伊藤万理華:夜ドラ「いつか、無重力の宙で」でシングルマザー役 「初めは難しそう」も、とても“尊い時間”過ごす

NHKの夜ドラ「いつか、無重力の宙で」で木内晴子を演じる伊藤万理華さん(中央) (C)NHK
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NHKの夜ドラ「いつか、無重力の宙で」で木内晴子を演じる伊藤万理華さん(中央) (C)NHK

 NHKの夜ドラ「いつか、無重力の宙(そら)で」(総合、月~木曜午後10時45分)で木内晴子を演じる伊藤万理華さん。ドラマは「超小型人工衛星」で宇宙を目指す、30代女性たちの2度目の青春物語で、晴子は、地元の市役所に勤め、無愛想だが細かいことによく気づく、根は優しいシングルマザーだ。伊藤さんがドラマや役について語った。

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 ◇晴子たちと同じ年代で「ちょうど現実を見はじめる年頃」

 ドラマには、高校時代に「一緒に宇宙に行こう」と夢を語り合った天文部の女性4人が登場する。大人になってそれぞれの道を歩む中、ふと忘れていたかつての夢と再会。「超小型人工衛星だったら、今の私たちでも宇宙を目指せるかもしれない……」と、“あの頃”の自分に背中を押されて、2度目の青春が始まる。

 主人公の望月飛鳥を木竜麻生さん、飛鳥が再会する日比野ひかりを森田望智さんが演じ、飛鳥、ひかりの天文部の仲間・水原周役で片山友希さん、木内晴子役で伊藤さんが出演している。

 晴子は、真面目で堅実な合理主義者だが、好きなものにはロケットのようにまっすぐ突き進む豪快さも持ち合わせ、時々、熱くなりすぎて変なスイッチが入ることも。学生時代は宇宙建築に興味を示していたが、大学生の時に妊娠し、現在は小学生の息子をもつシングルマザーに。息子が将来好きなことをまっすぐ追いかけられるよういまは息子の教育に力を入れてい
る。

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 現在29歳の伊藤さんも、晴子たちと同じ年代で「ちょうど現実を見はじめる年頃」。物語にどんな印象を抱いたのか。

 「社会人としての立場やプレッシャーがだんだんのしかかってきて、夢を追うことよりも身近にある現実がよく見えるようになってきました。自分にとって本当の得意分野や、自分に合うフィールドがだんだん分かってくる。自分の進むべき道筋がわかってくる年頃というか。でもこのドラマは、社会人として経験を積んできたところでふと振り返り、10代の頃に見た壮大な『宇宙への夢』を、もう一度めざしたっていいじゃないかと思い直すお話です。タイトル通り、一度かかってしまった『重力』から4人が解放されていく物語なんだな、とすごく引き込まれました」

 ◇大切なのは、今の自分を大事にできているか、愛せているか

 劇中の晴子同様、撮影に入る少し前に、高校時代の友達と十数年ぶりに再会したという伊藤さん。

 「まさに晴子たちと同じ空白期間はあったのですが、不思議なもので、会った瞬間にあの頃に戻れました。お互い変わっていないことにすごく安心しつつ、でも社会人としての経験もあって、それぞれの場所で培ってきた『大人の目線』もあり、今このときだから話せることがたくさんありました」

 それぞれたくさんのことを経験し、何かを捨てたり諦めたりして、でもそれも含めて自分を受け入れることができるように……。伊藤さんは、そんなタイミングで再会できたことが「すごくうれしくて」と振り返る。

 「この感覚は30歳で再会した天文部4人の気持ちに近いんじゃないかなと思いました」

 一方で、劇中の晴子は、大学時代に子供を授かってシングルマザーとして奮闘と、伊藤さんの人生経験にない境遇。演じるにあたって「初めは難しそうだと思いました」とも明かす。

 「しかし晴子と道のりは違っても私自身の高校卒業後から今までを振り返ってみたときに、つらかったことも良かったことも全てひっくるめ、この十数年は、これまでの過程を肯定するための時間だったと思っています。大切なのは、今の自分を大事にできているか、愛せているかということなのではないかなと。私はこれまで参加した作品やものづくりを通じて、それを教えてもらった気がします。シングルマザーの晴子のこれまでの道のりは、ずっと精いっぱいで大変だっただろうけれど、今ちゃんとこうして生きているし、息子の岳(鈴木来希さん)という愛すべき存在がいる。私なりの目線で、これまでの晴子をちゃんと肯定し愛するというところから始めました。それはとても尊い時間でした」

 ◇空を見上げたときに「あの光は人工衛星かもしれない」と

 ドラマでは高校を卒業してから現在に至るまでの晴子の人生は描かれていないが、伊藤さんから見た高校生の晴子と30歳の晴子は「基本的には変わっていない」という。

 「真面目だけど、好きなこと、自分が信じることには一直線。高校生のとき、皆既日食を見るためなら授業も抜け出すあの気概と真っすぐなところは、大人になっても変わらない。晴子がフォーカスしているのは、まず息子の岳のことと、現実的な『生活』。宇宙に夢中だった高校生の時の気持ちには蓋(ふた)をしたまま生きてきたんだろうなと。けれど、テレビで宇宙関連のニュースが流れたらきっと家事の手を止めて見入っていただろうし、星がよく見える夜には空を見上げていたと思います」

 飛鳥たちからもう一度人工衛星の夢を追いかけてみないかと誘われ、晴子はとても迷ったけれど、最終的に背中を押してくれたのが息子の岳だった。

 「これまで晴子が蓋をしてきた宇宙への思いを、岳は見抜いていて『やりたいんやったら、やったらええやん』と言ってくれました。その言葉に、自分が思っていた以上に息子は母である自分のことを見ていてくれたのだなと、逆に岳から学ばせてもらい『これはもうやるしかない』と腹をくくったのではないかなと。とても素敵な親子関係だと思います」

 晴子を演じ、物語を通じて人工衛星を作る過程を知る中で、空を見上げたときに『あの光は人工衛星かもしれない』と思うようにもなった。

 「空には星だけではなく、人々の夢を乗せた人工衛星がいくつも漂っている。それってすごくロマンがあることだなって。わずか2年で燃え尽きてしまう、あの小さなキューブに、なぜ晴子たち4人はそこまでの情熱を注ぐのか。そこを感じていただきたい。このドラマが、見てくださった方にとって『何歳から何を始めたっていいんだ』というほんの少し勇気を出す後押しをすることができたら、とてもうれしいです」

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