フェイクマミー
第9話 ニセ母計画崩壊!?追い込まれた家族の決断
12月5日(金)放送分
俳優の横浜流星さん主演のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(総合、日曜午後8時ほか)の第34回「ありがた山とかたじけ茄子(なすび)」が、9月7日に放送され、老中首座に就任したばかりの松平定信(井上祐貴さん)が政治刷新を打ち出し、読売(かわら版)を通じて庶民にアピールする様子が描かれた。
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史実の定信も、世論の動向や大名、旗本たちの言動に神経をとがらせていた。「べらぼう」第34回では、定信がある文書に目を通して、自分のことが「莫大な賄(賄賂)を贈って老中になったのであろう」とうわさされている記述に目をとめ、誰がうわさしているのか突き止めるよう家臣に命じるシーンがあった。この文書は、後世に「よしの冊子(ぞうし)」として知られる、隠密たちの報告書である。報告書は門外不出、極秘の扱いだったが、筆写(コピー)され現代に残されている。
政権を握った定信は、家臣の水野為長に江戸市中や城内の出来事、うわさ話を集めるよう命じた。情報収集を担ったのは隠密となった幕府の下級役人たちだ。町奉行所など幕府諸機関の高官、役人がちゃんと仕事をしているか、プラベートで問題行動をしていないか、幕府への不満を口にしていないか……といった情報収集に力を入れ、定期的に定信に報告された。定信の政敵で失脚した田沼意次を擁護する者はいないかを探る目的もあった。
定信は、旗本や御家人に対して文武奨励を呼びかけるが、これも隠密の報告がきっかけだ。寛政2(1790)年以降、報告書には江戸市中での盗賊の横行が頻繁に書かれるようになった。しかも、旗本らの武家屋敷も盗賊のターゲットになった。報告の一例を紹介しよう。
「当節は盗賊が横行し、武家へも4、5人ずつ一団となって乱入するようになった。家来の少ない屋敷では太刀打ちできないようだ。旗本の隣家に盗賊が乱入したのが分かっても、知らんふりをして応援に駆けつけない。被害に遭った旗本も体面上秘密にしているから、お上(幕府上層部)の耳に届いていないようで、取り締まりも不十分だ」
盗賊の中には困窮した旗本もいるとうわさされていることも、隠密は報告している。盗賊のなすがままにされている軟弱な旗本、盗賊に身を落とした旗本。将軍の家来の落ちぶれようが庶民のうわさになっていることに、定信は危機感を覚えた。田沼時代にぜいたくな暮らしに慣れ、軽薄な風潮に染まった武士が「義気(正義を守る心)」を失ったからだ、と定信は幕閣(閣議)で主張し、文武奨励を強化する方針を打ち出した。
「文」については、秩序を重視する朱子学以外の学問を禁じて、旗本と御家人に朱子学を中心とした「学問吟味」(試験)を実施。「武」については、将軍の前で武術を披露する「武術上覧」を毎年行った。それぞれの優秀者は人材登用にあたって優遇された。
「べらぼう」第34回では、御家人の大田南畝(桐谷健太さん)が、文武奨励を皮肉った狂歌をつくった疑いをかけられ、幕府高官に呼び出され詰問された。これも隠密が収集したうわさに基づく取り調べだった。大田はその後、寛政4(1792)年の第1回学問吟味で首席の成績を収め、勘定所の役人に登用された。さらに長崎奉行所などに異動し、安泰な官僚生活を送った。定信ににらまれ、定信の政策に救われた人生だった。
「よしの冊子」には悲喜こもごものエピソードが数多く収録されている。北町奉行の柳生久通の場合、隠密は現代の“文春砲”のように第2弾、第3弾のスキャンダルめいた報告書を定信に届けた。その結果、柳生は、在任わずか1年で辞任を余儀なくされた。
柳生は、裁判では何を尋問していいか分からないから、調書に書いていることを繰り返し質問する。尋問が始まったかと思えば、すぐに言葉に詰まってしまう。さらに、何かにつけて細かいことを気にする性格で「帳面に虫食い穴が一つあると、他にも虫食い穴がないかを調べるほどだ。仕事がまったく進まず、裁判に臨む町人たちも『知恵のない奉行だ』とあきれている」と報告された。
後日談がある。柳生は北町奉行を辞任した後、勘定奉行に就任した。細かいことにこだわる性格は、幕府の財政を担う勘定奉行だと適任ではないか、との定信の配慮だったようだ。性に合っていたのだろう。柳生は歴代で最長の29年間も勘定奉行を務めた。
定信が市中に多くの隠密を放っていることもうわさになり、町奉行所など幕府の他の機関も隠密を活用するようになった。江戸市中は隠密ばかりという“監視国家”の様相になり、その効果あってか、さまざまなスキャンダルが暴かれた。
美人局(つつもたせ)でゆすりを続けていた御家人もいた。ある代官は、横領した公金を少しずつ返済している途中で死亡した。後任が来れば横領が発覚するため、家族は代官が死んだことを隠して給料をもらい続け、弁済に充てていた。隠密の活動で不正の摘発が相次ぎ、定信が進めた綱紀粛正が徹底されるようになった。
こんな逸話もある。幕府は地方の幕府領に巡見使を派遣した。領内が平穏であるか、不正がないかを確認するためで、4〜5人のチームで赴く。信州に出張中の一行がそば屋で昼食をとった。一人が床の間にあった唐辛子の鉢植えから唐辛子の実を2本もぎ取って持ち帰った。
出張から戻った一行が勘定奉行の部屋へ報告に行くと、奉行ら高官は「信州の蕎麦屋で唐辛子を2本取った者がいたそうだ」「種をまいて内職にするのだろう」と口々に笑い合った。一行の中に隠密がいたのだ。奉行らが唐辛子の件を明かしたのは、どんな些細なことでも監視されていることを肝に銘じさせるためだった。当時の江戸は、友人関係にも疑心暗鬼となる社会でもあったようだ。(文・小松健一)
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