメージにピッタリだと思いました。また、これまで拝見してきたドラマでの演技も素晴らしかったので、期待が高まりました。内容は当然知っているのに、ドラマのラストは泣けました。生きた人間が発する言葉に風景や音楽が合わさると、物語の世界が広がるんだなと思いました」と感じ入る。

 その他のキャストでは、「朝ドラ(NHK連続テレビ小説『あんぱん』)に出演されていた、中島歩さん(葉留の元交際相手の波沼弘樹役)が気になっていたのですが、朝ドラとは違う、このドラマの役のイメージ通りで、俳優さんのすごさを実感しました」といい、また「所長の光石(研)さんは、優しいけれど、芯の通った所長さんを見せていただいてうれしかったです」と語る。

 桜井作品は「殺した夫が帰ってきました」「塀の中の美容室」と続けてWOWOWでドラマ化された。「いろいろな運やタイミングもあると思っているので、運が良かったんだなと。ドラマになることで、これまで原作小説を知らなかった人にも読んでもらえるので、ありがたいです」と喜ぶ。

 ドラマ「塀の中の美容室」について、「原作の雰囲気は残しつつ、ドラマだからこその表現を楽しんでほしいと思っています。もちろん私も、一視聴者として放送を楽しみにしています」とメッセージを送った。

 ドラマは、法務省矯正局の協力のもと、実際の刑務所内を使用して制作。受刑者で美容師という難役に挑む奈緒さんは、撮影にあたり、原作のモデルとなった岐阜県の笠松刑務所を訪れ、そこで働く美容師の様子を見学。役作りに当たっては、美容指導のもと1カ月間、練習を重ね、自身でカットやヘアアレンジにも挑戦したという。

 一人の受刑者と社会を生きる女性たちの人生が交錯する、温かな“再生”の物語を、奈緒さんがどのように繊細に演じたのか、原作と併せてドラマも堪能したい。

写真を見る全 6 枚

テレビ 最新記事