月夜行路 ―答えは名作の中に―
第一話 令和の曽根崎心中!?文学オタクと主婦の旅する推理譚
4月8日(水)放送分
俳優の高石あかりさん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ばけばけ」(総合、月~土曜午前8時ほか)の第113回(3月11日放送)で、視聴者を最も引き付けた場面はどこだったのだろうか? テレビの前の視聴者が画面にクギヅケになっていた割合を示す「注目度」(REVISIO社調べ、関東地区、速報値)の1分ごとの推移を調べたところ、最高値は午前8時7分の74.4%だった。
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「ばけばけ」は113作目の朝ドラ。ヒロインの松野トキと、その夫となるレフカダ・ヘブンのモデルは、松江の没落士族の娘、小泉セツと、「怪談」などの著作で知られるラフカディオ・ハーン(小泉八雲)だ。ドラマの中では大胆に再構成し、登場人物名や団体名などは一部改称してフィクションとして描くという。
ヘブン(トミー・バストウさん)が日本人になるためには、江藤知事(佐野史郎さん)に認めてもらわなければならない。第113回は、錦織(吉沢亮さん)の助力を得ようと、ヘブンが錦織を訪ねるが、協力を断られてしまう。失意の中、錦織の真意も分からず困惑するトキとヘブン。そんな中、タエ(北川景子さん)に会ってきたという司之介(岡部たかしさん)とフミ(池脇千鶴さん)から意外な提案をされる。
テレビの前の視聴者のうち、画面を注視していた人の割合を示す「注目度」は、開始早々の序盤に比較的大きな“山”を作ると、中盤の“山”でピークを迎え、終盤に小ぶりな“山”を作った。前日までは、終盤に高くなる“終盤型”が続いていたが、この日は序盤からいきなり視聴者の関心を集めるシーンが続いた。
第113回は、錦織の家を訪ねたヘブンが書斎に招き入れられる場面から。本題に入る前の午前8時0分台は62.2%と注目度は低かったが、錦織が弟の丈(杉田雷麟さん)から手紙で訪問の趣旨は聞いていると話し始めた午前8時1分台はいきなり72.0%に急上昇した。
江藤知事が「怒っていて取り合ってくれない」「力を貸してもらえないだろうか」と英語で頼むヘブン。錦織は弱弱しい声で「知事の信頼が、今の私にはないのです」と、ヘブンの依頼を断る。淡々と、2人のやりとりが続くだけだが、ようやくしっかり錦織の姿や声が表れた場面。視聴者はその一言一言にクギヅケになったのかもしれない。
次の“山”はオープニング明けの中盤。午前8時3分には53%台まで低下した注目度が反転すると、午前8時5分の70.1%を経て、午前8時7分にはこの日の最高値74.4%でピークを迎えた。午前8時5~7分の3分間、70%台を維持するほど、視聴者の視線を集め続けた。
錦織や庄田(濱正悟さん)に助力を断られ、途方に暮れるトキとヘブンに、フミが話を始めるあたりからが午前8時5分台(70.1%)。勘太を連れて、タエに会ってきたというフミは、トキとヘブン、勘太の3人を雨清水家の戸籍に入れることにタエが賛同してくれたという。
続く午前8時6分台(71.4%)は、フミが勝手なことをしてとトキに謝るあたりから。雨清水家のタエを実母と慕いながらも、松野家のために尽くしてきたトキのことをよく理解しているフミだけに、トキの反応が気になるのだろう。カメラがトキの方向に切り替わると、トキは「私、雨清水トキになるんだ」と声を弾ませる。ちょっと意外な反応。司之介は「何がおかしい?」と少しけげんそう。そのうち、ヘブンが「ワカッタ、ママさん」と笑い始め、フミも膝ならぬ、畳を打ち「分かった」と叫ぶ。視聴者も、司之介と同じように、何が起こったのだろう?と不思議な気持ちだった人が多かったのかもしれない。
ピークとなった午前8時7分台(74.4%)は、フミとヘブンが司之介に耳打ちして教えるあたり。それぞれ「丑の刻」「草木も眠る」とヒントを与えられた司之介はようやく「そげかあ」と納得した様子。「雨清水トキ」が変じて「丑三つ時」というわけで、トキは喜んでいるのだった。フミとヘブン、司之介が大声で「雨清水トキ」「丑三つ時」と唱和すると、4人で大笑いする。真面目なシーンから、言葉遊びのコントのようなシーンに一変する「ばけばけ」らしい急展開だった。
そういえば、「ばけばけ」の第1回は松野家の家族がそろって「丑の刻参り」をする場面で始まった。そこから、第113回の「雨清水トキ=丑三つ時」まで壮大な伏線回収だった。
実は続く午前8時8分台は、真面目なシーンへと戻る。トキが、「松野トキ」でなくなるのはさみしいと話し、それでも司之介が「父上」で、フミが「母上」であるのは変わらないと続ける。親子のいい会話のシーンなのだが、注目度は64.4%まで急降下している。
終盤、午前8時13分に70.8%と注目度を70%台に乗せ、3度目の“山”を作った。雨清水家の三之丞(板垣李光人さん)がタエの料理を食べ、「母上の料理がこのごろ、おいしいです」と言うと、タエが少し驚きながらも「そうよねえ。わたくしもそう思います」「以前はひどかったですから」と笑う。三之丞の言葉に、刻々と表情を変えていく北川さんのタエの演技に視線が引き付けられた。三之丞が汁ものを飲み、トキのように「あー」と声を上げるのも印象的だった。時代の荒波に飲み込まれ、いろいろなことがあった2人だが、笑顔の2人の表情が見られて本当によかったと感じた場面だった。
活用したデータは、関東の2000世帯、関西の600世帯で番組やCMの視聴状況を調査しているREVISIO社が公表している独自指標の「注目度」(関東地区、速報値)。人体認識センサーを搭載した専用機器でテレビ画面に視線を向けているかを常に計測し、テレビの前にいる人のうち、番組を注視していた人の割合を算出している。(文・佐々本浩材/MANTAN)
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